10万人を超える大観衆に魅せた圧倒的な力、絶対的王者の引退——。
2017年12月24日、中山競馬場で有馬記念(GI/芝 2500m)が行われた。再度その能力の高さを顕示したキタサンブラックは、2着以下を寄せ付けず見事引退レースVを成し遂げた。
2番人気に推されたスワーヴリチャードは4着での入線となったが、勝者と敗者を決める分岐点はどこにあったのか振り返っていこう。
目次
結果・着順
2017年12月24日(日) 5回中山8日 天候 : 晴 馬場状態 : 良
【11R】 第62回有馬記念
3歳以上・オープン・G1(定量) (国際)(指定) 芝 2500m 16頭立
着 | 馬名 | 性齢 | 人 |
---|---|---|---|
1 | キタサンブラック | 牡5 | 1 |
2 | クイーンズリング | 牝5 | 8 |
3 | シュヴァルグラン | 牡5 | 3 |
4 | スワーヴリチャード | 牡3 | 2 |
5 | ルージュバック | 牝5 | 10 |
6 | シャケトラ | 牡4 | 7 |
7 | サウンズオブアース | 牡6 | 14 |
8 | レインボーライン | 牡4 | 9 |
9 | サトノクロニクル | 牡3 | 11 |
10 | ヤマカツエース | 牡5 | 6 |
11 | ミッキークイーン | 牝5 | 5 |
12 | ブレスジャーニー | 牡3 | 12 |
13 | サトノクラウン | 牡5 | 4 |
14 | トーセンビクトリー | 牝5 | 15 |
15 | カレンミロティック | セ9 | 16 |
16 | サクラアンプルール | 牡6 | 13 |
LAP 6.8-11.6-11.9-12.2-12.3-13.3-13.2-12.8-12.2-12.1-11.7-11.2-12.3
通過 30.3-42.5-54.8-68.1 上り 72.3-59.5-47.3-35.2 平均 1F:12.29 / 3F:36.86
払い戻し
単勝 2 \190
複勝 2 \120 / 3 \550 / 10 \180
枠連 1-2 \1600 (6)
馬連 02-03 \3170 (9)
ワイド 02-03 \1180 (13)/ 02-10 \280 (2)/ 03-10 \2760 (30)
馬単 02-03 \3810 (12)
3連複 02-03-10 \5420 (16/560)
3連単 02-03-10 \25040 (68/3360)
レース分析
レースラップは以下の通りである。
6.8-11.6-11.9-12.2-12.3-13.3-13.2-12.8-12.2-12.1-11.7-11.2-12.3
キタサンブラックがスタートを決めて楽にハナを取る形で隊列が形成され始めた。序盤は少々流れたが、1周目の直線あたりから徐々にキタサンペースに落ち着いていった。
1角、2角では13.3-13.2-12.8と、大胆と言っていいほどにペースが落とされた。向正面から徐々にペースが上がり、最後の1000mは12.2-12.1-11.7-11.2-12.3とロングスパートではあるものの、直線入り口で一気に突き放した。
直線で追い出されたキタサンブラックは後続の追随を許さず見事優勝を果たした。ラスト1Fは12.3と少々甘くなったが、差せる位置に馬を寄せ付けなかった。
直線であわや大事故ともなりかねない騎乗があったのは残念である。不利を受けたのはシュヴァルグランとサクラアンプルールだが、あれがなければ2、3着は変わっていたかもしれないと思うと少し残念でもある。
しかし、落馬などあればキタサンブラックの祝福ムードではなくなってしまう。彼の強さは十分に伝わった。人馬ともに怪我なく完走できたことが最良の出来事だったといえるだろう。
出走馬勝因、敗因、次走への展望
1着 キタサンブラック
スタートを綺麗に決めて先頭に立った。序盤こそペースが流れたが、1周目ホームストレッチあたりから少しずつペースを落とした。1、2角では13.3-13.2-12.8と大胆に息を入れた。
向正面で少しずつペースが上がり、ラスト1000mは12.2-12.1-11.7-11.2-12.3とロングスパートの形で勝負に出た。かなりペースを落としていたにも関わらず、早い段階で動く馬がいなかったため、キタサンブラックにとっては楽な流れとなった。
直線で追い出されると後続の追随を許さず、一度も先頭を譲ることなく見事引退Vで有馬記念を優勝した。最後の坂で甘くなることが多く、今回も11.2-12.3と甘くなった印象を受けるが、そこに付け入ることのできる位置に他馬を寄せ付けなかった。
2着 クイーンズリング
内枠を活かした完璧な騎乗でこちらも引退レースで結果を残した。直線での斜行はあったものの、それを除けばさすがC. ルメール騎手といった騎乗だった。
内5番手にポジションを取ったC. ルメール騎手、道中ロスなく進めることで脚を溜めることができた。この馬にとっては完全なロングスパートになりきらなかったこと、内枠を活かしたルメール騎手の完璧な騎乗が噛み合って生まれたものだろう。
外国人騎手の大舞台での勝負根性を見せ付けられた。やはり外国人は巧いと表現したくなるエスコートだった。
3着 シュヴァルグラン
中団後ろで道中運んでいたが、3、4角で先に後ろから外を回って動いてきたスワーヴリチャードとともに進出を開始した。内から斜行したクイーンズリングと外から斜行したスワーヴリチャードに挟まれて不利を受ける場面があった。
この不利さえなければ2着まで食い込めていたことも予想でき、非常に残念な結果に終わった。やはり左回りで力を存分に発揮する1頭ではないか。キタサンブラック不在となるこれからのレース、この馬が今後どのような競馬を見せるのか期待したい。
4着 スワーヴリチャード
懸念された右回り、直線で他馬に大きな迷惑をかける形となった。
直線で右鞭を受けても内に大きくヨレてしまい、シュヴァルグランやサクラアンプルールなどに不利を与えてしまったのは良くなかった。
それでも出負けして後方からの競馬になりながら4着は立派で、ここからさらに完成度が上がれば来年の期待は計り知れない。
5着 ルージュバック
最後方で直線を迎えるも上がり最速で懸命に追い込んでの5着。枠がもう少し内になればさらに着順をあげることができた可能性もある。ルージュバックもここで引退か。
キタサンブラックの引退レースだったが、ルージュバックに騎乗した北村宏司騎手は菊花賞まで主戦としてキタサンブラックに跨っていた。彼にとっても思い入れのあるレースだったのではないか、今回騎乗のルージュバックとともに掲示板まで駆け上がってきた。
16着 サクラアンプルール
直線で不利を受けて着順を大きく落とした。穴として注目していたファンは多く、落胆の色を隠せなかった。サクラアンプルール、蛯名騎手ともに怪我なく完走できたのは不幸中の幸い。
ここでこの着順になったのは不利があったことによるもの。中山巧者の実力はまだまだ発揮されていない。今後注目してみたい1頭である。
まとめ
キタサンブラックの引退Vで幕を閉じた今年の有馬記念。キタサンブラックはやはり強かった。今後王者の引退でGIレースのペースに乱れが生じることが予想される。
これからはまた違った意味で面白い競馬が観られるだろう。
ありがとう、キタサンブラック。