5月6日、アメリカ競馬の歴史に新たな1ページが加わった。
「37年ぶり、史上12頭目の米クラシック3冠馬 アメリカンファラオ」
まさに快挙だった。文字だけで見るとあまり伝わらないかもしれないが、今から37年前、1978年にアファームドが米三冠を達成したとき、日本はTTGの一角であったグリーングラスが天皇賞を優勝していた時期だった。
またアメリカのクラシック3冠は日本と違い、約一か月の間に3冠レースすべてを行うため、競走能力の高さ以上にタフさが求められる。そしてこれが3冠を達成しにくい大きな要因のひとつであるのは間違いない。
3冠を勝ち抜く能力とタフさを兼ね揃えた37年ぶりの3冠馬――。その歴史と可能性に迫っていこう。
生い立ち
アメリカンファラオは2013年のサラトガのファシグティプトンセールに出され、300,000ドルで買い戻された鹿毛の牡馬である。父パイオニアオブザナイルはパワーと持続力に優れた赤丸急上昇中の種牡馬であり、その父は現在日本で繋養されているエンパイアメーカーと日本でも馴染みが深い。
母のリトルプリンセスエマは兄弟にGI勝ち馬のいる良血馬。父系がアンブライドルドとザ・アメリカ馬といった感じである。
ファラオ?フェイロー?フェイロア?
アメリカンファラオは名門バファート厩舎へと入厩。デビュー戦こそ5着に敗れたが、その後は連戦連勝で頭角を現し。そのまま2歳チャンピオンへと登りつめた。たちまち翌年のクラシックの台風の目となったアメリカンファラオだが、実は名前に関して一騒動があった。
エジプト人のオーナーが馬名を公募し、その中から選ばれた名前がアメリカンファラオなのだが英語表記の馬名を見ると「American Pharoah」となっている。
アメリカンファラオならば本来「American Pharaoh」となるはずだが、実はこれ、馬名登録の際に誤ってスペルを打ち間違えたのが原因なのである。オーナーの抗議もむなしく、スペルの変更は認められなかった。
【次のページヘ】史上稀にみる好メンバーが揃った一冠目