横山典弘騎手は5月3日に行われた天皇賞春(GI/芝3200m)で周囲を唖然とさせる騎乗を見せた。天皇賞春で連敗中だったゴールドシップの手綱を取ると、2周目の向こう正面から捲って先頭に立ち、押し切ってみせたのだ。天才が天才であるゆえんを示し、惜しみない称賛を浴びた。
●おすすめ記事→ゴールドシップと横山典弘、天皇賞春のロングスパートに隠された“思惑”とは?
しかし一方で、“無気力騎乗”と言われても仕方がない騎乗があることも事実だ。レースに参加せず、最後方に位置取る姿は“ポツン”と揶揄されて久しい。
「天才」、「気まぐれ」、「やらず」――。
様々な顔を見せてくれる横山典弘騎手。今回のテーマは「本当に“ポツン”が多いのか?」。その真相に迫ってみたい。
目次
“ポツン騎乗”とは何か?
そもそも“ポツン騎乗”とは何なのか? 簡潔に書くと……
「スタートしてから終始最後方に位置取り、レースに参加せず、直線だけ追って(時には追わないことも!)レースを終えること」
だろうか。昔からこういう騎乗がなかったわけではないが、2012年のオークスで改めてクローズアップされることになった。ココロチラリに騎乗した横山典弘騎手は終始レースに参加せず、最後の直線でも馬なりのまま追い出すことはなかった。レース後、物議をかもしたことは言うまでもない。
最近で言えば青葉賞におけるカカドゥでの騎乗が“ポツン”にあたる。
最後方に位置取り、直線では(多少詰まったこともあるが)ほとんど追わずにレースを終えている。レース映像を見てもらえれば、ポツン騎乗のイメージが付くのではないだろうか。
“ポツン騎乗”の定義
断っておくが、この記事ではあえて「ポツン騎乗の是非」について触れない。横山典弘騎手は何かしらの意図があってそうした騎乗をしているのだろうし、陣営もそれが分かって騎乗依頼を出している。その意志を尊重したい。
ここではあくまでもデータ的な観点から、ポツン騎乗が本当に多いのか、考察していく。
ではポツン騎乗の集計を行っていこう。さすがにすべてのレースを見返していると日が暮れるどころではなくなってしまうのため(苦笑)、以下をポツン騎乗とする。
・3コーナー、または4コーナーで最後方につけていること
※16頭立てで「7―7―12―16」のように明らかに垂れた馬は除外とする
計測地点を2箇所に設定したのは、動き出す位置が違うためだ。3コーナーからまくっていき、4コーナーで何頭か抜いているというケースはあるため、計測地点が4コーナーだけでは不十分。一方、4コーナーになると前の馬が垂れてきて、動いていないのに通過順が上がるというケースが見られる。よって、3コーナーか4コーナー、どちらか一方でも最後方なら“ポツン”と定義することが妥当と判断する。多少の誤差があるのはご容赦願いたいが、大きなズレはないはずだ。
定義に沿って2015年のポツン回数を集計したところ……
横山典弘騎手
ポツン回数/騎乗数/ポツン率
16回/196騎乗→8%
100回騎乗して8回程度、ポツン騎乗があることになる。
トップジョッキーの“ポツン騎乗比較”
これだけでは横山典弘騎手のポツン騎乗が特別多いのかどうか分からない。そこで、2015年のリーディング上位5人(5月7日現在)、福永祐一騎手、戸崎圭太騎手、浜中俊騎手、武豊騎手、岩田康誠騎手の“ポツン率”を調べてみた。
横山典弘騎手
16回/196騎乗→8%
福永祐一騎手
7回/304騎乗→2%
戸崎圭太騎手
12回/322騎乗→3%
浜中俊騎手
7回/283騎乗→2%
武豊騎手
4回/266騎乗→2%
岩田康誠騎手
9回/354騎乗→3%
ご覧のとおり、リーディング上位の騎手たちは総じて2、3%程度に収まっている。横山典弘騎手の8%というのは、相当高い確率だと断定して良さそうだ。回数の面でもダントツの“ポツン騎乗リーディング”といえよう。
繰り返すが、ここではポツン騎乗のぜひについて触れない。(他の記事で書くことはあるかもしれないが)
ただひとつ言えることは馬券を買う身、馬を応援する身からすると、馬柱に「横山典弘」の文字を見つけた時、胸にざわつく何かを感じずにはいられないということだろうか。天才的な騎乗をするかもしれないし、ポツンかもしれない。天才がどのような気まぐれを起こすのかはレースが始まってみないと分からないのだから。
果たして横山典弘騎手のポツン騎乗は続いていくのか? ポツン騎乗で大仕事をやってのけることはあるのだろうか? 注視してみていくと、面白いかもしれない。
おすすめコラム
●ポルトドートウィユと武豊騎手をつなぐ“絆”!日本ダービーへ必勝体制
●ゴールドシップと横山典弘、天皇賞春のロングスパートに隠された“思惑”とは?
●キズナと武豊が天皇賞春で惨敗した5つの理由と英断への期待
●ロイスアンドロイス、90年代を代表する最強の重賞未勝利馬〜時代を彩ったバイプレーヤーたち〜
●稀代のバイプレーヤー!ウインバリアシオンとステゴ産駒の“闘争”の歴史