「競馬に絶対はない」
その格言を痛感させられる結果となった。
6月25日、阪神競馬場で春競馬の“総決算”宝塚記念(GI/芝内回り2200m)が行われ、サトノクラウン(牡5)が優勝した。圧倒的一番人気に支持されたキタサンブラックは、まさかの9着に敗れた。
なぜ現役最強馬は無残に惨敗することになったのか? その理由を検証していこう。
目次
プロフィール〜血統・誕生日・馬主・調教師・生産者〜
父 | ブラックタイド |
---|---|
母 | シュガーハート |
母の父 | サクラバクシンオー |
母の母 | オトメゴコロ |
性別 | 牡 |
馬齢 | 5 歳 |
生年月日 | 2012年3月10日 |
毛色 | 鹿毛 |
馬主 | (有)大野商事 |
調教師 | 清水久詞(栗東) |
生産牧場 | ヤナガワ牧場 |
産地 | 日高町 |
馬名意味 | 冠名+父名の一部 |
数多くあった不安要素
まず、大前提としてキタサンブラックに不安要素がなかったわけではない。それどころか、5つもの明確な不安要素があった。
・天皇賞春の反動
・過去10年で春古馬王道路線連覇はなし
・グランプリは3回走って勝利ゼロ
・叩き3戦目はパフォーマンスを落とす傾向に
・武豊騎手もグランプリは久しく勝っていない
※詳細→宝塚記念2017の予想データ分析…キタサンブラックと武豊騎手の5つの不安要素とは?
いくら天皇賞春でサトノダイヤモンドを破って現役最強馬の称号を得た馬とはいえ、これだけの不安要素があった中で1.4倍の一番人気になるというのは少々荷が重かったと言えるかもしれない。
想定外の展開の連続
実際のレースでも想定外のことがいくつも起こった。
まず今回はハナを切ることができなかった。ここ数戦も番手からの競馬をしているが、天皇賞春はヤマカツライデンが、大阪杯はマルターズアポジーが大逃げを打ったため、キタサンブラックは実質的な逃げ馬として自分でペースを作ることができていた。
しかし、今回は3番手に控えた。しかもハナを切ったのはシュヴァルグラン。大方の予想を覆す馬、逃げたことがない馬がペースを作ることになり、少々おかしなラップを刻むことになった。
12.5-11.1-11.6-13.1-12.3-11.7-11.6-11.8-11.7-11.8-12.2
2、3ハロン目で加速したが、4、5ハロン目では極端にペースが緩んでいる。キタサンブラックが逃げたときには起こらない現象だ。シュヴァルグラン、そしてシャケトラに並ぶ形で競馬をするしかなかったキタサンブラックは、結果として自分のペースで競馬ができなかったのだ。
さらに向こう正面ではミルコ・デムーロ騎手騎乗のサトノクラウンが外側から上がってきてプレッシャーをかけてきた。ここでまた自分の走りをするのが難しくなってしまった。
象徴的だったのが武豊騎手の手綱だ。いつもはほとんど手綱を緩めた中でレースを進めていくが、この日はガッチリと握られていた。まるでキタサンブラックを必死でなだめるような力の入れようだった。この点からも、いつものキタサンブラックではなかったことがうかがえる。
向かなかった展開
直線に入った段階でほとんど余力が残っていなかったことを見ても分かる通り、非常に消耗の激しいレースとなった。
実際、ペースは速かった。そのことは先ほどのラップと着順別の位置取りを見ると一目瞭然だ。
馬名 | 通過順位 |
---|---|
サトノクラウン | 07-06-06-06 |
ゴールドアクター | 06-06-06-09 |
ミッキークイーン | 09-09-09-09 |
シャケトラ | 02-02-02-03 |
レインボーライン | 10-09-10-06 |
ミッキーロケット | 03-04-04-06 |
スピリッツミノル | 07-06-06-05 |
シュヴァルグラン | 01-01-01-01 |
キタサンブラック | 03-03-02-03 |
クラリティシチー | 03-04-04-02 |
ヒットザターゲット | 10-11-11-11 |
上位3頭は差し、追い込み馬で、先行馬はシャケトラを除いて下位に沈んでいる。シュヴァルグランは天皇賞春で2着になるようなスタミナを誇る馬だが、実力馬であってもこのペースでは持ちこたえられなかったのだ。
リズムの悪い走りをした中で展開も向かなければ、キタサンブラックが沈んだのも無理はない。
数々の不安要素が当たり、実際のレースでも今までのような展開に持ち込めなかった。これらがキタサンブラック惨敗の理由だと考えられる。
秋の復活なるか?次走の選択は……
さて、果たして今後、どのような道を選択するのだろうか?
宝塚記念の結果次第ではフランスの凱旋門賞へ挑戦するプランがあると明言されていた。実際に登録も済ませている。
しかし、ここまでの惨敗を喫すると、話は変わってくるかもしれない。もともと北島三郎オーナーは「息子を知らない土地へ連れていくのはかわいそう」と海外遠征に消極的だった。GIを勝つにつれて前向きな考えに変わってきたと発言していたが、このレースを見て考えを変える可能性がないとは言い切れないだろう。
国内に専念するのか、あるいはこの結果を受けてなお、海外に挑戦するのか。
一つ確かなことは、多くの競馬ファンがキタサンブラックの復活を、今から待ち望んでいるということだ。