2018年11月25日、東京競馬場でジャパンカップ(GI/芝2400m)が行われる。アーモンドアイ、キセキ、サトノダイヤモンド、シュヴァルグラン、スワーヴリチャードらが出走するが、どんなレースが展開されるのか? 台頭する可能性を秘めた伏兵とは?
今回はある種牡馬にスポットを当てていこう。競馬はブラッド・スポーツであり、歴史は繰り返すものだ。事実、この種牡馬は何度も「歴史は繰り返す」を体現してきた。今年のジャパンカップでも血が騒ぐ舞台設定ができつつある。
その種牡馬とは、ハーツクライである。
圧倒的1番人気を相手に……
ハーツクライといえば、特に競馬ファンの誰もが頭に浮かべるのがディープインパクトを破った有馬記念だろう。
当時、ディープインパクトは無敗の3冠馬だった。国民的英雄になり、有馬記念でも断然の一番人気に支持されていた。
「焦点は勝つか負けるかではない。どう勝つかだ」
メディアはそんな論調を繰り広げ、ファンも同様にディープインパクトが勝つことが保証されているかのようなムードの中で有馬記念を迎えた。
しかし、競馬に保証などなかった。
中山競馬場でディープインパクトが勝つところを期待していたファンたちはため息を吐くことになった。
その原因を作った張本人こそ、ハーツクライだった。無敗の英雄に土をつけた馬。ダービー、宝塚記念、そしてジャパンカップで2着こそあっても、GIは未勝利だった馬。初のGI制覇が有馬記念、しかもディープインパクトを破って勝ち取った栄冠だった。
産駒に受け継がれるある特徴
ハーツクライは種牡馬になってからも興味深い特徴を示している。産駒が“有馬記念の再現”を何度も成し遂げているのだ。
ハーツクライ産駒には伏兵のときのほうが走るという特徴がある。特に重賞レースになると、一番人気の成績が極端に低く、2、3番人気のほうが成績がいいというデータが出ている。
例えば代表産駒のジャスタウェイは初のGI制覇を天皇賞秋で成し遂げた。人気は5番手だった。ちなみにそのとき一番人気だったのはディープインパクト産駒のジェンティルドンナだった。
産駒初のダービー馬となったワンアンドオンリーにしても3番人気1着だった。後に菊花賞で1番人気に支持されたが、9着に敗れている。
ヌーヴォレコルトは2番人気ながらオークスを制した。そのとき単勝1.3倍の断然の1番人気に支持されていたのがディープインパクト産駒のハープスターだった。
そして昨年のジャパンカップでは5番人気のシュヴァルグランが、断然の1番人気だったキタサンブラックを破って勝っている。
要するにハーツクライやその産駒たちは「波乱の申し子」なのだ。
今年、アーモンドアイが1番人気に支持されることは確実と言っていい。しかし、ハーツクライ産駒のスワーヴリチャードやシュヴァルグランにとって、そのくらいの舞台設定がちょうどいいのかもしれない。
果たして、今年も歴史は繰り返すのか? ハーツクライ産駒が父と同じく断然の一番人気馬を倒す場面が見られるのか? ジャパンカップは11月25日。戦いのファンファーレは15時40分頃に鳴り響く。