競馬の降着とは?審議・失格との違いと馬券の扱い|2013年からの基準
この記事の要点
- JRAの降着は、2013年から今の基準。走行妨害がなければ被害馬が加害馬より先に入線していたと裁決委員が判断したとき、加害馬を被害馬の後ろの着順に下げる
- 審議ランプは、5位までに入線した馬の着順が変わる可能性があるときに点く。着順掲示板に青地に白文字で「審議」と出る
- 失格は、極めて悪質で危険な行為で競走に重大な支障を生じさせたときなどに、入線した順位を取り消す処分。騎手への騎乗停止などの制裁は、着順を変えるかどうかとは別に決める
- 馬券は、裁決委員が確定した着順で払い戻す。確定したあとに成績の着順が変わっても、払い戻しは変わらない

目次
降着とは、その走行妨害がなければ被害馬が加害馬に先着していたと裁決委員が判断したとき、加害馬を被害馬のすぐ後ろの着順に下げる処分だ。JRAの規定では、この基準は2013年から今の形になっている。本記事では、降着の基準、審議ランプが点いてから着順が確定するまでの流れ、降着と失格・制裁の違い、馬券の扱い、GⅠで降着があったレースを順にまとめる。内容はいずれも2026年11月時点のものだ。
降着とは?JRAの基準と2013年に変わった理由
降着の対象は、斜行や押圧(押しつけ)などで他の馬の走りを妨げたケースだ。裁決委員が、加害馬の違反行為で被害馬が走行を妨害されたと認めることが前提になる。
降着にするかどうかは、着順や着差だけでは決めない。JRAは、被害の程度、妨害が起きた場所、妨害の前後の加害馬・被害馬の走りなどを総合的に考えて決める、としている。判断するのは加害馬と被害馬の関係だけで、ほかの馬との着順は判断のポイントにならない。
走行妨害があっても、降着にならないことがある。被害馬が落馬や故障などで競走を中止した場合も、後で説明する失格に当たらない限り、着順は入線した順位のとおりに確定する。
JRAは、2013年に降着・失格のルールを今の形に変えた。競走のルールを国際的にそろえる議論が国際会議で進むなか、海外の主要国のルールを参考に、馬がレースで見せたパフォーマンス(入線した順位)を尊重する、シンプルなルールにしたという。JRAの説明では、イギリス・アイルランドや、香港・ドバイ・オーストラリアなどアジアのほとんどの国が同様のルールを採っており、地方競馬も同じルールだ。
降着は何着まで?審議ランプの「5位まで」との違い
何着まで下がるかは被害馬の着順しだいで、JRAは、降着できる着順の範囲を示していない。
よく混同される「5位まで」は、審議ランプを点ける範囲の決まりだ。JRAは、5位までに入線した馬の着順が変わる可能性があるときに審議ランプを点け、6位以下に入線した馬の着順が変わる可能性があるときは点けない、としている。JRAの説明では、審議ランプは客が馬券を捨てないように知らせるためのもので、点ける場合を限るのは、レースを早く確定させるためだ。
ランプが点かなかったレースでも、走行妨害などの状況は、あとでパトロールビデオやJRAのホームページで知らされる。
審議とは?ランプが点いてから確定までの流れ
審議は、着順を変える可能性があるときに裁決委員が調べることで、着順掲示板に青地に白文字で「審議」と表示される。JRAが審議ランプを点けるとしているのは、次のような場合だ。
| 審議ランプが点くとき | 中身 |
|---|---|
| 降着・失格の可能性がある | 走行妨害で、5位までに入線した馬の着順が変わる可能性がある |
| 申立てがあった | そのレースに出た馬の関係者から、降着・失格の裁決を求める申立てがあった |
| 競走不成立の可能性がある | 災害や投石などでレースに重大な支障があったとき、決められたコースと違うコースで行われたとき |
| 検量で失格の可能性がある | レース後の検量で、着順が変わる(失格になる)可能性がある |
| 裁決委員が特に必要と認めた | 上のどれにも当たらないが、裁決委員が必要と認めたとき |
裁決委員は、着順の確定や、降着・失格の申立ての裁決、騎手などへの制裁を受け持つ委員だ。レースの流れは、次のようになる。
| 順番 | 起きること |
|---|---|
| 1 | レースが終わると、着順掲示板に入線した順位(到達順位)が出る |
| 2 | 着順が変わる可能性があれば「審議」が点く。裁決委員がパトロールビデオなどで調べる |
| 3 | 着順が決まると「確定」のランプが点き、レースが確定する |
| 4 | 払戻金が発表され、当たった馬券の払い戻しが受けられる |
パトロールビデオは、各コーナーの外側にあるパトロールタワーなどで撮る、競走の監視用の映像だ。JRAは、審議を行ったレースや、走行妨害に当たるかもしれない場面、発走直後の落馬などがあったレースでは、レースのあとすぐにパトロールビデオを流す、としている。全レースのパトロールビデオ(全周)は、JRAのホームページの各レース結果の中に載る。
降着や失格になったときは、確定後にパトロールビデオを場内のテレビなどで流し、JRAのホームページの「裁決レポート」でも知らせる。
降着と失格・制裁の違いは?
降着と失格はどちらも着順を変える処分で、騎手への制裁はそれとは別に決まる。JRAの決まりを並べると次のとおりだ。
| 降着 | 失格 | 騎手への制裁 | |
|---|---|---|---|
| どんなとき | 走行妨害がなければ被害馬が加害馬に先着していたと判断したとき | 極めて悪質で危険な行為で競走に重大な支障を生じさせたとき、負担重量の不足、禁止薬物の使用など | 違反行為と、被害馬の被害の程度に応じて |
| 着順は | 加害馬を被害馬のすぐ後ろの着順に下げる | 入線した順位を取り消す | 変わらない(着順とは別に決める) |
| 判断する人 | 裁決委員 | 裁決委員 | 裁決委員 |
JRAの用語辞典では、失格になる理由として、極めて悪質で危険な行為のほか、コースの外に逃げたあと元の地点に戻らずにレースを続けた場合、決められた時間を超えて入線した場合、レース前とレース後の検量で負担重量が1kgを超えて足りない場合、禁止薬物の使用、不正協定の実行などを挙げている。
JRAは、着順が変わらなくても騎乗停止などのペナルティーを科すことがある、としている。走行妨害で着順が変わらなかったレースでも、騎手が処分を受けることはある。
確定したあとに失格になることはある?
ある。JRAは、レースの翌日から5年以内に、禁止薬物などの使用、馬の全能力を出させなかったこと(全能力の不発揮)、不正協定の実行が分かった場合は「事後失格」とする、としている。
降着・失格の裁決や事後失格については、馬主・調教師・騎手が不服を申し立てることも認められている(アピール制度)。
審議・降着で馬券はどうなる?
JRAは、払い戻しは、レースのあとに裁決委員が確定した着順に基づいて行う、と定めている。審議で着順が変わったときは、変わったあとの着順で当たり外れが決まる。
たとえば2020年の高松宮記念では、1位で入線したクリノガウディーが4着に降着し、2位で入線したモズスーパーフレアが1着になった。確定した着順で払い戻すため、単勝はモズスーパーフレアが当たりになる。審議の間は着順が変わる可能性があるので、JRAは確定するまで馬券を捨てないよう呼びかけている。
確定したあとの着順の変更は、払い戻しに関係しない。JRAは、事後失格や不服申し立ての裁定で成績の着順が変わっても、払い戻しの勝ち馬は変えない、としている。
JRAの規定では、着順が確定する前に裁決委員が競走を不成立と認めた場合、そのレースの馬券は返還になる。
GⅠで降着はあった?2013年以降の例
JRAの成績では、降着した馬の着差の欄に「(4位降着)」のように入線した順位が書かれる。2013年から2026年11月7日までに行われたJRAのGⅠ(障害のJ・GⅠを含む)347レースの成績を編集部で確かめると、降着は次の3件で、失格はなかった。
| 年 | レース | 降着した馬 | 入線した順位 | 確定した着順 |
|---|---|---|---|---|
| 2016 | 皐月賞 | リオンディーズ | 4位 | 5着 |
| 2019 | NHKマイルカップ | グランアレグリア | 4位 | 5着 |
| 2020 | 高松宮記念 | クリノガウディー | 1位 | 4着 |
1位で入線した馬が降着したのは、2020年の高松宮記念だけだ。
まとめ
JRAの降着は、2013年からの基準で、走行妨害がなければ被害馬が先に入線していたと裁決委員が判断したとき、加害馬を被害馬のすぐ後ろの着順に下げる。審議ランプは5位までに入線した馬の着順が変わる可能性があるときに点き、裁決委員がパトロールビデオなどで調べて着順を確定させる。失格は入線した順位を取り消す処分で、騎手への制裁は着順とは別に決まる。馬券は確定した着順で払い戻し、確定後に着順が変わっても払い戻しは変わらない。
同着のときの着順と馬券の扱いは「競馬の着差の種類と順番」でまとめている。
当たった馬券をいつまで払い戻せるかは「馬券の払戻期限」で確かめられる。
発走前に馬が出なくなったときの馬券の扱いは「出走取消と競走除外の違い」で解説している。
よくある質問
- 競馬の降着とは?
- 走行妨害がなければ被害馬が加害馬より先に入線していたと裁決委員が判断したとき、加害馬を被害馬のすぐ後ろの着順に下げることだ。JRAは2013年から今の基準で判断している。
- 降着は何着まで下がる?
- 降着した馬は、被害馬のすぐ後ろの着順になる。何着下がるかは被害馬の着順で決まり、JRAは降着できる着順の範囲を示していない。
- 降着と失格の違いは?
- 降着は、被害馬との着順を入れ替えて加害馬を後ろに下げる処分だ。失格は、入線した順位そのものを取り消す処分で、極めて悪質で危険な行為のほか、負担重量の不足や禁止薬物の使用なども当たる。
- 審議になったら馬券はどうなる?
- 払い戻しは、審議が終わって裁決委員が確定した着順で行う。降着で着順が上がった馬の馬券は、確定した着順で当たり外れが決まるため、確定するまで馬券は捨てないようにしたい。
- 審議ランプはいつ点く?
- 5位までに入線した馬の着順が変わる可能性があるときに点く。降着・失格の可能性があるときのほか、関係者から降着・失格を求める申立てがあったときや、競走を不成立とする可能性があるときにも点く。






