王者復権へ――。
2018年4月15日、中山競馬場で皐月賞(GⅠ/芝2000m)が行われる。残念ながら最優秀2歳牡馬で弥生賞も制したダノンプレミアムは出走回避となったが、弥生賞2着のワグネリアンやステルヴィオなどの有力馬が登場する。その中で本来なら主役候補として登場するべきなのがタイムフライヤーである。
人気を落とす要因になりそうなのが、年明け初戦の若葉ステークスである。大外を回したのはよかったが、なかなか前を捉えきれず5着に敗れた。相手がそこまで強いわけではない中での敗戦は印象が悪いとして、主役候補から一歩後退という評価になっている。
しかし、この馬もGⅠタイトルを持つ馬であり、去年のダービー馬であるレイデオロを輩出したホープフルステークスの勝ち馬である。いわばもう1頭の2歳王者として、本来はタイムフライヤーが主役候補でなければならない。1回叩いたことで若葉ステークスよりも上積みがあるのは確かだ。そしてタイムフライヤーにはいくつかの武器を持っており、そこに焦点を当てる。
目次
要素① 上がりタイムは常に2位以内
クラシック競走で勝つ馬には何かしらの決め手がある。うまく逃げ切ること以外であれば、上がり3ハロンのタイムで常に上位でいることがわかりやすい。
タイムフライヤーはまさかの5着に敗れた若葉ステークスですら上がり3ハロンのタイムが1位であった。そしてこれまでに走ったレースの中で常に2位以内をマークしている。若葉ステークスで負けたのは結局のところ、位置取りである。勝った馬は逃げ残りであり、それを差し切るのは大変だ。展開が恵まれなかっただけのことで、次元の違う脚を見せられなかったから負けた。そして前哨戦となるレースでそこまでの調整はしないので、負けても何の問題もない。
タイムフライヤーが若葉ステークスで負けたことで複勝万馬券が飛び出すなど、まさかの敗北に衝撃を感じた人が多い。だからこそ人気落ちにつながっているかもしれないが、ダノンプレミアムが回避した今、いったんその負けは忘れて、これまでに残した実績を見るべきである。
要素② 雨にも対応
天気予報において、関東地方は土日に雨の可能性が出てきている。本来は良馬場で皐月賞をやってもらい、紛れのない中で競馬をしてほしいものだが、こればかりはしょうがない。
ここ数年は2分を切るタイムでの決着が続き、時計がかなり出ていたが、雨予報で状況は変わると見ていい。土日で雨予報ということで馬場が悪化しても来ることを想定した時にタイムフライヤーにはもってこいの状況だ。重馬場だった萩ステークスで勝利しているが、この時の上がり3ハロンのタイムは最速で、2位とは1秒近い差があった。
ホープフルステークスの時のように時計のかかる状況でも難なく勝利を挙げている。他の有力馬には雨の実績がない馬や重馬場で走っていない馬もいる。その点、タイムフライヤーはそれを克服しているから馬場は不問と言える。たとえ良馬場でも問題はないが、降ってもらって悪化すればするほど有利に働くことは間違いない。
要素③ 中山2000メートルの実績
皐月賞は非常にわかりやすい傾向が出ており、中山2000メートル実績がある馬は人気薄でも来やすいというデータがある。過去10年で10番人気以下の馬が馬券圏内に来たのは2頭しかいないが、後にダービー馬になるエイシンフラッシュは京成杯の勝ち馬、去年のダンビュライトは弥生賞3着という実績があった。
つまり、それだけ中山2000メートルでの実績は重要であり、好走の条件と言える。ホープフルステークス1着のタイムフライヤーの実績は揺るがない。弥生賞を制したダノンプレミアムがいない今、このコースで実績を残した馬は限られてくる。ホープフルステークスでは16番手で競馬をしていたが、4コーナーにかけて進出を開始し、最後は差し切ってみせた。なにより17頭の多頭数での勝利経験はとても大きい。
まとめ
ホープフルステークスというレース自体が最近整備されたため、本当に直結するかどうかが疑わしい面が残され、懐疑的な見方をするケースが多い。しかし、GⅠであることに間違いはない。若葉ステークスで負けたのが衝撃的だったが、そこに目を瞑れば十分に買える。
問題になるのは枠順だが、基本的には大外でも問題はない。大外は不利とされているが、芝2000メートルはコーナーまで距離もあるため、さほど無理をしなくていい。良血馬が多く、どれも有力に見えるが、最後はここまでの実績やどういう相手と戦ってきたかが勝負の鍵を握る。手綱を握る内田博幸騎手はゴールドシップであっと言わせる騎乗を見せ勝利した。その時も馬場は荒れていた。腹をくくって乗ってくれれば勝機は十分にある。