69年ぶりの夢は叶わなかった。
4月16日に行われた3歳牡馬クラシック初戦の皐月賞(芝内回り2000m)に挑んだディープインパクト産駒の牝馬ファンディーナ(牝3)は1番人気に支持されたものの、7着に終わった。
盤石の展開に思われた中、なぜ馬群に沈んでいったのか?
ファンディーナの血統やラップから、敗因を紐解いていくことにしよう。
目次
プロフィール〜血統・誕生日・馬主・調教師・生産者〜
父 | ディープインパクト |
---|---|
母 | ドリームオブジェニー |
母の父 | Pivotal |
母の母 | Glia |
性別 | 牝 |
馬齢 | 3 歳 |
生年月日 | 2014年3月10日 |
毛色 | 青鹿毛 |
馬主 | (有)ターフ・スポート |
調教師 | 高野友和(栗東) |
生産牧場 | 谷川牧場 |
産地 | 浦河町 |
馬名意味 | 良い夢を(タイ語)。母名より連想 |
血統評価は?
ファンディーナはナムラシングン(父ヴィクトワールピサ)の半妹。また、ディープインパクト×ピヴォタルという組み合わせを見ると、ワールドインパクトやダノンジェラード、ロジプリンセスがいる。
また、従姉にはEmollient(父エンパイアメーカー)がいて、芝のGIを2勝、ダートのGIを2勝している。
ここから導き出せるのが、「切れるディープインパクト産駒ではない」ということ。
ナムラシングンは父ヴィクトワールピサが立ち回りのうまい器用なタイプで、オールウェザーのドバイワールドカップを勝っていることで分かるように力のある馬場を得意としている……という側面がある。ただ、そういうタイプになったのは母系の影響もあると考えられる。
例えばナムラシングンとファンディーナの母系を見てみると、ボールドルーラーの血が入っている。ボールドルーラーはアメリカの名血で、ダート競馬の本場らしいパワーと持続力に優れた特徴を持っている。持続力の競馬が得意な背景には、ボールドルーラーがある、という風にも解釈できるわけだ。
また、ワールドインパクトやダノンジェラードを見てみると、33秒台の末脚を連発するようなタイプではない。ダノンジェラードに関しては33秒台、ときには32秒台の脚を連発しているように“見える”が、スローペースだったり、展開的な側面が多かったりして、そこまで切れる馬という印象はないし、実際に2、3着が極めて多かった(=勝ちきれていなかった)というのはスパッと切れるタイプではなかったということを示唆している。
また、この3頭、いずれも500キロ前後の馬格を誇っている。ナムラシングンはまだしも、ディープインパクト産駒で500キロというのは大きい部類に入る。
要するに、瞬発力ではなく、パワー型に寄っている、というのがこの血統の特徴と言えるのだ。
皐月賞の敗因は?
では、なぜ皐月賞で敗れてしまったのか? まずはラップを見ていくことにしよう。
12.1 - 10.8 - 12.2 - 11.7 - 12.2 - 12.4 - 11.9 - 11.4 - 11.4 - 11.7
1.57.8
一見、持続力が問われる展開になり、ファンディーナにとって有利なものに見えなくもない。
ただ、注目すべきなのはタイムだ。1分57秒8はレコード。超高速馬場だったことが分かる。
そこで、ファンディーナのキャリアを振り返ってみると、ほとんどこういったレースを経験していなかったことが見えてくる。
デビュー戦 1分50秒0 ※超スローペース
つばき勝 1分50秒6 ※超スローペース
フラワーカップ 1分48秒7
まずデビュー戦、つばき賞に関してはスローペース、上がり3ハロンの競馬になった。逃げて、あるいは番手につけて上がりを33秒台でまとめられるというのは優秀であるわけだが、「速いペースを経験しているか」という観点から見れば「していない」と結論付けられる。
また、フラワーカップに関してもそう。この時期の中山は非常にパワーのいる馬場になっている。このタイムでも十分に優秀な部類だが、逆に言えばこれくらいの時計しか出ないような馬場、ということができる。
要するに今回の皐月賞とは全く違った馬場で結果を出してきたわけで、高速馬場に対応できるかどうかはまた別問題だった、というわけだ。
これが瞬発力型、高速馬場が得意なタイプのディープインパクト産駒だったらいいが、前述の通りファンディーナはそういう馬ではない。どちらかといえばもっと力の求められる馬場が良いだろうし、改修前の中山で行われていた皐月賞みたいなレースのほうがよかったように感じる。
次走は?
ここを勝ってダービーへ――。そういう未来が描かれていたはずだが、この負けにとってそのプランに暗雲が立ち込めたのは事実だろう。
距離云々、条件云々ではなく、時計勝負になるとしたら厳しい、という側面を持った馬なので、ダービーやオークスへいくにしても「時計との戦い」は避けられなさそう。
パワー型のディープインパクト、しかも先行して押し切れるセンスを持っているだけに、そういう条件を選んで走っていくのも一つの手だ。
パッと「合いそうだな」と思うのは馬場のタフになりがちなエリザベス女王杯、牡馬混合で行けば大阪杯や宝塚記念は面白そう。
今回は期待を裏切ってしまったが、持っている才能に疑いの余地はないだけに、彼女の能力を存分に発揮できる舞台で再び輝いてほしいところだ。