「あの頃の競馬は熱かった。それに比べて今の競馬は……」
競馬ファンなら一度は言ったり、聞いたりしたことのあるセリフではないだろうか。
事実、競馬が一番熱かったとされるのは80〜90年代だ。1990年、日本ダービーの入場者数は19万6517人に達した。その年の暮れ、オグリキャップの引退とともに日本経済と中央競馬は終わった。
おそらくもう二度と、中山競馬場に17万人が入ることはないだろう。どんなにスターホースが集まったって、GLAYやサザンやセカオワが無料でライブをやるといっても、そんなに入ることはない(はず、たぶん、いや、きっと。。。)。
ただし、だからといって「あの頃は〜〜〜」といって自分の経験を固辞して若い競馬ファンを半ば冷笑するというのはどうなのだろうか。
はっきり言おう。そんなの、老害でしかない。
昔を懐かしむのは悪くないが……
別に思い出話をすることを否定しているのではない。競馬と思い出話は切っても切り離せない相関関係にある。
「大学を卒業した年のダービーはあの馬が勝ったなぁ」
「仕事で失敗して落ち込んでいたあの時、あの馬がGIを勝ってくれた」
「キズナのダービーが見たすぎて風邪引いた子どもを嫁に任せて東京競馬場に行ったらごはんが出てこなくなった」
おっと、最後の例えは忘れてくれ。そんなクズ、いるはずがない。作り話だ。(そう思いたい)
実際、母体のJRAがそういうCMを作っている。思い出話を推奨している。いや、競馬に絡めた思い出話なんて、せざるを得ない。
余談だが、このCMは史上最強に素晴らしいと思う。広告大賞を差し上げたい。
では、何が問題なのかといえば、以下のような嫌味なおっさんの存在だ。
「TTGを知らないなんて……。それで競馬ファンなのか?」
「オグリキャップの有馬記念を中山で見ていない奴は競馬ファンじゃねぇ」
「今の競馬はクソだ。あの頃はな〜〜〜」
イライラする。わたし、イライラする!いとうあさこばりに、イライラする!
隠してもしょうがないので書くが、私はTTGをリアルタイムで見ていないし、オグリキャップの有馬記念はyoutubeで見た。
だって、90年なんて●歳だったんだもん! 競馬場いけるはずないよ!
そう、そうなのだ。若い世代にとって、昔を知らないことは仕方がない。物理的に不可能なのだ。タイムマシーンがあれば90年の有馬記念を見に行きたい。一つ夢が叶うなら、本当にそうしたい。だけど、ドラえもんはまだ開発されていない。タイムマシーンはないのだ。
そういう、やりたくてもできなかった(やろうとすら考えない純粋無垢なおこちゃまだった、あるいはある人は生まれてすらいない)ことを上から目線で「あの頃はな」なんて言われても嫌悪感しか感じない。
もうそういうおじさまたちは、PCやスマホを使って分析ができる若い世代に屈しておとなしく養分になってもらいたい。いや、してやる。
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