2018年12月23日、中山競馬場で有馬記念(GⅠ/芝2500m)が行われる。シュヴァルグラン、サトノダイヤモンド、レイデオロ、キセキ、オジュウチョウサンらが出走するが、どんなレースが展開されるのか? 台頭する可能性を秘めた伏兵とは?
今回は障害王者のオジュウチョウサンにフォーカスしてみよう。
前代未聞の挑戦に、多くの競馬ファンが夢を見ている。どんなレースを見せてくれるのか。どんな結末に終わるのか。すべての競馬ファンの注目と言っていいだろう。
そこにどんな意味があるのか。挑戦の意義を考察する。
目次
前代未聞の挑戦
障害王者の有馬記念挑戦というのは前代未聞だ。
ダート馬が芝のGIに、芝馬がダートGIに挑戦するというのは少なくない。しかし、障害から芝の最高峰のレースに参戦するケースは極めて珍しい。
それだけでも讃えられるべき決断と言っていいだろう。
有馬記念はグランプリだ。競馬界の一年を締めくくるレースである。(現在はホープフルステークスがあるものの、「有馬記念で一年が終わる」と考えるファン心理は根深い)
そんな夢が集うレースに障害の絶対王者が参戦してくる。そのシチュエーションだけで胸が踊るというものだ。
事実、有馬記念のファン投票でオジュウチョウサンは3位に支持された。しかも2位のアーモンドアイにわずか5000票差、1位のレイデオロにも約1万差しかつけられていない。
芝のGIで実績を残してきたスワーヴリチャード、サトノダイヤモンド、キセキ、ワグネリアンを押しのけて堂々の3位にランクインしたのである。
多くのファンがオジュウチョウサンの挑戦に夢を見ているにほかならない。もうそれだけで、オジュウチョウサンの出走には価値があるというものだ。
データ的にはもちろん厳しい
もちろん好走できるかどうかと問われればデータ的には厳しい。
1000万条件を勝って参戦というローテーションはほとんど例がない(条件馬がGIに出走してくるケース自体がほとんどない)。
2000年までさかのぼっても、前走OPEN以下の馬が好走した例はない。
OPEN特別以下 ( 0- 0- 0- 4/ 4 )
勝率 0.00% │ 単勝回収値 0
複勝率 0.00% │ 複勝回収値 0
G3 ( 0- 1- 1- 23/ 25 )
勝率 0.00% │ 単勝回収値 0
複勝率 8.00% │ 複勝回収値 100
G2 ( 1- 2- 1- 47/ 51 )
勝率 2.00% │ 単勝回収値 33
複勝率 7.80% │ 複勝回収値 32
G1 ( 16- 13- 15-136/180 )
勝率 8.90% │ 単勝回収値 67
複勝率 24.40% │ 複勝回収値 94
OPENどころかGIIIでも厳しい。それが有馬記念というレースなのだ。
夢を見たくなる血統面
ただし、夢を見たくなる要素は多々ある。
例えば血統面はかなり魅力的だろう。父ステイゴールドはオルフェーヴルやドリームジャーニー、ゴールドシップといった有馬記念馬を輩出している。今年の皐月賞はオルフェーヴル産駒のエポカドーロが勝った。中山のビッグレースにめっぽう強い血なのだ。
さらに母父のシンボリクリスエスも有馬記念馬だ。引退レースだった有馬記念では2着に1.5秒差をつける大楽勝を演じた。これはオルフェーヴルの有馬記念を上回る数字である。
実際、兄弟のケイアイチョウサンは中山の京成杯で3着の実績を持っている。
血統面だけみれば、一二を争う適正と言っても過言ではないのだ。
ケチを付けるのは野暮
何れにせよ、オジュウチョウサンに関しては出走すること自体に意味がある。出走することで競馬ファンは夢を見ることができる。
それだけで十分に偉大であり、競馬というエンターテインメントが愛される一つの理由を垣間見させてくれる。
競馬はエンターテインメントだ。挑戦が人の心を熱くする。人の心が熱くする挑戦こそ、エンターテインメントの真髄だ。
胸に期待を膨らませつつ、出走の時を迎えたいところだ。