マイル路線に新星が誕生した。
4月5日に中山競馬場で行われたダービー卿チャレンジトロフィー(GIII/芝1600m)でスクリーンヒーロー産駒のモーリスが重賞初制覇を成し遂げた。最後は2着のクラリティシチーに0.6秒差をつける圧巻の勝利だった。
この勝利のどこが秀逸だったのか? 改めて振り返ってみたい。
目次
最後の急坂で10.8秒
なんといっても圧巻だったのは最後の1ハロンだ。
中山競馬場は雨が降り、馬場が渋っていた。馬場が重たくなればスピードや切れ味は鈍る。そんな中でモーリスは上がり3ハロン33秒フラット、ラスト1ハロンは推定10.8秒(レースラップは10.8秒)を記録した。
中山といえば最後の直線には“心臓破りの坂”がある。普通は減速し、ラスト3ハロンは「加速―加速―減速」という数字を刻むことがほとんど。だが、公式のレースラップは「11.6―11.7―10.9」。おそらくモーリスはずっと加速ラップを刻んでいたはずだ。普通ではありえないラップといっていい。まさに“怪物”と呼ぶにふさわしい走りだった。
モーリスの魅力
当サイトではレース前からモーリスに注目していた。特に血統はとても魅力的である。その記事からモーリスの魅力を引用しよう。
将来のGI馬!?スクリーンヒーロー産駒モーリスに注目したい4つの理由
まず父スクリーンヒーローは優秀な種牡馬だ。繁殖牝馬の質に恵まれない中でミュゼエイリアン、グァンチャーレといった重賞ウィナーを輩出。GIではゴールドアクターが菊花賞で3着になっている。
さらに母系は生粋の“メジロ血統”だ。
母メジロフランシス
母母メジロモントレー
母母母メジロクインシー
母母母母メジロボサツ
母母母母母メジロクイン
特に母母のメジロモントレーはアメリカジョッキークラブカップ、アルゼンチン共和国杯など重賞3勝、オークスでは5着になった名牝だ。GIで勝ち負けしてもおかしくない血だし、大舞台で応援してくなる由緒正しき血統というわけだ。
安田記念で通用するのか?
ダービー卿CTの走りを見れば、「春のマイル王決定戦の安田記念でも……」と期待が広がる。
モーリスにとって好ましいデータを一つ紹介しよう。
日本の競馬界はサンデーサイレンスの登場以降、同系統の馬たちがGI戦線を世間している。ディープインパクト、ハーツクライ、マンハッタンカフェなど、主だった種牡馬はほとんどがサンデー系だ。
しかし、安田記念はサンデー系が苦手なレースとして知られている。過去10年でサンデー系の馬が優勝したのはわずかに3回。しかも3頭のうち2頭はGI5勝馬のダイワメジャーと、世界レーティング1位のジャスタウェイである。このレベルの馬でないと、サンデー系が安田記念を制することは難しい。
モーリスは父母父にサンデーサイレンスを持っているものの、父、母父ともに非サンデー系だ。安田記念に合った血統をしている。となると、「安田記念でも……」という期待は一層高まる。
マイル路線に現れた“怪物”はGIでも違いを示せるのか? もしそうなれば、貴重なサンデー系種牡馬として引退後にも夢は広がっていくはずだ。