競馬は人と馬が織りなす筋書きのないドラマだ。

名騎手と天才のコンビに人々は胸を躍らせ、名伯楽と個性派のタッグにファンは夢を見る。競馬の最大の魅力と言っても過言ではない。

今、またひとつ筋書きのないドラマが生まれようとしている。ポルトドートウィユ(牡3)が、武豊騎手とともに世代の頂点を目指して日本ダービー(GI/東京芝2400m)へ出走するのだ。


体内に流れる武豊との記憶

ポルトドートウィユは武豊騎手とコンビを組むために生まれてきた――。

そう言ってもおかしくないほど、武豊騎手に縁のある馬たちの血が流れている。

父ディープインパクトは武豊騎手とコンビを組み、無敗の3冠を達成した“英雄”だ。最終的にGI7勝を挙げ、競馬史に燦然と輝く名コンビとなった。

これだけではない。

母のポルトフィーノはデビューから「鞍上武豊」でキャリアを重ね、3勝を挙げた。取り消しになった桜花賞、スタート直後に落馬となったエリザベス女王杯なども武豊騎手を鞍上に招いていた。

母の父、クロフネは武豊騎手とともにNHKマイルカップを制覇。ジャパンカップダートや武蔵野ステークスでの圧勝劇は、今なお競馬ファンの脳裏に焼き付いて離れない。

さらに母母のエアグルーヴは武豊騎手が主戦を務め、オークスと天皇賞秋を制した。牝馬として26年ぶりに年度代表馬(1997年)に輝いた背景には、常に武豊騎手がいたのだ。

父、母、母父、母母と、すべて馬たちに武豊騎手との“キズナ”があった。

ポルトドートウィユはデビュー当初こそ、他の騎手とコンビを組んでいたが、武豊騎手に依頼が回ってきたのはもはや必然だったわけだ。

武豊騎手とともに……

ポルトドートウィユと武豊騎手は3走していまだ勝ち星を挙げられていない。しかし、重賞で2度の2着と、力があるところを示している。

そして今回、満を持して日本ダービーへ挑む。天才ジョッキーの言葉を借りればポルトドートウィユは「ダービーに出なければいけない馬」だ。活躍が約束された血、活躍しなければならない血。名門一家に生まれた宿命を背負い、大レースに臨んでくる。

思えばポルトフィーノを除く3頭は東京競馬場のGIで勝っている。勝ち鞍は計6つ。日本ダービー、オークス、NHKマイルカップ、天皇賞秋、ジャパンカップ、ジャパンカップダート。もちろん鞍上はすべて武豊だ。

ポルトドートウィユの体内に流れる“武豊血統”がダービーという大舞台で騒げば、競馬史に新たな1ページを刻むことになるだろう。

繰り返すが、競馬は人と馬が織りなす筋書きのないドラマだ。

“武豊血統”の良血馬が天才とともに世代の頂点を目指す。舞台は父たちが栄光を勝ち取ってきた東京競馬場だ。舞台設定はこれ以上ない。むしろ誰がこんな出来過ぎた脚本を書けただろうか。競馬ファンなら誰もが夢を見たくなる挑戦が、始まろうとしている。

筋書きのないドラマの結末がどんなものになるかは分からない。ただし、競馬ファンが心からワクワクし、胸を躍らせて「一年で、いちばん幸せな2分半」を迎えることだけは間違いないだろう。

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