更なる幸運をつかめるか――。
2018年4月8日、阪神競馬場で桜花賞(GⅠ/芝1600m)が行われる。なんといっても4戦無敗でチューリップ賞を完勝したラッキーライラックが出走を予定している。他にもチューリップ賞2着のリリーノーブルや3着のマウレアも侮れない。そんな中でなんとか出走にこぎつけたのがトーセンブレスだ。
トーセンブレスはフラワーカップで2着に入り、賞金を積み重ねたものの、桜花賞は抽選待ちの状態になった。しかし、モルトアレグロが鼻出血で出走を回避したことで抽選なしで桜花賞へ出走ができる。この幸運はトーセンブレスにとっては非常に大きい。ラッキーライラックには2回負けているが、その負け方もいかにも荒削りな負け方であり、その中で見せる輝きはラッキーライラックを凌駕するものがある。
ラッキーライラックの1強ムードだが、全く弱点がないわけではない。多頭数で揉まれたらどうなるかなど、未知の部分がある。その点、トーセンブレスはこれまでに色々なことを経験している。鞍上の柴田善臣騎手もこの馬のことをよく理解して騎乗できる。トーセンブレスにもたらされた願っても無いチャンスを果たしてものにできるのか。今回はトーセンブレスに期待する理由を挙げる。
目次
理由① 終いの脚が確実
トーセンブレスはこれまでに4戦しているが、上がり最速タイムで駆け抜けたのは3回、もう1回も全体の3番目と優秀だ。阪神ジュベナイルフィリーズではラッキーライラックと同じ上がりタイムをマークし、1位を分け合った。
トーセンブレスの場合は位置取りが後方になりやすく、ポジションの差が勝敗を分ける形となった。しかし、桜花賞は後方の馬でも簡単に差し届くほど追い込みに有利な環境だ。ペースが流れてくれればそれなりにチャンスはある。終いが確実な馬だからこそ、たとえ最後の直線で大外に回したとしてもそこまでのロスにはならない。むしろ気持ちよくは知らせることを考えるのであればその方がいい。ラッキーライラックに勝るとも劣らない武器が末脚だとすれば、その武器で一気に主役候補に上り詰める可能性も十分に考えられる。
理由② 新馬戦のパフォーマンス
新馬戦の走りは将来を期待させるようなものだった。中山競馬場の1600メートル戦だったが、道中はシンガリを走り、隊列はやや縦長に。この時点で巻き返すのはかなり大変だが、3コーナーあたりで加速し始め、4コーナーでは先頭集団に追いつくが、今度は馬群が凝縮しており、なかなか捌けない。そこで大外に回して走らせるのだが、そこからが次元が違っていた。中山の急坂を苦にせず一気に駆け上がり、ゴール手前であっさり交わしてコンマ3秒差をつけて快勝した。
しかもこの時の2着馬は後にフェアリーステークスを制するプリモシーンだ。プリモシーンが未勝利戦で倒したのがテトラドラクマだとすると、このパフォーマンスがレベル差のあるレースでなされたものとは言えない。荒削りな馬ではあるが、それだけのポテンシャルを秘めていることは明らかだ。
理由③ 急坂での安定感
新馬戦でもそうだったが、坂を全く苦にしないのは非常に魅力的である。これは阪神ジュベナイルフィリーズでも感じ取れた。トーセンブレスは坂に入ってからの伸びが他の馬とは比べ物にならないほど鋭かった。矢のような脚とはこのことである。フラワーカップもまるで新馬戦の時のように大外を回して坂の下から一気にギアを上げてきたが、最後は勝ったカンタービレと脚色が一緒になってしまった。
やはりトーセンブレスの場合は位置取りがカギになるが、上がり3ハロンのタイムだけでいえばカンタービレよりコンマ5秒も早かった。少しでも前に行けて、ロスなく内を突くことになれば、おそらく勝つ可能性は高いだろう。
まとめ
モルトアレグロの鼻出血がなければ、抽選で落とされていた可能性もある。過去には抽選になんとか選ばれ、本番の菊花賞で鮮やかに勝ってみせたスーパークリークがいた。抽選に泣き、抽選に笑うのもまた競馬の醍醐味であり、冷徹な部分でもある。競馬の神様はトーセンブレスを暖かく見守っている。
そして、急坂で必ず見せる矢のような脚、現役最年長となった柴田善臣騎手のベテランの操縦があれば勝負にはなる。中2週で関西遠征というのはきついかもしれないが、関西遠征自体は阪神ジュベナイルフィリーズで経験しているから問題ない。ハープスターのように直線一気に差し切ることも十分に考えられる。それだけのポテンシャルを秘めている。トーセンブレスに大きなチャンスが訪れた。