皐月賞は早い馬が勝つ。
ダービーは運のいい馬が勝つ。
そして菊花賞は強い馬が勝つ――。
昔から競馬界で言われている格言だ。
しかし近年、競馬のスピード化に伴って長距離GIの権威は凋落してきている。時代はスタミナよりスピードに傾き、長距離GIを勝っても種牡馬として評価されない流れはもはや止められないところまできている。
天皇賞春や菊花賞を制しながら種牡馬になれなかった馬は、いまや珍しくない。
もっとも、だからといって「菊花賞馬=弱い」というわけではない。
むしろ歴代の勝ち馬を見ていくと、名だたる馬たちが名を連ねているのだ。
ディープインパクト、オルフェーヴル、キタサンブラック。ゴールドシップやサトノダイヤモンド、エピファネイアにしても歴史に残る名馬である。
なぜこのような状況になっているのか? 今回はその理由に迫っていこう。
目次
菊花賞は強い馬が勝つべくして勝つレース
前述の通り、競馬はスピード化している。スピードがなければ勝てなくなっているし、それは長距離路線であっても変わらない。
特に天皇賞春と菊花賞は京都競馬場で行われる。最後のコーナーが下り坂であり、直線に坂がない。東京、中山、阪神競馬場の“中央4場”の中で最もスピードが要求されるコースである。
だからこそ、スタミナだけで速い脚がないステイヤータイプの馬はスピード負けしてしまうのだ。
もっとも、そうはいっても3000m以上の長丁場を底力のないスピード場が勝ち切るのは不可能だ。
競馬には距離の壁があり、どんなに強い馬でも距離の融通がきかない場合はある。
スプリント王で3冠牝馬を輩出したロードカナロアがいかにスーパーホースであっても3000mで勝てたかどうかは怪しいところだろう。
要するに現代における長距離レースはスピードとスタミナの両方が求められる総合力が問われるレースになっているのだ。
もう少し別の言い方をするなら天皇賞春や菊花賞は「総合力の高い馬が勝つべくして勝つレース」になっている。
近年の菊花賞馬を見れば、それは明らかだろう。
2005年 ディープインパクト 3冠馬
2011年 オルフェーヴル 3冠馬
2012年 ゴールドシップ GI5勝
2013年 エピファネイア ジャパンカップ制覇 ※2014年の世界ランクはジャスタウェイに次ぐ2位
2015年 キタサンブラック GI7勝
2016年 サトノダイヤモンド 有馬記念制覇
いずれ劣らぬ名馬ばかり。彼らは総合力の高さを武器に有無を言わせずに菊花賞のタイトルを勝ち取ったのだ。
しかし、一方で“一発屋”が生まれやすいのも菊花賞の特徴と言える。
なぜ、そんな事態が起こるのだろうか?
出走馬のレベルは果たして?
実は菊花賞は年によって出走馬のレベルのばらつきがある。
・3000mを特殊な距離
・2000mの天皇賞秋が翌週に控えている=距離を嫌った有力馬がそちらに出やすい状況
このようなシチュエーションからメンバーが揃わないことがあるのだ。
よって、どうしてもGIというグレードが名ばかりの年も出てきてしまう。
実際、後にも先にもGIを菊花賞しか勝てなかった馬が勝ち馬になった年はその他のメンバーもGIで複数回勝つような馬でなかったことが分かる。
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2017年 キセキ
皐月賞馬アルアインやクリンチャー、ミッキースワローらが出走したが後にGIを勝った馬なし
2014年 トーホウジャッカル
この年はやや例外的。有馬記念を勝ったゴールドアクター、安田記念馬のサトノアラジン、後に海外GIを制すトーセンスターダムら、何度もGI2着があるサウンズオブアースなど層は厚かった。勝ち馬のトーホウジャッカルが活躍できなかったのはポテンシャルというより万全の状態を維持できなかったことにあると憶測される。
2010年 ビッグウィーク
ビートブラック、ヒルノダムールが後に天皇賞春を制したが、GIはそれぞれ1勝のみ。ローズキングダムがジャパンカップを勝ったものの、こちらはブエナビスタの降着による繰り上がりだった。
2009年 スリーロールス
ナカヤマフェスタが宝塚記念を勝ったのみ。リーチザクラウン、イコピコ、アンライバルドらが人気を集めたが、後にGIを勝つことはなかった。
2008年 オウケンブルースリ
マイネルチャールズ、スマイルジャック、ダイワワイルドボアらが人気を集めたが、後にGIを勝つことはなかった。
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いかがだろうか? 菊花賞が3000mという特殊条件であることを考えると“菊花賞だけコケた名馬”がいても良さそうなのだが、そんな馬は近年一頭もいない。
まとめ
要するに、もし名馬が出ていたなら菊花賞では勝ち馬になる。
そうでなければ菊花賞出走組から歴史的な名馬が出る可能性は低いのだ。
今年はどの馬が勝ち馬になるのだろうか。
今年のメンバーの中に歴史的な名馬はいるのか。
そんな観点から菊花賞を見てみるのも面白いのではないだろうか。