UAEダービー(首GII/ダート1900m)が3月28日に行われ、日本からゴールデンバローズ、タップザット、ディアドムスの3頭が挑戦した。結果はゴールデンバローズの3着が最高という結果だったが、一つのレースとしてとても興味深かった。
ムブターヒジの圧倒的な強さに世界の広さを感じたし、ゴールデンバローズの頑張りに日本のダート競馬の未来を見た。
そして今回は日本の若武者の強気な騎乗にスポットを当てたい。ディアドムスに騎乗した三浦皇成騎手である。
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海外で貫いた“果敢さ”
注目の場面は1コーナーで訪れた。好スタートを切ったディアドムスはタップザットとゴールデンバローズとともに先団を形成して1コーナーを迎える。体制は決したかに思えたが、ここで問題のシーンが発生する。
かかり気味に上がってきた4番のサーフィーバー(ビュイック騎手騎乗)が、内から強引に馬体を寄せてポジションを奪いに来たのだ。
海外では当たり前の光景であるものの、日本ではここまで強引に馬体を寄せるシーンはめったにない。強引なポジション争いに慣れていない日本人騎手は手綱を引いてしまうケースが多いように思う。
しかし、三浦騎手はひるまなかった。頑として手綱を引かず、逆に「絶対に譲らない」とばかりに体を内側に寄せてポジションを死守する姿勢を貫いた。
結局、進路を失ったサーフィーバーはクビを上げながら後退し、コーナーを回りきったところでディアドムスの外に持ち出すに至っている。
小さな攻防が大きな違いを生む世界
何気ないシーンかもしれない。また、ディアドムスは下位に沈んでしまったわけだから、勝負を左右するような騎乗ではなかった。
だが、もしディアドムスが勝ち負けするぐらい力のある馬だったらどうか?
仮に1コーナーでポジション争いに敗れて外へ膨れてしまったら距離をロスする。すると勝負どころで脚が鈍ったかもしれない。逆にポジションを守れれば、自分の馬にロスは発生しない。さらにライバルを封じ込め、レースの主導権を握ることができる。
何気ない小さな攻防だったかもしれないが、一瞬の判断が勝負の行方を左右する大舞台であることを考えると、極めて重要なシーンだったように思える。
だからこそ、敗れたとはいえ、ひるまなかった三浦騎手に拍手を送りたい。あの攻防を制しただけでもドバイへ行った価値はあった。次に有力馬に騎乗するとき、あの攻防は、あの経験は大きな糧となるはずだ。
今年こそ中央GI制覇を
三浦騎手は武豊騎手の持っていた新人最多勝利記録を更新した。しかし、それ以降は目立った活躍ができていない。
厩舎を離れる際のゴタゴタなどが影響して騎乗馬の質がガクッと落ちてしまったことが大きな原因の一つと言われている。また、三浦騎手自身の騎乗技術もまだまだ磨くべき点が多い。特に中山競馬場などの小回りコースでは内で詰まって有力馬を飛ばすシーンが見受けられる。
ただ一方、東京では1、2を争うと言っていいほど「買える騎手」である。
事実、2014年の東京の芝コースにおける複勝率は33%、複勝回収率は106%だ。さらに今年の1回開催では穴馬を激走させ、複勝回収率は158%を記録している。(※データはいずれも3月30日現在。)競馬は控除率の関係で回数が多ければ多いほど回収率が75%に近づいていく。つまり、100%超というのは極めて秀逸な成績なのだ。
昨年は安田記念で16番人気のグランプリボスを2着に、NHKマイルカップでは17番人気のタガノブルグを2着に持ってきて周囲を驚かせた。それらが評価され、騎乗馬の質は徐々に向上している。そもそも新人にしては騎乗馬に恵まれていたとはいえ、実力がなければ武豊騎手の偉大な記録を塗り替えることはできなかった。本来は大レースで活躍できる才能を持っている。
だからこそ、今年はJRAのGIを制して騎手としてのポジションを確立してほしい。
ドバイで改めて“大器の片鱗”を見ることはできた。信念を曲げずに強いの騎乗を貫いていけば、その瞬間は必ず訪れるはずだ。
休むまもなく週末には日本の競馬が待っている。この経験を糧にして騎手として一回り成長して欲しいところだ。