厩舎や調教師の言葉をどこまで信じていいのか? 競馬ファンの永遠のテーマだ。
「メイチ」と言っていたのに惨敗し、「無事に回ってきてくれれば」と言っていた馬が重賞で勝つことは決して珍しくない。
最近で言えば2015年の京都金杯におけるゴールデンナンバーが該当する。故障明けだったゴールデンナンバーの関係者はレース前、「まずは無事に回ってきてほしい」とコメントを出していた。しかし、終わってみれば15番人気ながら2着と激走した。
もっと有名な馬を例にあげてみよう。2012年、宝塚記念におけるオルフェーヴルだ。
この年、オルフェーヴルは天皇賞春でまさかの惨敗を喫していた。宝塚記念を臨むにあたり、池江泰寿調教師は「オルフェーヴルは70%の仕上げ」と公言してはばからなかった。さらに「ファン投票で2、3番人気なら回避していた」とも語り、状態が万全ではないと示唆していた。
結局、オルフェーヴルは1番人気に支持されたものの、単勝オッズは3.2倍。ファンの不安が現れた数字となった。しかし、終わってみればご存知の通り、完勝も完勝。前走までが嘘だったかのような走りを披露した。
さらに池江調教師はオルフェーヴルの引退レースでも「あまり状態は良くない」と語っていたが、いざレースになると歴史的大勝を収めている。
なぜこういうことが起こるのか?
また、馬券を買う上で調教師の言葉をどのように判断すればいいのか?
私は明確な考えを持っている。今回はその“3つのファクター”を紹介しよう。
目次
1.厩舎・調教師が本音を言うとは限らない
池江調教師は基本的に本音を語る調教師として知られている。(オルフェーヴルの件があってやや信頼性が落ちたようだが。)
しかし、何を考えているかなんてことは本当のところ、当人にしかわからない。だから、そもそもそういった嘘か本当か分からないコメントを鵜呑みにして馬券を買うべきではないのだ。
2.厩舎・調教師が馬の本質を理解しているとは限らない
子供の頃、「先生は何でも知っている」と思っていた方、あるいは10代の頃に「社会人は何でも知っている」と思っていた方は多いのではないだろうか? しかし、大人になってみると、過去の自分が抱いていた考えが“幻想”だったことに気付かされる。
私は調教師になったことがないため、想像の域を超えない。ただ、おそらく調教師にも同じことが言えるのではないだろうか?
調教師が何でも知っている、分かっていると思ったら大間違いなのだ。
「この馬は馬場が渋ると……」という謳い文句を目にする。しかし、そんな馬が平気で重馬場をこなすことはよくある。(最近で言えば小倉大賞典のダコール。)一番近くにいる調教師でも、馬の本質を理解しているとは限らない。
盲目的に調教師を信じるのは、かしこくないわけだ。
3.馬が毎回本気を出しているとは限らない
調教で走る馬、走らない馬、まじめに走る馬、ヤル気のない馬など、馬のタイプは千差万別だ。調教師は馬のキャラクターは把握しているだろうが、毎度毎度、その見方が正しいとは限らない。
よって、調教で走らなかったからレースでも走らないとは限らないのである。
いかがだろうか?
つまり、調教師の言葉を信じて馬券を買うというのは“三重のリスク”を負うことになるのだ。
そういうリスクを背負って馬券を当てるというのは簡単なことではない。
「調教師の言葉を信じるのはほどほどに!」
今振り返ると、オルフェーヴルは競馬ファンに向け、そんなメッセージを送っていたのかもしれない。