エピファネイアがドバイワールドカップへ挑戦する。昨年のジャパンカップを圧勝して世界レーティング2位の評価を受けた一昨年の菊花賞馬は、初のダート戦というハードルを乗り越えられるのか? とても興味深い挑戦だ。願わくば、ぜひとも勝ってほしい。
同じような心境の方は多いことだろう。事実、エピファネイアの挑戦は好意的に受け止められている。(と、肌感覚では感じる)
ただ、だからこそ私はエピファネイアの置かれている状況に少々疑問を抱いている。
なぜエピファネイアの挑戦を“批判”するメディアがないのだろうか?と。そんな疑問が、頭をよぎるのだ。
目次
芝GI馬ダート挑戦の厳しい現実
大前提として、芝とダートでは求められる能力が全く違う。
芝では瞬発力やスタミナが重要になるが、ダートで求められるのはパワーだ。そして砂をかぶってもひるまないような根性や経験も必要となる。
だから芝適性の高い馬や、芝のレースを使われ続けてきた馬はたとえGI級の力を持っていたとしても、ダートで惨敗するケースが多々見られる。カレンブラックヒル、トゥザグローリー、グランプリボス、リーチザクラウン、ローエングリンといった芝GIで好走経験のある馬のダート挑戦の歴史を振り返れば、厳しさは明らかだろう。
しかもドバイワールドカップは世界最高額の賞金を懸けたレースだ。世界中からダートの猛者が集まってくる。そんな中にダート初挑戦のエピファネイアが入り、いきなり通用するだろうか?
その是非はこの際、置いておく。問題はエピファネイア陣営の選択に疑問を抱くメディアがほとんどいないことだ。
「ダートでも勝てる!」
「デビュー前はダート馬という見方もあった」
そんな体の良い言葉を並べて煽るだけがメディアの仕事だろうか? そうやって煽っておいて負けたら手のひらを返す。いや、競馬メディアは関係者に気を使って手のひらを返すことすらしない。
例えばメディアを信じて期待したファンは落胆するだろう。「なーんだ、弱いじゃん」といって、競馬に興味をなくすファンがいるかもしれない。変なあおりばかりせず、ありのままを伝える、あるいは疑問を抱く点があったら包み隠さず書く。「こんなこと言いたくないけどぶっちゃけ厳しいっすよ」と書く。それが、メディアの仕事ではないだろうか?
エピファネイア陣営の挑戦は称賛に値する一方、メディアが今回の挑戦に全く疑問を持たない(持っても何も書かない)のだとしたら、それはただただ怠慢である。
エピファネイアは勝てるのか?
こんなことを書くと「エピファネイアは絶対勝てない」と言っているような印象を与えるかもしれないが、決してそんなことは言っていない。あくまでも、私はメディアの姿勢に疑問符を持っているだけなのだ。
そこで最後に、エピファネイアの“可能性”について探ってみよう。
前述のとおり、芝GI馬のダート初挑戦は厳しい結果に終わることが多い。おそらく今回も十中八九、勝つことは難しいだろう。
ただ、それでも「可能性はゼロではない」と書いておきたい。
まず少頭数(9頭立て)になったことは歓迎すべき要素だ。変に揉まれて砂をかぶるリスクがなくなった。しかも外枠に入ったことでそのリスクはさらに軽減したと言える。
あとはエピファネイアにダート適性があるかどうかだが、こちらも「ない」とは言い切れない。父シンボリクリスエスはダートGI馬サクセスブロッケンを輩出している。その父クリスエスも芝・ダート兼用種牡馬だった。
母系は母シーザリオ、その父スペシャルウィークも含めて完全に芝血統であるが、可能性が「ゼロ」とは言い切れない。
よってここは、素直に応援し、吉報を待ちたいところだ。あくまでも期待しすぎずに、というレベルではあるが。
運命のスタートは日本時間29日午前2時
ドバイワールドカップは現地時間28日、日本時間28日の夜から29日にかけて行われる。
当日はグリーンチャンネルが無料で放送されるため、多くの方が世界最高峰のレースに触れることができる。
翌日仕事のない週末の土曜日に、ビールを片手にエピファネイアをはじめとする日本馬を応援するのもいいのではないだろうか?
繰り返すがこんなことを書いておいてなんだが、私は日本馬の勝利を心から願っている。一人の競馬ファンとして。遠く日本から、日本馬の活躍を願いたい。