あの強烈な末脚を、菊の舞台でも――。
2017年10月22日、京都競馬場で牡馬クラシック最終戦の菊花賞(GI/芝外回り3000m)が行われる。人気を集めそうなのが、神戸新聞杯で2着となったキセキだ。同レースで1着だったダービー馬レイデオロはジャパンカップを選択肢たため、神戸新聞杯組における最上位馬として出走することになる。
では、キセキは菊花賞を勝てるポテンシャルを持っているのだろうか?
目次
期待① ルーラーシップのポテンシャル
まず注目されるのが父、ルーラーシップが持つポテンシャルだ。
ルーラーシップは現役時代、類まれな能力を誇りながら素軽い馬に足元をすくされる傾向にあった。持っているエンジンの馬力は一級品なのだが、エンジンがかかるまでのスピードがやや遅く、他馬の後塵を拝する場面が何度かあった、というわけだ。
もっとも、それは才能の裏返しと判断することもできる。一般的にエンジンがかかるまでに時間がかかる馬の特徴として挙げられるのが
・そもそもの能力があまり高くない
・エネルギーの搭載量が多い(=スタミナがある)
ルーラーシップが能力の高い馬であったことに疑いの余地はない。よって、今回の場合は後者と判断していいだろう。
実際、ルーラーシップ産駒は距離の長いレースで力を発揮している。以下の条件に絞って産駒の成績を見てみると……
・2000m以上の芝レース
・10番人気以内
種牡馬:ルーラーシップ
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着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回値 複回値
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29- 20- 22- 92/163 17.8% 30.1% 43.6% 87 97
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なんと好走率は44%を誇る。複勝回収値はほぼ100。極めて高い数字だ。
今回は3000mに距離が伸びるが、ルーラーシップ産駒なら十分に対応できる可能性がある、と判断できる。
期待② キセキ自体のポテンシャルの高さ
もう一つ指摘しておかなければならないのが、キセキ自身のポテンシャルが高いことだろう。
例えば日本の競馬では、鋭い末脚を使えるかどうかがポテンシャルを計る指標になる。
末脚の爆発力=ポテンシャルの高さ
そう言い換えることができるのだ。特に同世代と戦う限定戦の場合、末脚の爆発力は能力の高さにほとんど直結する。実際、過去の名馬を振り返っても、クラシック戦線では上がり3位以内の末脚を使っていた、というケースが過半数である。
古馬になってから先行策にシフトしていく馬でも、同世代相手であれば上がり上位の脚を使うことができる。
キセキの場合、キャリアのほとんどで上がり上位の末脚を使っているだけに、ポテンシャルの高さを否定することはできないだろう。
不安① 母系の距離適性は……
では、一方で不安要素は何になるのか? まず気になるのが、母系の距離適性だ。
キセキの母系は、どちらかといえば短距離一族といえる。近親の活躍馬を見てみると……
ロンドンブリッジ(母) 短距離路線で活躍(桜花賞2着→オークス惨敗)
ダイワディライト ダート短距離路線で活躍
グレーターロンドン マイル路線で活躍
基本的にはマイル前後で活躍している。例外を挙げるとすればオークス馬のダイワエルシエーロだが、オークスは2400mながら短距離血統馬が活躍するレースという一面を持っている。(デュランダル産駒のエリンコートが勝つなどの例もあった)
もしキセキが母の特性を色濃く受け継いでいるとしたら、菊花賞に対応することは難しくなるかもしれない。
不安② 圧倒的な爆発力の一方で……
もう一つ指摘しなければならないのが、脚質だ。
キセキは圧倒的な爆発力を持つ一方、父譲りの出足の悪さで、ポジションを悪くしてしまう傾向にある。実際、今までのレースでは大半が後方一気というスタイルを取っている。
だが、過去の菊花賞を振り返ると、後方一気はほとんど決まっていない。10番人気以内の勝負になる馬に絞って脚質別の成績を見てみても、その傾向は明らかだ。
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脚質上り 着別度数
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平地・逃げ 0- 0- 1- 4/ 5
平地・先行 7- 3- 2- 12/ 24
平地・中団 2- 5- 5- 43/ 55
平地・後方 0- 1- 1- 13/ 15
平地・マクリ 1- 0- 0- 0/ 1
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実に勝ち馬7頭が先行。最低でも中段につけて競馬をしていた。なお、マクリの1頭はゴールドシップ。彼は向こう正面まで後方にいたが、3、4コーナーで一気にマクリ、直線の入り口では2番手につけていた。
要するに、4角で10番手以下にいるようでは勝負にならないということだ。
まとめ
キセキは血統的にも戦績的にもポテンシャルを秘めている。
しかし一方で、小さくない不安要素も抱えているのだ。
果たして、キセキは不安を跳ね返し、菊の大輪を咲かせることができるのだろうか。