武豊騎手がハナを叩かなかった理由
ただし、ここで一つの疑問が生まれる。前が有利な馬場状態なら、ベルカントでもいつものように逃げればよかったはずだ。
なぜ武豊騎手はハナを叩かなかったのか?
その答えは、北九州記念のペースの特徴にある。
小倉芝1200mはコース形態上、ペースが上がりやすく、逃げ馬に不利な展開になりやすい。特にレベルが高いスプリンターが集まる重賞なら、ペースが落ち着くことは考えづらい。
事実、このレースでもハナを主張したニザエモンを筆頭に、4角2番手のメイショウイザヨイ、同3番手のサカジロロイヤルがハイペースで飛ばした。
ただし、(いくら前有利の馬場状態だったとしても)ハイペースで飛ばしたなら最後はバテてしまうもの。実際、先行した3頭は16〜18着の下位に沈んでいる。よって、前に行き過ぎるのも考えものなのだ。
まとめると、
・馬場は前有利
・ただしレースのペースは上がる可能性が高い
=好位差しがベスト
という式が成り立つ。そしてベストの選択をした人馬こそ、ベルカントと武豊騎手だったのだ。
武豊騎手は北九州記念を4勝している名手である。当然、レース傾向は頭に入っていたはずだ。だからこそ、馬場状態とレース傾向に合ったベスト騎乗ができたと考えられる。
そもそもベルカントの能力が高くなければ重賞を勝つことはできなかったわけだが、いつものように前につける競馬をしていたらハイペースに巻き込まれて沈んでいたかもしれない。言い換えると、武豊騎手の好騎乗がなければ、今回の北九州記念を制すことは難しかったということだ。
それくらい“天才”の騎乗ぶりが光った北九州記念だった。
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