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2018年10月14日、京都競馬場で秋華賞(GⅠ/芝2000m)が行われる。

最大の注目は、圧倒的な強さで春の牝馬2冠を制したアーモンドアイ。オークスから直行という異例のローテーションで、史上5頭目の牝馬3冠を目指す。

オークスに続いて圧倒的な支持を集めることは間違いなさそうだが、本当に死角はないのか。2つの大きなポイントに焦点を当てて探っていく。


ポイント① 過去に例のないローテ

まずやはりカギになるのは、今回がオークス以来の実戦となる点だろう。休み明けが不安視された桜花賞で結果を出して証明したように、アーモンドアイ自身は久々を苦にしない。それどころか、気性が勝ったタイプだけにむしろフレッシュな状態の方が力を発揮できるくらいだ。

しかも、何かアクシデントがあったというわけではなく、オークスから直行するのは当初の予定通り。ましてや、3冠牝馬アパパネなどを育て上げ、JRA・GⅠを13勝している国枝栄厩舎なら、仕上げに抜かりはないだろう。

しかし、過去のデータからはマイナスと言わざるを得ない。過去10年の秋華賞優勝馬はいずれも8月以降のレースに出走しており、前走からレース間隔が3か月以上空いた馬は、オークスから直行した10頭を含めて16頭が出走し、掲示板に載ってすらいない。

それより前に、テイエムオーシャン(2001年)、カワカミプリンセス(2006年)がオークスからぶっつけで優勝した例はあるものの、のちに天皇賞(秋)を制した女傑エアグルーヴが1996年にオークスから直行し、単勝1.7倍の1番人気に支持されながら10着に敗れたのをはじめ、1998年にエリモエクセルが7着、2010年にサンテミリオンが18着と、オークス馬が秋初戦で挑んで敗れた例もある。他にも、ウオッカが6月の宝塚記念以来で3着、ダンスインザムードが7月のアメリカンオークス以来で4着など、前哨戦を使ってきた馬に比べれば分が悪いことは歴史が物語っている。

また、牝馬はもちろん、牡馬を含めても、秋に前哨戦を使わずに3冠を達成した馬はいない。アーモンドアイがそんな異例のローテーションも問題にしないほどのスケールの大きな馬であることは、春のレースぶりを見ても明らかだが、この後はジャパンカップに出走することが示唆されており、休み明けの今回で目一杯に仕上げてくることは考えづらい。最終追い切り後の共同記者会見で、追い切りに騎乗したクリストフ・ルメール騎手は「コンディションはまだ100%ではない」と話していた。そのあたりに、他馬が付け入る隙はあるのかも知れない。

ポイント② 京都内回りの舞台設定

もう1つ、大きなポイントになるのは、舞台となる京都芝内回り2000m。ややトリッキーな舞台設定で、レースセンスや競馬のうまさが問われるがゆえ、歴史に名を残す名牝でも秋華賞では意外な苦戦を強いられてきた。

その代表的な例が、2009年に秋華賞で牝馬3冠を逃したブエナビスタだ。爆発力のある差し脚を武器としていた同馬は、桜花賞とオークスでいずれも2着に下したレッドディザイアに出し抜けを食らったばかりか、それを捕まえようと強引な競馬になり、3位に入線したブロードストリートの進路を妨害して2位入線→3着降着。その後に天皇賞(秋)、ジャパンカップを勝った実力がありながら、器用さに欠けたことが悲運となった。

GⅠを7勝した稀代の名牝ジェンティルドンナも、2012年に牝馬3冠を達成したものの、最も危うかったのが秋華賞だった。オークスでは2着ヴィルシーナに5馬身もの差をつけてレースレコードV。秋華賞では当然のように単勝1.3倍という圧倒的な支持を受けたが、出入りの激しい特殊な流れに惑わされ、わずかにハナ差の辛勝だった。

先行抜け出しを得意とする馬であれば全く問題ないが、この2例からもわかるように、秋華賞では切れを武器にする馬が特に苦戦を強いられる傾向にある。

アーモンドアイはまさにそのタイプ。これまでに勝ってきたのは、東京や京都外回り、阪神外回りといった広くて直線が長いコース。一方で唯一敗れたデビュー戦は、それらのコースに比べれば小回りで、器用さが求められる新潟内回りだった。出遅れも響いて位置取りが悪くなり、2番手から早めに抜け出したニシノウララを捕らえられず、2馬身差の2着。相手は未だに2勝しか挙げられてない明らかな格下馬で、広いコースで戦えばまず負けることはないだろう。

デビューから4戦はいずれも出遅れ。オークスでは五分のスタートを切り、それまでより前めの位置でレースを進めたが、この1戦で出遅れ癖が解消されたと安心することはできない。ましてや今回は、内回りコースを意識して好ポジションを取りにいく馬が多いはずで、少なくとも中団より後ろからの競馬になるだろう。トップスピードに乗るまでに時間がかかれば、前を捕らえるのに手間取ることは十分に考えられる。

また、同馬にはもともと怖がりな面があったため、ロスを承知の上で大外一気の競馬をしてきたという事情がある。気性がどこまで改善されているかはわからないが、馬群がばらけづらい京都内回りで揉まれないように外々でレースを進めるとなると、かなりのロスを強いられるはず。いずれにせよ、桜花賞やオークスと比べれば楽ではないだろう。

まとめ

春のレースぶりを見る限り、同世代の牝馬の中で能力が最上位であることは誰もが認めるところ。しかも今回は、オークス2着、桜花賞3着のリリーノーブルをはじめ、ローズで1番人気に支持されたサトノワルキューレ、紫苑Sを圧勝して最大の上がり馬として期待されたノームコアなどが出走を見送った。桜花賞2着、オークス3着の2歳女王ラッキーライラックは、アーモンドアイと同じくオークスからぶっつけとなる。ライバルとなりそうな馬が不在、あるいは順調さを欠いていることで、アーモンドアイの牝馬3冠制覇の可能性はより高まっていると言えるだろう。

あとは自分との戦いということになるのかも知れない。休み明けでもきっちりと力を発揮できるか、本質的に向いてはいないであろう京都内回りを攻略できるか。それらの課題をクリアできれば、おのずと結果は付いてくるはずだ。着実に名牝への道を歩みつつあるアーモンドアイは、今回も常識を覆すパフォーマンスを披露するのか。

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