サラブレッドとは|競走馬の血統の条件と三大始祖
この記事の要点
- サラブレッドとは、血統のすべての系統が、1980年1月1日以前に発行された公認の血統書(日本のサラブレッド血統書か、国際血統書委員会が承認した海外の血統書)に載る馬までさかのぼれる馬の品種。日本では公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナル(JAIRS)が登録する
- サラブレッドの父系をたどると、バイアリーターク(推定1680年生)、ダーレーアラビアン(推定1700年生)、ゴドルフィンアラビアン(推定1724年生)の3頭に行き着く。この3頭が三大始祖で、JRAはダーレーアラビアンの父系が90%以上を占めるとしている
- JAIRSが登録する軽種馬は、サラブレッド・アラブ・アングロアラブ・サラブレッド系種・アラブ系種の5品種。アングロアラブとアラブ系種はアラブの血が25%以上、サラブレッド系種は25%未満と分けている
- JAIRSの統計では、2025年に日本で生まれた軽種馬8,236頭のうち8,233頭がサラブレッドで、アラブは1頭、アングロアラブは2頭だった

目次
サラブレッドとは、血統のすべての系統が、1980年1月1日以前に発行された公認の血統書に載る馬までさかのぼれる馬の品種だ。日本でサラブレッドの血統を登録するのは、公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナル(JAIRS)で、公認の血統書は日本のサラブレッド血統書と、国際血統書委員会が承認した海外の血統書を指す。本記事では、サラブレッドとして登録できる条件、三大始祖、サラブレッドの血統書の成り立ち、日本での登録、アングロアラブ・サラ系・アラブとの違いを順にまとめる。決まりと数字は、いずれも2026年11月時点のものだ。
サラブレッドとは?登録できる条件
JAIRSは、サラブレッドを次のどちらかに当たる馬と定めている。
| 区分 | 条件 |
|---|---|
| 血統でさかのぼれる馬 | 血統のすべての系統が、1980年(昭和55年)1月1日以前に発行された血統書(日本のサラブレッド血統書、国際血統書委員会が承認した海外の血統書)に登録された馬までさかのぼれる |
| サラブレッド系種から上がった馬 | サラブレッド系種として登録された馬に、サラブレッドとして登録された馬を連続8代以上かけ合わせて生まれ、国際血統書委員会が承認した |
1つ目の条件は、世界共通の定義だ。国際血統書委員会は1984年に、サラブレッドを「委員会が承認した血統書に1980年1月1日以前に登録されている父馬と母馬の子か、そのように登録された馬に血統のすべての系統でさかのぼれる馬」と定めることで合意した。
父か母のどちらか一方だけでなく、父方・母方のすべての祖先が条件に当てはまらなければ、サラブレッドにはならない。
「連続8代」とは?
JRAは、競走馬としての大まかな定義を「連続8代にわたりサラブレッドが交配された馬」としている。
国際血統書委員会も、サラブレッドではない馬の子孫がサラブレッドに上がるときの条件に、サラブレッドとの連続8代のかけ合わせを入れている。その決まりでは、かけ合わせの記録が十分に証明でき、その馬や祖先がサラブレッドのレースでサラブレッドと同じくらいの成績を上げていることを、生まれた国の血統書の機関が示す必要がある。そのうえで地域の血統書会議の承認を受け、国際血統書委員会で委員の全員が賛成しなければならない。
サラブレッドという名前の意味
サラブレッドは、イギリスで長い時間をかけて競走馬として作り出された品種だ。JRAは、名前に「純血」、「完全に育てあげられた」という意味があるとしている。略すときは「サラ」と呼ぶ。
サラブレッドの三大始祖とは?
今の世界のサラブレッドは、父系の血統をたどると、すべて3頭の馬にさかのぼる。この3頭が、サラブレッドの三大始祖(三大父祖)だ。JRAは、3頭の生まれ年をいずれも推定としている。
| 始祖 | 生まれ年 | 父系の呼び名 | 父系を広げた馬 |
|---|---|---|---|
| バイアリーターク | 推定1680年 | ヘロド系 | ヘロド(1758年生、始祖から5代目) |
| ダーレーアラビアン | 推定1700年 | エクリプス系 | エクリプス(1764年生、始祖から5代目) |
| ゴドルフィンアラビアン(ゴドルフィンバルブ) | 推定1724年 | マッチェム系 | マッチェム(1748年生、始祖から3代目) |
3頭はどれも、17〜18世紀にイギリスへ入った東洋系の馬だ。当時のイギリスは、自国の馬より速さと持久力に優れた東洋系の馬を輸入し、イギリスの馬とかけ合わせて競走馬の能力を高めていた。1791年に出たサラブレッドの血統書「ジェネラル・スタッドブック」の序巻には、この3頭も載っている。
三大始祖は父系(父の父の父…とたどる系統)の始まりの3頭で、母系をたどった先ではない。
ダーレーアラビアン|エクリプスから90%以上の大父系に
ダーレーアラビアンは推定1700年生まれで、オスマン帝国のアレッポ(今のシリア北西部)にいたイギリス領事のトーマス・ダーレーが買い取り、イギリスに送ったと伝わる。父系を盛り上げたのは、始祖から5代目のエクリプスで、5・6歳(旧表記で6・7歳)で走って26戦全勝だった。この父系はエクリプス系とも呼ばれる。
JRAは、この父系が今は90%以上を占める大父系になったとしている。19世紀のはじめまではバイアリータークの父系と互角で、勢いをつけたのは1881年生まれのセントサイモン、20世紀なかばのネアルコだった。ネアルコからはナスルーラ系、ノーザンダンサー系が出た。日本で大きな足跡を残したサンデーサイレンス、ブライアンズタイム、トニービンも、ネアルコの流れをくむ。
ゴドルフィンアラビアン|マッチェムからマンノウォーへ
ゴドルフィンアラビアンは推定1724年生まれで、北アフリカのバーバリー地方の生まれとされる。生まれがアラブではなくバルブ(北アフリカの馬)だとして、ゴドルフィンバルブと書く本もある。エクリプスの母の父は、ゴドルフィンアラビアンだ。
父系は、始祖から3代目で1748年生まれのマッチェムが広げ、マッチェム系と呼ばれる。ヨーロッパでは傍流だったが、アメリカで栄え、歴史的な名馬マンノウォーが出た。日本では、マンノウォーの流れをくむ持込馬の月友が日本ダービー馬を3頭出した。JRAは、2004年の高松宮記念を勝ったサニングデールも、この父系の馬として挙げている。
バイアリーターク|ヘロドが残した父系
バイアリータークは推定1680年生まれで、イギリスがハンガリーでトルコと戦ったときに、ロバート・バイアリー大尉が手に入れたと伝わる。種牡馬としては優秀ではなかったが、始祖から5代目で1758年生まれのヘロドの活躍で父系が残った。
ヘロドの父系はいったん大きく栄えたが、19世紀後半から急に衰えた。日本では、輸入されたパーソロンから、三冠馬シンボリルドルフ、天皇賞馬メジロアサマが出て、その流れからトウカイテイオー、メジロマックイーンが出た。
サラブレッドの血統書はいつできた?
サラブレッドの登録は、イギリスのジェネラル・スタッドブックから始まった。ジェームス・ウェザビーが競馬成績書やセリの名簿を調べて、競走馬として改良されたと判断できる馬をまとめ、1791年に序巻、1793年に第1巻を出した。サラブレッドの登録は、ほかの家畜より早く始まったことになる。
サラブレッドの条件をめぐっては、その後も変わってきた。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1791年 | ジェネラル・スタッドブックの序巻が出る |
| 1793年 | ジェネラル・スタッドブックの第1巻が出る |
| 1901年 | 第19巻で、登録できる馬の条件(8〜9代にわたる純血のかけ合わせなど)を初めて示す |
| 1909年 | 第21巻で条件をさらに厳しくする。続く第22巻で「父母双方の祖先のすべてがこの血統書に載る馬に限る」とした(ジャージー規則) |
| 1949年 | ジャージー規則をやめ、1901年の条件にもどす |
| 1984年 | 国際血統書委員会が、今のサラブレッドの国際的な定義で合意する |
ジャージー規則のころは、アメリカの血を引く馬がイギリスでサラブレッドと認められず、英米の対立が第二次世界大戦のあとまで続いた。
日本でのサラブレッドの登録は?
日本の軽種馬の登録は、1925年(大正14年)に始まった。ジェネラル・スタッドブックの第1巻から約130年遅れだ。日本のサラブレッド血統書の第1巻は、1941年(昭和16年)に出た。今は、JAIRSが軽種馬の登録を行っている。
JAIRSの登録は、血統と個体識別(その馬を見分ける特徴)を明らかにする血統登録と、繁殖に使う馬の成績を明らかにする繁殖登録の2つだ。日本で生まれたサラブレッドは、多くが生まれた年のうちに、生産牧場でJAIRSの審査を受けて血統登録される(2025年生まれのサラブレッド8,233頭のうち7,745頭、約94%が2025年のうちに登録)。JAIRSは書類を確かめ、実際の馬を見て特徴を取り、マイクロチップの番号を確かめ、DNA型を調べるための毛根を採る。審査を通ると、毛色や生年月日が書かれた血統登録証明書ができる。
JAIRSの統計では、2025年に日本で生まれた軽種馬は8,236頭で、そのうち8,233頭がサラブレッドだった(2025年12月31日時点)。サラブレッド系種は0頭、アラブは1頭、アングロアラブは2頭だ。2025年にJAIRSが血統登録した内国産馬7,964頭は、すべてサラブレッドだった。
血統登録で確かめる毛色の見分け方は「競走馬の毛色は8種類」でまとめている。
アングロアラブ・サラ系・アラブとの違いは?
JAIRSが登録する軽種馬は、サラブレッド、アラブ、アングロアラブ、サラブレッド系種、アラブ系種の5品種だ。JAIRSの定義の要点を並べると、次のようになる。
| 品種 | 略称 | JAIRSの定義の要点 |
|---|---|---|
| サラブレッド | サラ | 血統のすべての系統が、1980年1月1日以前の公認の血統書に載る馬までさかのぼれる |
| アラブ | アラ | アラブとして登録された馬、世界アラブ馬機構が承認した外国の機関の血統書でアラブとされた馬、それらどうしの子 |
| アングロアラブ | アア | アラブの血を25%以上持つ。サラブレッドとアラブ、サラブレッドとアングロアラブ、アラブとアングロアラブの子など |
| サラブレッド系種 | サラ系 | アラブの血が25%未満。サラブレッドとアングロアラブの子、サラブレッドとサラブレッド系種の子など |
| アラブ系種 | アラ系 | アラブの血を25%以上持つ。サラブレッドとアラブ系種の子、アラブとサラブレッド系種の子など |
JAIRSの統計では、サラブレッドとサラブレッド系種を合わせて「サラ系統」、アラブ・アングロアラブ・アラブ系種を合わせて「アラ系統」と呼んでいる。
アラブとは?
アラブは、アラビア半島で生まれた馬の品種だ。JRAは、何千年も注意深く育てられてきた点で、馬の品種で最も純粋で最も古いものとしている。1884年にはフランスが、アラブとして血統登録する馬を、アラビア半島の全域で生まれた馬と定めた。サラブレッドをはじめ、多くの馬の品種の改良に使われた。
アングロアラブとは?
アングロアラブは、アラブとサラブレッドをかけ合わせてできた品種だ。アラブとサラブレッドの特質を備えた騎兵の乗馬としてフランスで作られ、世界各国で生産されている。
同じサラブレッドとアングロアラブの子でも、アラブの血が25%以上ならアングロアラブ、25%未満ならサラブレッド系種になる。
サラブレッド系種(サラ系)とは?
サラブレッド系種は、アラブの血が25%未満で、サラブレッドの条件を満たさない馬の品種だ。サラブレッドとアングロアラブの子でアラブの血が25%未満の馬や、サラブレッドとサラブレッド系種の子が当たる。サラブレッド系種の馬にサラブレッドを連続8代以上かけ合わせ、国際血統書委員会の承認を受ければ、サラブレッドに上がれる。
アラブの競馬は今もある?
日本の平地競走を走る馬は、ほぼすべてサラ系統(サラブレッドとサラブレッド系種)の馬だ。JRAは、競走馬の生産頭数が1992年をピークに減った理由として、アラブ競馬の廃止と地方競馬の規模の縮小を挙げている。
生まれる馬の数にも、その流れが表れている。JAIRSの統計では、2025年に生まれたアラ系統の馬はアラブ1頭、アングロアラブ2頭の計3頭だった。2026年の速報(2026年8月31日時点)では、アングロアラブが1頭だ。
まとめ
サラブレッドとは、血統のすべての系統が、1980年1月1日以前に発行された公認の血統書に載る馬までさかのぼれる馬の品種だ。サラブレッド系種の馬にサラブレッドを連続8代以上かけ合わせ、国際血統書委員会が承認した馬もサラブレッドになる。父系をたどると、バイアリーターク、ダーレーアラビアン、ゴドルフィンアラビアンの三大始祖に行き着き、今はダーレーアラビアンの父系が大半を占める。日本ではJAIRSが血統登録を行い、2025年に生まれた軽種馬のほとんどがサラブレッドだった。アングロアラブとサラブレッド系種は、アラブの血が25%以上か未満かで分かれる。
血統登録のあとに付ける名前の決まりは「競走馬の名前のルール」でまとめている。
生まれてからデビュー、引退までの流れは「競走馬の一生」で解説している。
日本の種牡馬の移り変わりは「歴代の種牡馬リーディング」で確かめられる。
よくある質問
- サラブレッドとは?
- 血統のすべての系統が、1980年1月1日以前に発行された公認の血統書に載る馬までさかのぼれる馬の品種だ。公認の血統書は、日本のサラブレッド血統書と、国際血統書委員会が承認した海外の血統書を指す。JRAは、大まかな定義を「連続8代にわたりサラブレッドが交配された馬」としている。
- サラブレッドの三大始祖とは?
- 今のサラブレッドの父系をたどると行き着く3頭の馬で、バイアリーターク(推定1680年生)、ダーレーアラビアン(推定1700年生)、ゴドルフィンアラビアン(推定1724年生)を指す。父系はそれぞれヘロド、エクリプス、マッチェムが広げ、JRAはダーレーアラビアン(エクリプス)の父系が90%以上を占めるとしている。
- サラブレッドとして登録できる条件は?
- JAIRSの定義では、血統のすべての系統が公認の血統書に載る馬までさかのぼれることが条件だ。サラブレッド系種として登録された馬にサラブレッドを連続8代以上かけ合わせて生まれ、国際血統書委員会が承認した馬も、サラブレッドになる。
- アングロアラブとサラブレッドの違いは?
- アングロアラブは、アラブとサラブレッドをかけ合わせてできた品種で、JAIRSはアラブの血を25%以上持つ馬としている。サラブレッドとアングロアラブの子でも、アラブの血が25%未満ならサラブレッド系種になる。
- アラブ・アングロアラブは今も生まれている?
- JAIRSの統計では、2025年に日本で生まれたアラ系統の馬は、アラブ1頭、アングロアラブ2頭の計3頭だった。同じ年のサラブレッドは8,233頭で、日本の平地競走を走る馬はほぼすべてサラ系統の馬だ。JRAは、競走馬の生産頭数が減った理由の一つに「アラブ競馬の廃止」を挙げている。






