武豊騎手とエイシンヒカリに“欅の向こう側に置き忘れた夢の続き”を見よう

ディープインパクト産駒のエイシンヒカリ(牡4)が、武豊騎手と新コンビを組むことになった。同馬はデビューから5連勝でオープンを突破。アイルランドトロフィーで見せた大逃げは、競馬の枠を超えて世間の注目を集めた。

そんな話題馬と武豊騎手の“出会い”は胸が踊る要素でいっぱいだ。


相性は良さそう

今までエイシンヒカリは岩田康誠騎手、和田竜二騎手、横山典弘騎手とコンビを組んできた。

どの騎手もトップジョッキーのため、パートナーとして悪くはない。ただ、岩田騎手や和田騎手は豪腕が持ち味だ。特に岩田騎手は天性の勝負勘と抜群の判断力で力の劣る馬を何頭も勝たせてきた。昨年のマイルチャンピオンシップ、今年の日経新春杯における“神騎乗”は記憶に新しい。

ただし、豪腕であるがゆえに繊細な逃げ馬に乗った時の成績はあまり芳しくない。(といってもフラットに見れば十分優秀な成績なのだが。“神騎乗”のイメージが強すぎて、逃げ馬に乗った時の印象が薄れているのかもしれない)

一方、武豊騎手は逃げ馬の乗り方を熟知している。今年のフェブラリーステークスではコパノリッキーで逃げ切り勝ちを収めたし、トウケイヘイローとの快進撃も記憶に新しい。体内時計が極めて正確で、武豊騎手が逃げるレースは一貫としたペースになりやすい。

当たりが柔らかくて馬を気持ちよく走らせるタイプの騎手のため、相性は良さそう。うまく行けば、新たな名コンビとしてファンが記憶することになるかもしれない。

欅の先にある夢

何よりこのコンビを見ていると、“ある馬”を思い出してしまう。

競馬ファンなら「武豊騎手+逃げ馬=サイレンススズカ」という図式が頭をよぎるのではないだろうか?

天皇賞秋で散った悲運の名馬は、今なお多くのファンの心に刻まれている。「あのまま走り続けていたらどうなったんだろう?」、「種牡馬になっていたらどんな仔を出したんだろう?」 いまだにそう思わずにはいられない。

エイシンヒカリがサイレンススズカ級だとは言わない。まだまだ一流の逃げ馬とはいえず、人気先行の感が否めない。

ただ、サイレンススズカも最初から強かったわけではない。徐々に力をつけ、初めて重賞を勝ったのは4歳になってからだった。

エイシンヒカリの父は、サイレンススズカの父サンデーサイレンスが生んだ最高傑作ディープインパクト。ファンを魅了する個性的な逃げに鞍上武豊……。

これだけ揃えば、夢を見るには十分ではないだろうか。

1998年11月1日、東京競馬場の欅の向こう側に置き忘れた夢が動き出そうとしている。そんな未来が見られたら、競馬ファンとしてこれ以上、胸躍ることはない。

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