現役最強馬の座を争う3頭のデッドヒートに、淀が揺れた。

4月30日に京都競馬場で行われた天皇賞春(GI/芝外回り3200m)で、1番人気のブラックタイド産駒キタサンブラック(牡5)が、3番人気シュヴァルグラン(牡5)、2番人気のサトノダイヤモンド(牡4)を押さえて勝利した。

勝ち馬の勝因、敗れた馬たちの敗因は何だったのか? 振り返っていくことにしよう。


目次

レース映像・動画

映像はこちらから(※JRA公式サイト→レース結果のページでご覧いただけます)

結果・着順

2017年 4月30日(日) 3回京都4日 天候 : 晴  馬場状態 : 良
【11R】 第155回天皇賞(春)
4歳以上・オープン・G1(定量) (国際)(指定) 芝・外 3200m 17頭立

馬名S性齢
3キタサンブラック牡51
6シュヴァルグラン牡54
15サトノダイヤモンド牡42
10アドマイヤデウス牡610
7アルバート牡66
9ディーマジェスティ牡48
12ゴールドアクター牡65
13トーセンバジル牡59
1シャケトラ牡43
105ファタモルガーナセ915
1114ワンアンドオンリー牡611
1216レインボーライン牡47
138タマモベストプレイ牡714
144スピリッツミノル牡516
1517ヤマカツライデン牡512
1611プロレタリアト牝617
172ラブラドライトセ813

LAP 12.9-11.5-11.2-11.3-11.4-11.6-11.6-13.0-12.5-12.7-12.6-12.5-12.2-11.6-11.7-12.2
通過 35.6-46.9-58.3-69.9
上り 72.8-60.2-47.7-35.5
平均 1F:12.03 / 3F:36.09

レース分析

黒光りする馬体がゴール板を通過したとき、掲示板には「3.12.5」という数字が映し出された。

ディープインパクトが持っていた記録を大幅に更新するレコード決着となった。まさに最高の死闘、最高のマッチレースと表現していいレースだっただろう。

逃げ宣言をしていたヤマカツライデンがハナを切り、2番手にキタサンブラックがつけるという戦前の予想通りの展開となった。シュヴァルグランとシャケトラが並ぶように続き、サトノダイヤモンドは中段につけて最初のコーナーを曲がった。

向こう正面に差し掛かると、徐々にキタサンブラックがヤマカツライデンに迫っていく。ライバルを射程圏に捉えたいシュヴァルグランらも追走し、サトノダイヤモンドもポジションを徐々に上げていった。

3、4コーナーに差し掛かった頃にはキタサンブラックがヤマカツライデンを捉え、先頭に立つ。直線の入り口ではキタサンブラック、シュヴァルグラン、そしてサトノダイヤモンドの3頭が並び、力と力の叩き合いとなった。

キタサンブラックは二枚腰で伸び、シュヴァルグラン、粘るアドマイヤデウス、そしてサトノダイヤモンドが追いすがる。それでも後続を寄せ付けなかったキタサンブラックが、先頭を譲ることなく淀の歓声を自分のものにした。

12.9-11.5-11.2-11.3-11.4-11.6-11.6-13.0-12.5-12.7-12.6-12.5-12.2-11.6-11.7-12.2

ヤマカツライデンが引っ張ったとはいえ、キタサンブラックにとっても決して楽なペースではなかったはずだ。特に武豊騎手がレース後「追いかけに行ってしまった」と話したように、向こう正面では徐々に前へ進出していった。キタサンブラックにとって、簡単なレースではなかったわけだ。

むしろ位置取りとしてはシュヴァルグランやシャケトラのほうがよかったし、距離ロスがあったこと以外はサトノダイヤモンドのレース運びも盤石だった。

要するに、厳しいペースになったため、本当の底力が問われるレースになったわけだ。上位に入線した馬たちは、本当に強い馬だった、という結論を出していいだろう。

出走馬勝因、敗因、次走への展望

1着 キタサンブラック

向こう正面で緩まない程度にペースを落ち着かせ、ライバルに脚を使わせつつ押し切る、というのがキタサンブラックの勝ちパターンだ。しかし、今回は脚をためきれなかったように見えた。

それでも直線で力尽きることなく、後続を押さえてしまうのだから恐れ入る。

本当に強い馬の前では理屈など超えて「すごかった」という言葉しか出てこないものだ。今回のキタサンブラックはまさに「すごかった」というほかない。

キタサンブラックの血統や次走は?歴史的名馬は凱旋門賞へ向かうのか?

2着 シュヴァルグラン

最高の条件、最高の枠順、最高の展開だった。

ハーツクライ産駒は成長力が魅力だ。この馬も例に漏れず、今までに増して力をつけてきた。今回はいい枠順を引けたし、キタサンブラックを見る形でレースが進められた。

しかし、それでもキタサンブラックには届かなかった。レース後、鞍上の福永祐一騎手が「思い通りのレースができた」と語ったように、ケチのつけることのない完璧なレースだった。

それだけに、キタサンブラックの強さを褒める他ない。

3着 サトノダイヤモンド

池江泰寿調教師が「相手の方が3つも4つも5つも上」と話したように、どこまでも届かない差があったようにすら感じられた。

もっとも、このレベルになるとほんの少しの差が勝負を分けてしまう。外枠で多少なりともロスがあったことも影響したはずだ。

もう勝ち馬が3頭いればいいのに……とすら感じられたレースだっただけに、今はただただ無事とさらなる飛躍を期待したい。

4着 アドマイヤデウス

特筆すべきは岩田康誠騎手の騎乗ぶりだろう。好スタートからポジションを取ると、あとはなるべく内へ内へ入るように馬を導いた。結果、3、4コーナーではラチ沿い2頭目を、1、2コーナーではラチ沿いに入り、距離ロスを防いだ。

最後、現役最強馬クラスの3頭に競り負けてしまったが、120点のレースだった。馬券を勝ったファンは悔しがりつつ「これで負けたら仕方ない」と思えるレースだったのではないだろうか。さすが岩田騎手、といったところ。

アドマイヤドン産駒、もしくはミスプロ系全体に言えることだが、どうしても3000m以上の底力勝負になると勝てない。キングカメハメハ産駒(キングマンボ系=ミスプロ系)が長距離レースを苦手としていることでも分かるだろう。

あまり得意な条件ではないだけに、大健闘の4着だった。

5着 アルバート

同じくアドマイヤドン産駒のアルバートは中段から我慢の競馬をした。スムーズな競馬ではあったが、なかなか内に入れられず、アドマイヤデウスと比較しても距離をロスしていた感は否めない。

また、なかなか反応が鈍いタイプのため、4コーナーの仕掛け時に置いていかれてしまった。

もっとも、内をつけるような器用なタイプではないし、血統的な欠点もあったため、こちらも力を出し切っての5着だったといえるだろう。

6着 ディーマジェスティ

スタートで出負けしてポジションを悪くし、内に入れずに終始大外を回して距離をロス……というチグハグな競馬になってしまった。直線の入り口では伸びてきたため、一瞬「おっ」と思わせたが、残り200m付近で他の馬たちと脚色が同じになってしまった。

もっとも、あれだけ距離をロスしていて伸びてきたらそれこそ怪物級であるため、このレースぶりで止まるのは仕方なかった。むしろ健闘の6着といえるのではないだろうか。

セントライト記念以降、歯がゆい結果が続いているが、これは血統的な側面が大きそうだ。ディープインパクト産駒×ロベルト系の組み合わせはどうしても中央よりローカル的な条件を得意としている。タフな馬場、コーナー4回などの条件で巻き返しが期待される。

7着 ゴールドアクター

横山典弘騎手が「スタートで終わってしまった」と語ったように、残念なレースになってしまった。本来は先行してアドマイヤデウスのような競馬がしたかったはず。ずっと先行してきた馬が二桁番手につける時点で勝負にならなかった。

ノーカウントと捉えてOKだろう。

8着 トーセンバジル

枠順と脚質の問題でどうしてもロスの多い競馬になってしまった。4コーナーでは一瞬内をつこうとしたように見えたが、スペースがなくて諦めて……といった競馬だった。今回は相手が強かったし、キャラクターとしても「最後の直線で脚は使うけど、それまでのロスが……」というタイプのため、これ以上はどうしようもなかったか。

9着 シャケトラ

スタート、やや出負けしたが、盛り返して好位置を取った。ただ、終始田辺裕信騎手と喧嘩し、行きたがってしまった。2週目の3、4コーナーではほとんど手応えなく、3強の叩き合いを後方で眺めていた。

1枠1番という最高の枠を引いたこともあって人気になっていたが、さすがに初のGIでは荷が重すぎた。

10着 ファタモルガーナ

枠順を利して一発を狙ったが、厳しかった。さすがに力が足りなかったし、高速馬場も向かなかった。

11着 ワンアンドオンリー

3番手につける積極的な競馬だったが、最後のコーナーでは手応えがなく、後退していった。

ワンアンドオンリーに関しては以下の記事で書いたが、3歳時の消耗がすべて。今後も厳しいだろう。

ダービー馬ワンアンドオンリーは古馬GIで勝てない?宝塚記念惨敗の真相を暴く

12着 レインボーライン

出遅れで最後方に待機し、一発を狙ったが、前の3頭が強すぎた。最内をつけば幾分か着順を上げられただろうが、スペースがなく厳しかった。

13着 タマモベストプレイ

力負け。

14着 スピリッツミノル

力負け。

15着 ヤマカツライデン

レコードタイムを演出する良い逃げをうってくれた。積極的なレース運び、名勝負の演出という意味で、感謝したい。

16着 プロレタリアト

力負け。

17着 ラブラドライト

力負け。

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