ついに頂へ――。
2018年5月13日、東京競馬場でヴィクトリアマイル(GⅠ/芝1600m)が行われる。重賞3連勝中のミスパンテール、去年のヴィクトリアマイルの覇者アドマイヤリード、復活に燃えるソウルスターリングなどが出走を予定しているが、中でも注目はリスグラシューだ。
前走は阪神牝馬ステークスに出走し、1番人気となったがマイル戦とは思えないほどの超スローペースになり、前の馬に粘られて差し切れず3着に終わった。それでも差がない競馬だったことから、前哨戦としては十分なレースであった。リスグラシューはここまでわずか3勝しかしていないが、常に安定した実績を残しており、本来であればGⅠの1つでもゲットしていておかしくない力量を持っている。
リスグラシューにはいくつかのプラス要素があり、後押ししてくれる。混戦必至であり、人気が1頭に被る可能性が低いことから十分に馬券の妙味はある。NHKマイルカップで本来なら勝ち馬のケイアイノーテックに騎乗予定だった武豊騎手はその悔しさをリスグラシューの騎乗で爆発させたい。悲願のタイトルに向けてここが勝負となる。
目次
要素① 東京マイルで2戦2勝
リスグラシューの成績を見ていくと、3勝の中の2勝は東京競馬場のマイル戦で勝っていることが分かる。しかも、いずれも重賞であるのもポイントだ。まずはアルテミスステークスだが、この時はフローレスマジックと人気を分け合い、最後は強烈な脚比べを見せて、中団やや前目でレースを進めていたリスグラシューが勝利した。
次は今年行われた東京新聞杯だが、この時も中団やや前目に位置取りを行い、上がり3ハロンのタイムでは他馬より多少見劣りはしたが、位置取りの良さをうまく活かして勝利を収めた。いずれも共通しているのは中団よりやや前目でレースをしているということだ。先週までの東京競馬場は前が残りやすい。ケイアイノーテックのような大外一気の差し切りはよほど腹をくくらないとできない。本来は前でレースをした方が勝ちやすい。そうしたレースをして重賞2勝をマークしているというのはとても大きな要素となる。
要素② マイル戦での安定感
これまでにリスグラシューは2回着外に沈んでいるが、いずれも2000メートル以上のレースだった。一方、マイル戦だけにこだわれば、かなりの良績が目立つ。阪神ジュベナイルフィリーズや桜花賞でも惜しい競馬を見せた。いずれも勝ち馬が違い、阪神ジュベナイルフィリーズやチューリップ賞では負けていたソウルスターリングに桜花賞では勝っている。展開1つでいくらでも負かすことはできたが、こればかりは運がなかったとしか言いようがない。
東京新聞杯は牝馬ながら55キロを背負い、多少重めの斤量の中で快勝をしてみせた。GⅢとなるといくら古馬相手とはいえ一枚格が落ちる。それでも古馬相手に勝ち切ったことはそれだけ実力がある証拠だ。ミスパンテールのように重賞3連勝中の馬もいるが、ミスパンテールとは3歳時点でかなりの差をつけている。阪神牝馬ステークスでは敗れたが、単に展開のアヤであり、超スローペースに落として勝利しただけのことだ。カワキタエンカも出走を予定しており、同じことにはならない。そうなると安定感で言えばリスグラシューに敵うものはいない。
要素③ 血統面の裏打ち
血統を見ると、リスグラシューの母リリサイドはフランスで走っていた馬であり、重賞勝ちこそなかったが、それでもフランス1000ギニーに出走できる馬だった。いずれもマイル戦での実績があり、リリサイドの父であるアメリカンポストも同じようにマイル戦で結果を出した。つまり、母方の血筋はかなりのマイラーであることが分かる。
父ハーツクライといえば今更説明のいらない種牡馬となっているが、その母であるアイリッシュダンスのさらに父がトニービンである。トニービン産駒は東京コースでよく走ることが言われており、多くの馬を走らせてきた。ちなみにアイリッシュダンスもマイルではよく走る馬だった。
血筋というものは時に重用され、時に軽視されるが、母方も父方もそれぞれにマイルで結果を残していることを考えても血統が裏打ちをしてくれているのは間違いない。
まとめ
ヴィクトリアマイルは時に大波乱を巻き起こすが、高いレベルでの混戦になっており、大波乱というよりは勝ち馬を絞りにくい状況であり、さほど荒れないような状況と言える。言い換えれば、上位人気に推される馬のいずれにもチャンスがあり、10回やれば10回勝ち馬が変わるような形になってもおかしくない。
リスグラシューはここまでGⅠであと一歩まで来たが、惜しくも敗れてきた。しかし、今回は得意の東京競馬場、マイル戦であり、勝ち方をよくわかっている武豊騎手が騎乗する。悲願を達成するのであればここしかない。