波乱を起こす準備は整った。
2018年1月21日、中山競馬場でアメリカジョッキークラブカップ(AJCC/GII/芝2200m)が行われる。ゴールドアクター、ミッキースワロー、ダンビュライト、ブラックバゴらが出走するが、どんなレースが展開されるのか? 台頭する可能性を秘めた伏兵とは?
ここではこの舞台に果敢に挑戦してきた牝馬トーセンビクトリーにスポットを当て、AJCCに臨む上での期待について考察していく。
目次
期待① 見せ場十分だった前走グランプリ
トーセンビクトリーの前走はキタサンブラック有終の美に終わった先日の有馬記念だ。
全くの人気薄でこの舞台に挑んだこの馬は、人気順とさして変わらない14という冴えない着順でレースを終えている。やはり牡馬の一級戦に混じってのレースでは荷が重かったのだろうか?いや、一概にそう決めつけるのは極めて危険だ。
有馬記念でのレースぶりを振り返ると好位を積極的に追走し、勝負どころでは抜群のしびれる手ごたえで進出し大きな見せ場を作っている。最後の直線では不利もあったが、それ以上に敗因は確実に距離適性だと感じるほど手ごたえとは裏腹に失速している。あの手ごたえなら勝ち負けに持ち込めるのが自然だ。つまり有馬記念の敗因は能力不足ではなく、距離不向き。つまり、この馬は距離さえ自分の得意レンジなら牡馬相手でも通用する可能性が十二分にある。再度あの手ごたえで最終コーナーを回ってくれば300メートル短い今回はゴール板まで息が持つはずだ。
期待② 信頼しづらい人気馬たち
この馬以外のメンバー構成が微妙なことも、トーセンビクトリーに注目が集まる理由だ。
長期休養明けのゴールドアクターに、極悪馬場に苦しんだ菊花賞以来のミッキースワロー、甘いところがありようやく自己条件を突破したダンビュライト。これらの面々が人気になるのであれば、中山に実績があり有馬記念でもおっと思わせるシーンがあったトーセンビクトリーにも十分チャンスがあるだろう。
期待③ 中山で覚醒する血筋
その母の血は中山で何度も激走を見せてきた。
この馬の母トゥザヴィクトリーは言わずと知れた名牝で、ドバイワールドカップでの2着、大激戦のエリザベス女王杯制覇など競馬ファンの脳裏に多くの素晴らしい走りを焼き付けた。その中には有馬記念3着の好走も含まれる。そしてグランプリを筆頭に中山巧者という性質は子供たちにも引き継がれた。トゥザグローリーは有馬記念で2度馬券なり、トゥザワールドは弥生賞制覇、皐月賞2着のみならず有馬記念でも連に絡み多くのファンを驚かせた。昨年の中山牝馬ステークスで同じ特性を見せたトーセンビクトリーが再度中山で躍動する。
まとめ
ここまで見てきたように、このメンバー構成なら適性距離の得意中山でトーセンビクトリーが波乱の使者となる可能性は十分だ。昨年はシングウィズジョイが悲運な最期を遂げたこのレース。古馬牝馬の果敢なチャレンジに大きな期待がかかる。
文=櫻井秀幸