今年最後の大レース、直線の叩き合いに府中が揺れた。
2017年11月26日、東京競馬場でジャパンカップ(GI/芝2400m)が行われ、シュヴァルグランがキタサンブラックやレイデオロとの叩き合いを制し、GI初制覇を成し遂げた。
今までなかなか大レースで結果を出すことのできなかった馬が、なぜジャパンカップという大舞台で好走できたのか? その理由を探っていこう。
目次
好走への3つのカギ
まずは好走への3つのカギ、すべてが揃ったことが大きかった。レース前に挙げていたポイントは3つ。一つ一つ、見ていくことにしよう。
ポイント① レース質はどうなる?
シュヴァルグランは中距離馬というよりステイヤーだ。阪神大賞典を勝ち、天皇賞春で2着。また、スタミナの問われるアルゼンチン共和国杯も勝っている。
ジャパンカップとアルゼンチン共和国杯は100mしか違わないが、コース形態上、2500mのほうが遥かにスタミナが求められるようになっている。よって、ジャパンカップは得意条件からズレるのだ。
よって、シュヴァルグランにとって有利な展開……例えばハイペースでスタミナが問われる展開になることが“必須条件”といえる。
今回はキタサンブラックが逃げ、淀みのないペースを作った。ペースが流れて瞬発力勝負にならなかったことが、大きな勝因の一つだったわけだ。
ポイント② 馬場状態
次に馬場状態もカギになる。ある程度スタミナの問われるような馬場状態になったほうが好都合なのだ。
これに関しては、シュヴァルグランに追い風になっている。
ジャパンカップは東京の最終週に行われる。ただでさえ、馬場が良くないことが多いことに加え、今年は雨が続いて不良馬場の中で開催が行われていた。馬場が痛み、スタミナが問われる状態になる可能性は十分にある。
東京は良馬場開催だったが、パンパンの良馬場ではなく、タフなコンディションだった。スタミナ自慢のシュヴァルグランにとって、好都合だったわけだ。
ポイント③ 位置取りが命運を左右する
そしてもう一つカギになるのが、位置取りだ。シュヴァルグランはスタートが上手ではないため、どうしても位置取りが後ろになってしまう傾向にある。しかし、後方から全馬を差し切るような瞬発力は持っていない。
むしろ、好位置につけて持ち前のスタミナを生かして粘り切るような競馬のほうが合っている。
今年の天皇賞春や、昨年のアルゼンチン共和国杯がそうだった。直線の入り口では5番手以内につけ、上がりを3〜5位でまとめてフィニッシュ、という競馬がいいわけだ。
今回は内枠をいかし、前に出して好位置で競馬ができた。ボウマン騎手のエスコートは完璧、120点の騎乗だったと言っていいだろう。
この3つのカギが揃ったからこそ、GIという扉をこじ開けることができたのだ。
さすがのハーツクライ!脅威の成長力
そしてもう一つ。血統的な要因を挙げずにはいられない。
シュヴァルグランの父ハーツクライは、4歳の有馬記念で当時無敗だったディープインパクトを破ってGI初制覇を果たした。その後、ドバイシーマクラシックを楽勝。日本馬にとって最も難しい大レースの一つであるキングジョージでは3着に敗れたものの、当時欧州最強だったハリケーンラン、エレクトロキューショニストと真っ向勝負を演じた。
血統的に、古馬になってから驚異的な力をつける傾向にあるのだ。
それは、産駒を見ても同じ。代表産駒のジャスタウェイは、4歳の秋に天皇賞秋を制し、そこから世界最強馬に駆け上がった。そしてウインバリアシオン、カレンミロティック、アドマイヤラクティら、古馬GIで活躍する馬は多い。
要するに、ハーツクライ産駒の成長力がビッグタイトルの獲得につながったわけだ。
まとめ
悲願の栄冠を手にしたシュヴァルグラン。次なる戦いの舞台はどこになるのだろうか? 年末の有馬記念でキタサンブラックと再戦か。あるいはより大きな舞台を見据えて来年へ備えるのか。今後も目が離せない。