ハービンジャーは失敗種牡馬なのか?伸び悩む産駒たちと今後への期待

競馬界に衝撃が走ったのは2010年9月のことだった。

キングジョージ(英GI/芝2400m)を勝ったハービンジャーが日本で種牡馬入りする――。

胸が踊るようなニュースだった。しかも名牝たちを所有する社台グループの社台スタリオンステーションに入るというのだから、期待が大きかった。

しかし、そんなハービンジャーが今、苦境に立たされている。満を持してデビューした初年度産駒たちが、苦戦を強いられているのだ。


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“嫁”は日本屈指の名牝たち

サンデーサイレンスの血を持たないハービンジャーは重宝された。初年度は211頭の種付頭数を記録し、うち146頭が血統登録している。

繁殖相手は1997年の年度代表馬エアグルーヴ、牝馬として37年ぶりに有馬記念を制したダイワスカーレット、桜花賞を含むマイルGI2勝のダンスインザムード、さらに05年日米でオークスを勝ったシーザリオなど、日本屈指の良血牝馬が揃えられた。

一般的に種牡馬入り初年度は期待値が高く、いい牝馬が揃えられることが多い。とはいえ、社台グループといえばキングカメハメハやシンボリクリスエスといった非サンデー系の一流種牡馬を保有している。その中でここまで一流の繁殖牝馬がずらり揃うというのは、ハービンジャーに対する期待の高さ以外にほかならない。

期待を背負った産駒たち、しかし……

もっとも、残念なことに今のところハービンジャーは種牡馬として結果を出せていない。

質のいい牝馬が集められた中、5月20日の時点で重賞を勝っているのはベルーフ(京成杯)のみ。いわば3歳馬の品評会といえるクラシックに出走したのもベルーフだけ。桜花賞に出走した産駒はいない。そしてオークス、日本ダービーともに登録馬はゼロだ。

新馬、未勝利を勝ち上がったのが36頭に対し、2勝以上挙げているのはたった3頭しかいない。重賞戦線で活躍しながら春のクラシックに届かなかったロカを筆頭に、勝ち切れない産駒が目立っている。

当初の期待を踏まえると、現時点ではお世辞にも「成功」といえる結果を残せていないのだ。

ファーストクロップで見限るのは早い?

ただし、この評価はあくまでも「現時点」でのものだ。初年度産駒の3歳春シーズンが終わった時点ですべてを判断するのは時期尚早といえる。

なぜなら、古馬になってから飛躍的に成長を遂げる可能性はあるし、第2世代がいい成績を残すケースは多い。

ハービンジャーは古馬になってから力をつけた馬で、血統的にはまだまだこれから。また、生産を行う牧場や競走馬を管理する厩舎にとっても初年度産駒の扱いは手探り。1年目で育成方法をつかみ、2年目から成績を伸ばすケースは少なくない。

例えば最多勝利時は120勝を挙げたシンボリクリスエス産駒も、ファーストクロップは18勝と泣かず飛ばずだった。(2年目は102勝と躍進。)また、ディープインパクトにしても1年目はなかなかうまく行かず、2年目から勝利数や大舞台での勝ち鞍が増えていった。

そう考えると、ハービンジャーを見限るのはまだ早い。夏を越え大きく成長したハービンジャー産駒が秋開催を盛り上げる可能性は十分に考えられる。2年目からもいい馬が出るはずだ。

現時点で成功といえる成果を挙げられていないハービンジャーであるが、今後の巻き返しに期待したい。

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