ハーツクライといえばディープインパクトを破った芝の名馬だ。種牡馬となってからジャスタウェイやワンアンドオンリー、ヌーヴォレコルトといった芝のGI馬を輩出している。
しかし最近、ダートで激走する産駒が増えている。
今回は“隠れダート種牡馬”ハーツクライに迫っていこう。
目次
ダートランキングにおける異色の存在
まずは2015年の種牡馬別ダート勝ち鞍ランキングを見てみることにしよう。(※5月22日現在)
1位 キングカメハメハ(54勝)
2位 クロフネ(33勝)
3位 ゴールドアリュール(32勝)
4位 ハーツクライ(27勝)
5位 サウスヴィグラス(23勝)
上位の種牡馬を見ると、ハーツクライが異色の存在だということが分かる。
まずキングカメハメハはダービー馬とはいえ、もともとダートが得意なミスプロの系統だ。
クロフネやゴールドアリュールはご存知の通り、現役時代にダートGIを勝った“ダート王”。サウスヴィグラスにしてもダートで活躍し、産駒はほとんどがダートを主戦場としている。
一方、ハーツクライは芝血統のサンデーサイレンス系だ。現役時代は芝のGI有馬記念とドバイシーマクラシックを勝った。種牡馬としてはヌーヴォレコルト(オークス馬)やワンアンドオンリー(ダービー馬)を輩出。なんといっても代表産駒は世界ナンバーワンの芝馬ジャスタウェイだ。
明らかに芝馬の背景を持っている。にもかかわらず、ダートでこれだけの白星を挙げているのだから驚きだ。
ズブ目のサンデー系はダートで走る!?
ハーツクライ産駒はディープインパクト産駒らに比べてややズブい面を持っている。言い換えるとスパッとした切れ味より、長くいい脚を使う能力を持っている。持続力が優れているわけだ。
そういうサンデー系はダートで走る傾向にある。例えば思い浮かぶのがスペシャルウィークだ。
スペシャルウィークは長くいい脚を使うタイプだった。特に産駒はズブい面を持っているため、なかなか重賞を勝ち切ることができない。
芝の大物はブエナビスタやシーザリオのように、瞬発力に秀でた牝馬がほとんど。牡馬で芝のGI馬を勝ったのはトーホウジャッカルのみ。そのトーホウジャッカルにしても勝ったGIは3000mの菊花賞だ。瞬発力よりスタミナや持続力を要求されるレースで勝っていることになる。
一方でダートではこのズブさが生きる。牡馬の芝馬が苦戦する中、ゴルトブリッツが帝王賞を制すと、ローマンレジェンドが東京大賞典を勝ち、GI戦線で活躍し続けている。
スペシャルウィークとの共通点
さらにスペシャルウィークと似ている点がある。両産駒ともに芝で勝ち切れないシーンが目立つこと、そして打開策としてダートに転向する馬が増えていることだ。
芝で稼ぐことができないのであればダートに転向するのは普通のこと。たとえ芝種牡馬のハーツクライであっても例外ではない。
実際、ハーツクライ産駒の2014年開催は134勝のうち、芝で86勝を、ダートで48勝を挙げている。一方、2015年は5月22日現在の段階で53勝のうち、芝で26勝、ダートで27勝と逆転現象が起きている。
そう考えると“ある仮説”を立てたくなる。スペシャルウィークはローマンレジェンドらを輩出した。となるとハーツクライからもダートの大物が出る可能性があるのではないか。
なかなか芝種牡馬からダートの大物は出ないが、「ハーツクライなら」と思わせてくれる戦績を残している。また、生産者や調教師の間でもハーツクライ産駒に対する理解が進んでいる。ダート適性の高いハーツクライ産駒を早い段階で見極めることができれば、近い将来、“大物”が誕生する可能性は十分にありそうだ。
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