一冠目:ケンタッキーダービー
年が明け、3歳となったアメリカンファラオは3月のGⅡレベルステークスを他馬より重い斤量で圧勝すると、続くケンタッキーダービーの前哨戦、GIアーカンソーダービーも8馬身差の快勝で悠々と本番へ。
この年のケンタッキーダービーは、アメリカンファラオはもちろんのこと同厩の無敗馬ドルトムント、ブルーグラスステークスを圧勝して参戦したカーペディエム、日本のゴールデンバローズが3着となったUAEダービーを圧勝してアメリカへと乗りこんできたムブタヒージなど史上稀にみる好メンバーが揃っていた。
結果的にアメリカンファラオは3冠レースのなかで一番の苦戦を強いられることとなる。とはいっても1馬身差の完勝ではあるのだが。不利といわれる外枠からの発走となったアメリカンファラオは内へと徐々に切れ込み3番手の外でレースを進める。比較的締まった流れで後方の馬たちがなし崩しに脚を使わされたためかまくり切れず、勝負は前の3頭に絞られた。
直線、逃げの手に出たドルトムントを名手スティーブンスが駆るファイアリングラインが交わす。そこにアメリカンファラオが外からじりじり伸びて交わし、封じたところがゴール板。1番人気に応える堂々の勝利であった。
二冠目:プリークネスステークス
中一週でのクラシック第2戦はルイビルのチャーチルダウンズ競馬場からボルティモアのピムリコ競馬場へと場所を移しての、プリークネスステークスだった。距離はケンタッキーダービーより約100m短い9・5ハロンでの戦いである。
ここでもアメリカンファラオは盤石かつ王者としての風格すら感じられる堂々の競馬を見せつける。ケンタッキーダービーとはうってかわって最内枠からの発走となったアメリカンファラオはスタートからハナを主張し、そのまま先頭でレースを進めた。
直前までの雨による不良馬場にもひるまず後続との差を広げ、7馬身差の圧勝で2冠を達成した。ダービーで食い下がっていたファイアリングラインもドルトムントも馬場か疲れか、馬群に飲み込まれたまま抵抗出来なかったことを考えると、いかにアメリカンファラオがタフで次元の違う競馬をしたかが分かる。
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