どの世界でも“天才”を兄弟に持った者は苦労する。
浅田真央さんを妹に持った浅田舞さんは「グレてしまった」(本人談。詳しくは『しくじり先生』をご覧あれ)ようだし、後藤真希さんを姉に持った祐樹さんもまぁすごいグレようだ。
今の種牡馬界における“兄弟格差”といえばディープインパクトとブラックタイドを思い浮かべるのではないだろうか? ディープインパクトは無敗の3冠馬であり、GI7勝馬だ。対するブラックタイドは地味な現役生活を送り、弟の活躍によって種牡馬としてそこそこやっていけている、といった印象が一般的かと思う。
しかし、浅田舞さんがグラビアで取り上げられて写真集がバカ売れするほどの美貌の持ち主であるように、ブラックタイドもまた兄の影に隠れて異彩を放っている。今回はそんな偉大な弟を持つ兄にスポットを当ててみたい。
目次
現役屈指の実力種牡馬
まずはブラックタイドの成績を見てほしい。
種牡馬の成績を見る上で有効な方法は以下のとおりだ。
・前走5位以内
・今走5番人気以内
この条件に合致する馬を集計する。前走で5着以内に入っているということは一定以上の実力があるということだ。かつ、今走でもある程度人気に支持されているなら、前走がフロックでない可能性が高い。(前走5着以内なのに二桁人気というのは、フロックの可能性大のため、集計に入れない)
この基準で2015年のブラックタイド産駒の成績(芝レース)を集計してみると……
全成績(7―6―5―9)
勝率26%(3位)
複勝率67%(1位)
単勝回収値164(1位)
複勝回収値146(1位)
※()内は20頭以上出走している種牡馬と比較した順位
いかがだろうか? 驚異的な成績であることが分かる。これは下級条件ばかりの成績ではない。ここ1年くらいを振り返ってみると、オープンや重賞でも活躍馬を出している。
キタサンブラック
皐月賞3着、スプリングS1着
マイネルフロスト
福島民報杯1着、中山記念、AJCC4着
タガノエスプレッソ
デイリー杯2歳S1着、弥生賞3着
コメート
ホープフルS2着
ディープインパクトの産駒より地味で人気にならない。しかし、種牡馬としては弟に勝るとも劣らない能力を持っている。この成績を見れば、この事実に疑いの余地はないのではないだろうか?
競走馬の成績=種牡馬の能力ではない
ではなぜ、ブラックタイドは種牡馬として成功できたのか?
ここで強調したいのは、競馬が「ブラッド・スポーツ」だということだ。血統が良ければ、どんな馬も成功する可能性を秘めている。ブラックタイドの場合……
父サンデーサイレンス
米2冠馬。種牡馬として大成功
母ウインドインハーヘア
独GI馬。近親にGI馬が多数
全弟ディープインパクト
無敗の3冠馬。GI7勝
こういった血統背景を持っている。種牡馬として成功するポテンシャルはあったわけだ。
たとえ競走成績が振るわなかったとしても種牡馬として成功した例は数多くある。例えば大種牡馬ミスタープロスペクターは競走馬時代、重賞をひとつも勝てなかった。しかし、今や世界中にその血を広げて系統を確立するほどの活躍を見せている。
反対に(あえて名前は出さないが)競走馬として大成功しても種牡馬として活躍できなかった馬はたくさんいる。「名選手、名監督にあらず」ではないが、「名馬、名種牡馬にあらず」といえるのだ。
ブラックタイドは競走馬として成功できなかった。しかし、良血を伝える遺伝力は、誰よりも優れていたということだ。
ブラックタイド産駒は買い!
馬主の方や馬券を買うファンの方はブラックタイド産駒に注目してみてほしい。
父がクラシックホースというのは値段が上がりやすい。ディープインパクトやキングカメハメハの産駒は億単位になることも珍しくない。しかし、ブラックタイドはリーディング上位の種牡馬に勝るとも劣らない力を持っている。安く買えるが強い。そんな“お買い得な馬”がブラックタイド産駒には多い。
馬券的な観点から見ても、「実力はあるのに人気にならない馬」というのは実においしい。
重要なのは競走馬時代の成績ではない。種牡馬としての成績をしっかりと評価してほしい。
偉大な弟に隠れた“最強種牡馬”ブラックタイドの今後に期待だ。
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