毎年50勝前後の勝ち星を叩き出し、JRA調教師部門で表彰されるのが当たり前だった角居勝彦調教師。通常の年ならもう5月の半ばまでに20勝以上の勝ち星を叩き出している。
しかし5月20日現在、JRAの勝ち鞍はわずか「11」にとどまっている。昨年3位だったリーディング争いで33位と低迷している現状は「思わぬ大苦戦」と言っていいだろう。
ウォッカやヴィクトワールピサ、エピファネイアらを輩出した名門厩舎に何が起こっているのだろか?
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現3歳世代の預託辞退
低迷の発端は2013年にさかのぼる。角居調教師は「1歳馬(現3歳世代)の預託を辞退する」と発表したのだ。
JRAが2013年3月までに馬房数を2.5倍まで削減すると発表したことに対する抗議の意味が込められていた。角居調教師の言葉を借りれば「ひとつでも多くの勝利をあげようと取り組んできた積み重ねを否定されるような預託頭数削減に対して何らかの対応を取らざるをえなくなりました」という。
当時、波紋を呼ぶニュースだった。1歳馬の受け入れを辞退するということは何年にもおよび、影響が出る。世代限定のレースに使えないとなると、勝ち鞍の減少が予想される。勝ち鞍が減れば委託される競走馬のレベルは下る。競走馬のレベルが下がればまた勝ち鞍が減る……。そういった負のスパイラルの門をたたくような決断だったわけだ。
宣言を撤回したものの……
その後、角居調教師は考えを改めて数頭の受け入れを行う意向を示した。しかし、受け入れを表明した時点で多くの馬の預託先が決定していた。特に有力馬はほとんど他の強豪厩舎に預けられることになっていた。
結局、交友のあるオーナーらから計12頭を託された。しかし、例年の15〜20頭に比べると少なく、馬質も高くなかった。中にはトーセンビクトリー(母トゥザヴィクトリー)のような良血馬もいたが、全体のレベルは微妙。実際、現3歳世代で2勝以上を挙げている馬は1頭もいない。当然、クラシック路線に乗ることはできなかった。
現3歳世代に“エース”となれる馬がいないというのは、これからの数年にわたり、低迷する可能性があるということだ。角居厩舎の苦悩は、続いていくかもしれない。
現2歳世代には良血馬が多数
ただし、現2歳世代の受け入れは例年通り行っている。そして“エース”となれる可能性がある良血馬も多数預かっている。例えば……
エルプシャフト(牡2)
父ディープインパクト
母ビワハイジ
※半姉ブエナビスタ、半兄アドマイヤジャパンら。全姉ジョワドヴィーヴル
ヴァンキッシュラン(牡2)
父ディープインパクト
母リリーオブザヴァレー
※母は仏GIオペラ賞の勝ち馬
カイザーバル(牝2)
父エンパイアメーカー
母ダンスインザムード
※半兄シャドウダンサー、半姉ダンスファンタジアら
期待せずにはいられない血統の馬たちだ。
果たして“世界のSUMII”は苦境を乗り越えて再びリーディング争いのトップに返り咲けるのか。その命運は現2歳世代が握っていると言っても過言ではない。
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