ハープスター引退までの軌跡!狂った歯車、子ども・産駒へ引き継がれる夢

再び末脚が爆発することはなかった。

5月7日、2014年の桜花賞馬ハープスターがターフを去った。右前脚繋靭帯を損傷し、種子骨靭帯炎を併発したため復帰が困難になったのだ。

●詳細→桜花賞馬ハープスターが引退!父ディープインパクト、祖母ベガの良血馬

桜花賞での強烈な末脚によって一躍スターダムに駆け上がった“快速牝馬”はどのようなキャリアを送ったのか。改めて、振り返っていきたい。


目次

体内に流れる名牝の血

父ディープインパクト、母ヒストリックスター、その母ベガという血統背景を持つハープスターは、期待の良血馬として注目を集めていた。

特に母母のベガは日本を代表する競走馬・繁殖牝馬として知られている。産駒にはダービー馬アドマイヤベガ、“ダート王”アドマイヤドンといったGI馬が名を連ねる。そんな名牝にディープインパクトの種がつけられたのだから、期待を集めるのは当然の成り行きだろう。

人気一口馬主クラブ、キャロットファームで募集され、総額4000万円、口数400口、1口当り10万円という価格がつけられた。キャロットファームは社台グループに属しているため比較的安い募集となったが、セレクトセールに出されていたら1.5倍や1億円の大台もくだらなかったはずだ。案の定、あっと言う間に400口を突破し、抽選になったことは言うまでもない。

素質を爆発させた新潟2歳ステークスと桜花賞

ハープスターは周囲の期待に応えてデビュー戦をあっさり勝つと、2戦目の新潟2歳ステークスでさらに脚光を浴びることになる。

スタートから最後方につけると、4コーナー18番手から満を持して追い出しを開始。前にいた17頭をごぼう抜きし、後の皐月賞馬イスラボニータらを完封した。3馬身差の圧勝劇、上がりタイムは驚異の32秒5を記録した。周囲の期待がさらに膨らんだことは想像に難くない。

次走の阪神ジュベナイルフィリーズでは惜しくも栄冠を取り逃したものの、安定の上がり最速を記録。休養を挟んで迎えたチューリップ賞で“試走”を終え、迎えた桜花賞では再び豪脚を披露する。4コーナーで最後方につけたハープスターは、直線で爆発力を余すところなく発揮。前を行くレッドリヴェールをクビ差捉え、GI初制覇を達成した。

「怪物の誕生」、「ディープインパクトの再来」、「未来の凱旋門賞馬」……。

夢の様な文言が紙面を飾るほど、ある種の一大ムーブメントを起こしたのだった。

狂った歯車と突然の引退

ただし、ハープスターのキャリアの頂点はここだった。

続くオークスでは断然の1番人気に支持されながらヌーヴォレコルトに敗戦。札幌記念こそゴールドシップに競り勝ったが、凱旋門賞6着、ジャパンカップ5着、京都記念5着、ドバイシーマクラシック8着と、爆発的な末脚をなりを潜めてしまった。

なぜハープスターは勝てなくなったのか。後日、改めて検証記事を書こうと考えているため、ここではあえて触れないことにする。とにかく、ハープスターのキャリアは志半ばにして突然終わりを迎えてしまった。ファンが多い馬だったこともあり、残念という他以外、言葉が見当たらない。

夢の続きを託す

今後、ハープスターは繁殖牝馬として繋養される。

ディープインパクト産駒のためサンデー系種牡馬と種付けすることはできないが、何しろベガの血を引く良血馬だ。いい仔を産んでくれることだろう。

しかも社台スタリオンステーションには非サンデー系の良質な種牡馬が揃っている。キングカメハメハやハービンジャーといった選択肢が数多くある。どの種牡馬をつけるのか、贅沢な悩みが生まれることは想像に難くない。

ベガを筆頭に、アドマイヤベガ、アドマイヤボスは故障が原因で引退を余儀なくされ、ハープスターもまた、故障が原因で引退となった。体質の弱さは気がかりであるものの、関係者の方々もその点は熟知しているはず。名血を後世につないでいくために、尽力してくれるはずだ。

ハープスターは“夢の途中”でターフを去ることになった。返す返す、とても残念でならない。しかし、“終わってしまった夢の続き”を見られるのが競馬の魅力だ。彼女が果たせなかった夢を、きっと仔どもたちが受け継いでくれるはず。そう信じて、繁殖牝馬としての成功を祈りたい。

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