5月3日に京都競馬場で行われた天皇賞春(GI/芝3200m)に心躍ったファンは多かったのではないだろうか?
スタートから巻き起こる熾烈なポジション争い、各馬が正面スタンド前を通り過ぎる際の高揚感、向こう正面から始まる“仕掛けあい”、そして直線の末脚勝負……。
競馬の魅力がすべて詰まったレース――。
そう思った者は少なくないはずだ。前回は「長距離レースの魅力」について書いた。
●前編→長距離レースはなぜ面白いのか?天皇賞春に見た競馬の魅力と醍醐味
しかし、現在JRAで3000m以上のレースは年6回しか行われていない。なぜ、長距離レースは増えないのか? 面白いのに、どうして行われないのか? 今回は日本競馬界が抱える“ジレンマ”に迫っていこう。
長距離レースが増えない理由
入れ替わり立ち替わりの展開、騎手の駆け引きなど、長距離レースにはたくさんの魅力がある。これだけ魅力的なのだから、もっと長距離戦を増やしていいように思える。しかし、現状は年6レースしか行われていない。
JRAにとってファンが望む条件を増やすことは馬券の売上向上につながるため、好ましいことだ。ただ、長距離レースは生産者たちにとって魅力的なコンテンツとはいえない。
日本の競馬で最も重要視されるのは東京競馬場の芝2400mで勝てるかどうか、だ。“すべてのホースマンの夢”日本ダービーや、国内最高賞金がかかるジャパンカップの舞台なのだから、いかに重要視されているか分かる。
「東京の芝2400mで勝てる馬作り」が生産者や調教師たちのプライオリティだとすれば、長距離レースはどうしても軽視されてしまう。加えてそこで勝った馬が種牡馬入りすると、スタミナのある種牡馬が減ってしまう。するとますます、長距離レースを目標にしようと思わなくなる。こういった構図により、長距離レースはすされてきてしまっているのだ。
軽視される長距離GIウィナー
近年では長距離GIウィナーが種牡馬入りできない事態が相次いでいる。菊花賞やメルボルンカップを制したデルタブルースや、天皇賞春馬マイネルキッツは乗馬として余生を送っている。
また菊花賞と天皇賞春を制したライスシャワーは、ステイヤー色が濃すぎたため引退できずに走り続けた結果、予後不良という最悪のバッドエンドを迎えてしまった。
こういったスタミナのある馬たちが軽視されている限り、長距離レースが増えていくことはないだろう。
【次のページへ】日本競馬が抱える“ジレンマ”と長距離レースの今後とは?