勝つのは逃げのディープか、差しのディープか。
いずれも飛躍が期待される4歳馬。どちらもディープインパクト産駒。注目の対決を制したのは、逃げのエイシンヒカリだった。6月14日に行われたエプソムカップ(GIII/東京芝1800m)でサトノアラジンを下し、重賞制覇を成し遂げた。
偉大な種牡馬産駒、個性的な逃げ馬、鞍上武豊騎手――。
将来を楽しみにするなというほうが無理な注文だ。
内容の濃い重賞初制覇
5枠6番からスタートしたエイシンヒカリと武豊騎手はゲシュタルトとの先行争いを制してハナを切る。いつものような大逃げではなく、後続を惹きつけた逃げとなった。
直線では満を持して追い出されると、追いすがる後続を突き放していく。最大のライバルとされたサトノアラジンには詰め寄られたものの、クビ差制して重賞初制覇を達成した。
レースラップを振り返ってみると、価値の高い勝利だったことが分かる。
12.9-11.3-11.4-11.9-11.7-11.6-11.2-11.2-12.2
最初の一ハロンこそ12秒台を記録したが、あとは一貫して11秒台で推移している。息つく隙がない、よどみのないレースになったわけだ。弱い逃げ馬なら、あっという間に失速していただろう。厳しいペースを自ら作り出し、押し切ってみせたのだから価値が高い。武豊騎手と、よほど手が合うのだろう。ほとんど完璧なレース運びだったと言っていい。
何より重賞級のサトノアラジンとの攻防戦を制したのだから、単なる重賞制覇以上の評価を与えていいはずだ。
秋の飛躍に期待
もっとも、課題がないわけではない。もっと道中突っつかれていたら結果は変わっていただろうし、上位5頭中4頭がディープインパクト産駒という“ディープ馬場”の恩恵を受けていた。
ただ、フロックでキャリア8戦7勝、重賞制覇というのはできない芸当だ。サイレンススズカ級かはさておき、久々に実力とスター性を兼ね揃えた逃げ馬が誕生したことを素直に喜びたい。
距離適性などを考慮すると、秋の最大目標は天皇賞秋になるだろう。あるいはマイルチャンピオンシップということもあるのだろうか。キャリア8戦すべてで1800〜2000mの中距離を使っている点を見ると、有力なのは前者と言えそうだ。もちろん、どちらも使う可能性もある。
天皇賞秋と魅力的な逃げ馬……。これ以上書かずとも、夢を見たくなるのが競馬ファンの性というものだ。
まずはレース後、なにもないことを祈りつつ、実りの秋を期待したい。
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