ハープスターがGI1勝に終わった4つの要因とは?背負った“十字架”に迫る

目次

要因③ ディープインパクト産駒

血統的な観点から言えば、ディープインパクト産駒という点も引っかかる。ジェンティルドンナら、一部を除いてディープインパクト産駒はGI1勝馬に終わりやすい。

5月16日現在、18頭のGI馬を輩出している。この中で日本のGIを複数回勝ったのはジェンティルドンナとヴィルシーナのみ。(リアルインパクトは海外GIを勝っているが、国内は1勝のみ。)GI2勝目が遠い血統なのだ。

要因④ 凱旋門賞至上主義

凱旋門賞制覇は日本競馬界の悲願と言われている。毎年のように日本のトップホースがフランスへ遠征し、大レースに挑戦している。ハープスターも凱旋門賞に挑んだ1頭だ。

ただし、3歳馬は発育途上にある。体が出来きっていないため、輸送に何十時間も費やす遠征は大きな負担になる。特に3歳牝馬は繊細でデリケートだ。凱旋門賞を目指すあまり、無理な遠征によって彼女のキャリアを縮めてしまったのではないか。

実際、海外遠征した3歳馬が故障や謎の不振に陥るケースは多い。

UAEダービー出走馬
ほとんどが後に低迷。GIを勝った馬は1頭もいない

シックスセンス
香港ヴァーズ後、1戦を挟んで屈腱炎となり引退

ソングオブウインド
香港ヴァーズ後、屈腱炎が判明して引退

シーザリオ
アメリカンオークス後、繋靭帯炎を発症して引退

ディープブリランテ
キングジョージ後、屈腱炎となり引退

キズナ
凱旋門賞後、2走後に骨折

これだけの有力馬が海外遠征後に故障して引退を余儀なくされている。3歳馬の海外遠征というのは、リスクがつきまとうわけだ。

ハープスターから得た教訓

以上、大きくわけて4つの理由が重なり、GI1勝のみにとどまったと考えられる。

スタートしての宿命を背負い、凱旋門賞制覇という夢を託された馬――。そう考えると、彼女が背負っていた十字架はあまりに大きく、重かったのかもしれない。その重みに耐えられなかった結果が、引退につながったという見方もできる。

残念ながらGI1勝に終わってしまったが、彼女は多くのものを残してくれた。彼女の末脚を見て競馬を好きになった方は多いだろうし、3歳馬の凱旋門賞遠征に課題とリスクがあることを示してくれた。彼女が残した財産は、競馬の発展を支えていくはずだ。

キズナとともにここ1年ほどの競馬界を引っ張ってきた馬だけに、ゆっくりと休んでほしい。そして繁殖牝馬として強烈な末脚を産駒に伝えてほしい。

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