今年も凱旋門賞の季節がやってきた。日本馬の参戦はないが、欧州各国のトップホースがロンシャン競馬場に一堂に会するビッグレースはやはり特別だ。特に今年は有力馬が揃って前哨戦を快勝し、「役者が揃った」感がある。ここでは有力馬を「3連覇を狙う馬」、「各国ダービー馬」、「歴戦の古馬」の3つに分けて紹介していきたいと思う。
第3回の今回は「歴戦の古馬」だ。
目次
フリーイーグル(Free Eagle) ~ 遅れてきた大物
まずは「遅れてきた大物」の言葉が似合う4歳馬フリーイーグルを紹介したい。デビュー戦を圧勝し、「ダービー馬候補」との呼び声があったが続くGIIIブリーダーズカップジュヴェナイルターフトライアルでは後にイギリス2冠馬となるオーストラリアの2着に敗れる。故障で1年の休養を余儀なくされ、復帰戦となった昨年9月のGIIIエンタープライズSを7馬身差の圧勝で飾り、GI初挑戦となったGIチャンピオンSではノーブルミッションとアルカジームの壮絶な一騎打ちの1馬身1/4差の3着に敗れたが、4着以下は3馬身離しており来シーズンの飛躍を期待させる内容で3歳シーズンを終えた。
今シーズンはぶっつけで、日本のスピルバーグも出走した6月のロイヤルアスコット開催、GIプリンスオブウェールズSで復帰。約8か月ぶりのレースだったが、2番手から抜け出すと昨年のフランスダービー馬、ザグレイギャッツビー以下を完封。8か月振りでこのパフォーマンスはなかなか出来るものではない。
プリンスオブウェールズS
その後、前哨戦はイギリスダービー馬、ゴールデンホーンと同じGI愛チャンピオンSを選択。抜群の手応えから抜け出しにかかったところで、ゴールデンホーンが大きく右に斜行し、その影響をまともに受け3着。その不利が無ければ2着は間違いなかっただろう。凱旋門賞では初のフランス競馬がどう出るかだが、今年はまだ2戦、通算でも6戦しかしておらず、上昇度と言う点では3歳馬に劣らない。
イーグルトップ(Eagle Top) ~ 今年のキングジョージ好走馬
次に紹介するのはアイルランド、イギリスの上半期総決算(日本でいう宝塚記念に該当)であるキングジョージ6世&クイーンエリザベスSの好走馬だ。ハナ差の大接戦の末、ポストポーンドが勝ち、イーグルトップが2着となったのだがまずはレース映像を見てもらいたい。
キングジョージ6世&クイーンエリザベスS
2着だったイーグルトップは、先述したフリーイーグルと同じ4歳馬。3歳春にGIIキングエドワード7世Sを制して、キングジョージに挑戦(4着)。その後10か月の休養を経て今年の5月に戦列に復帰。重賞を2つ叩いてキングジージに再度出走した。ご覧いただいたように大外から1頭目立つ末脚を駆使しあわやの2着。勝ちに等しい競馬といって良いだろう。その後、9月19日のGIIIアークトライアルに出走したが、出遅れが響き3着に敗れてしまった。
ドルニヤ(Dolniya) ~ 名手とその切れ味で
この馬名に聞き覚えのあるファンは多いかもしれない。日本でもお馴染のクリストフ・スミヨン騎手を背に今春のドバイシーマクラシックで日本のワンアンドオンリーらを破った4歳牝馬、フランスのドルニヤだ。ドルニヤは3歳春にGIIマルレ賞で重賞初制覇を飾ると、凱旋門賞の前哨戦のヴェルメイユ賞ではトレヴに先着となる3着に好走。更に注目すべきは5着に敗れた昨年の凱旋門賞だ。昨年の凱旋門賞はスローペースで先行勢が有利な展開だった。その中で後方からレースを進めた組では最先着となる5着まで追い上げたのだ。牡馬相手の第一線で戦える力を示した1戦だった。その追い込み脚質だった本馬が先行し、各国の牡馬を切り捨てたのがドバイシーマクラシックである。
ドバイシーマクラシック
その後、GIコロネーションカップでは早めに抜け出し、後続の目標となる形で2着、GIサンクルー大賞ではトレヴや、後述するフリントシャーに先着を許す3着で春シーズンを終えた。9月13日に行われた前哨戦のGIIフォワ賞では外から自慢の末脚が影を潜めて4着に敗れたが、これは不良馬場の影響だろうから心配することは無い。昨年の走りからしても良馬場であれば好勝負可能だし、なによりスミヨン騎手が不気味だ。
フリントシャー(Flintshire) ~ さらに力を付けた昨年の2着馬
地元フランスの5歳牡馬で、昨年の凱旋門賞2着馬だ。打倒トレヴ筆頭と言われている今年のフランスダービー馬、ニューベイと同じアンドレ・ファーブル厩舎に所属する。3歳時にGIパリ大賞典を制し、その年の凱旋門賞候補とも言われたほどの本馬。その後は度々GIでワンパンチ足りない競馬が続いていた。そんな中人気を落としていた昨年の凱旋門賞で2着に好走し、続くGIブリーダーズカップターフでも2着、そして昨年末のGI香港ヴァーズではパリ大賞典以来のGI勝利を挙げた。
香港ヴァーズ
今年は一般戦2着、ドバイシーマクラシック2着、コロネーションカップ3着と全てドルニヤに惜しくも先着を許しているが、サンクルー大賞ではドルニヤに先着となる2着。アメリカのGIソードダンサー招待Sを圧勝しての3年連続の凱旋門賞参戦となる。勝ち身に遅いタイプだが、逆に言えばこの安定感は強みになる。
もっとも、今回挙げた馬たちはトレヴや3歳ダービー馬に比べると一枚落ちるという評価で落ち着いている。果たして彼らが低評価を覆せるのか? 注目されるところだ。
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