5月3日に行われた天皇賞春(GI/芝3200m)で左前浅屈腱不全断裂により競走能力喪失と診断されたウインバリアシオン(牡7)が、青森で種牡馬入りすることが関係者への取材で分かった。
新天地は青森――。
天皇賞春で故障した後、ウインレーシングクラブは「乗馬として繋養される予定」と公式HP上で明かした。一時はJRAが「種牡馬入り」と報じたものの、同クラブは「連絡の行き違いがあった」として、改めて「乗馬の予定」と発表していた。
しかし、ノーザンホースパークへ移った後、状況が一変して種牡馬入りが決まった。二転三転したウインバリアシオンの去就問題はようやく決着したと見てよさそうだ。
種牡馬入りできたものの現実は厳しく……
競走馬として、自分の血を未来に残せるというのは貴重なことだ。ただし、種牡馬入りを手放しで喜んではいられない。スタッドインするのが青森というのは引っかかる点だ。
青森の競馬関係者の方々には敬意を払いたい。ただし、繁殖牝馬の質としてはかなり落ちる。また、青森県内にいる良血牝馬は北海道で種付けするのが一般的だ。そうなると、ウインバリアシオンにいい牝馬が回ってくる可能性はかなり低いと考えていい。
実際、青森に繋養されている種牡馬を見てみると……
オールセンプー
グリーンアプローズ
サニングデール
スクワートルスクワート
デビッドジュニア
トウカイワイルド
メジロベイリー
など
種牡馬入りできるかできないかの境目にいた馬や、北海道で結果を残せずに“都落ち”した馬がほとんどだ。ウインバリアシオンの評価は彼らと同程度のものと考えていい。そうなると、種牡馬として成功できる可能性はほとんどないと言わざるをえないだろう。
ウインバリアシオンは引退後、ノーザンホースパークで乗馬になる予定だった。実際、今回の種牡馬入りの話はウインレーシングクラブの手から離れた段階で進められたものだったという。言い方を変えると、ノーザンホースパークで第2の馬生を着実に歩みだそうとしていたわけだ。
そう考えると、成功の可能性が高いとはいえない青森での種牡馬入りがウインバリアシオンにとって最善の未来だったのか、分からなくなってくる。種牡馬として成功できなかった場合、タップダンスシチーの“消息不明騒動”のようにたらい回しになったり、最悪のケースが待ち受けていたりしないとも限らないからだ。
返す返す、自分の血を未来に残せるというのはかけがえのないことである。その権利を得られる馬は、本当に一握りでしかない。そのチャンスをふいにする理由もない。ただし、現状を冷静に分析すると、ウインバリアシオンの種牡馬入りを手放しで喜ぶことは難しい。
逆境でこそ力を発揮するハーツクライの血が覚醒するといいが、そういったことを言うのがはばかられるほど、厳しい現実が目の前に広がっているのだ。
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