悲願のタイトルを、彼女に――。
2017年11月12日、京都競馬場でエリザベス女王杯(GI/芝外回り2200m)が行われる。人気を集めそうなのが、京都大賞典で牡馬の有力馬たちを一蹴した7歳牝馬スマートレイアーだ。今まで手が届きそうで届かなかったGIタイトルの奪取に向け、最高の臨戦過程で挑んできている。
では、スマートレイアーはエリザベス女王杯を勝てるポテンシャルを持っているのか? 調べていくと、少なくない不安があることが分かってきた。
目次
不安要素① 完璧過ぎた前哨戦
まず、前哨戦の内容を振り返りたい。後方の内々から競馬を進めたスマートレイアーは、直線で進路を内に取った。鞍上の武豊騎手は巧みに内ラチ沿いをぬい、最後はトーセンバジルとの叩き合いを制した。
素晴らしい競馬だった。
しかし、同時に「これ以上の競馬」が望めないパフォーマンスでもあった。
・内々を進んだことにより、距離ロスはほぼゼロ
・内に突っ込みながらほとんど不利を受けていない
エリザベス女王杯でも100点の競馬ができるとは限らない。特にGIになると、各馬が「一発」を狙ってくる。内をスルスルと抜けて……という競馬は、前回以上に困難になる。だからといって、外を回れば距離ロスが生じてしまう。
前哨戦が完璧だったからこそ、本番でも同様のパフォーマンスが望めるか、不安が大きいわけだ。
不安要素② GIにおけるパフォーマンスの低下実績
さらにスマートレイアーは、GIでパフォーマンスを落としてきた残念な実績がある。
2014年
大阪城S1着→ヴィクトリアマイル1番人気8着
府中牝馬S2着→エリザベス女王杯5番人気10着
2015年
阪神牝馬S4着→ヴィクトリアマイル6番人気10着
府中牝馬S2着→エリザベス女王杯8番人気5着
2016年
阪神牝馬S1着→ヴィクトリアマイル3番人気4着
府中牝馬S3着→香港ヴァーズ5着
2017年
京都記念2着→ヴィクトリアマイル4番人気4着
ご覧の通り、GIではほとんど順位を落としている。秋華賞以来、馬券に絡んだこともない。
今回も前哨戦が完璧だっただけに、パフォーマンスを落とす懸念はつきまとうのだ。
不安要素③ ディープインパクト産駒“史上初”への挑戦
そして血統的な面も不安材料となる。ディープインパクトはエリザベス女王杯でも結果を残しているが、ほとんどが4歳馬によるもの。
ディープインパクト産駒は全体的に若い馬が活躍する傾向にあり、年齢とともにパフォーマンスを落としていく。
例えば、6歳以上におけるGI実績を見てみると……
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年齢 着別度数
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6歳 2- 3- 0-27/32
7歳 0- 0- 1-11/12
8歳 0- 0- 0- 9/ 9
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数々のGI馬が出ている中、6歳以上になると勝ち馬はわずか2頭に激減する。7歳以上になると、馬券に絡んだことすら、一度しかない。なお、牝馬に限定すると(0−0−0−7)と、好走例は一度もない。
そもそも7歳になって現役を続行する馬が少ないこと、スマートレイアー自身が7歳で重賞を勝っていることを加味すれば、あまり意味のないデータにも思えてくる。しかし、一定数のデータがある中で前例がないというのは、やはり懸念点として挙げざるを得ない。
まとめ
スマートレイアーは実力馬だが、少なくない不安要素があることがわかった。
果たして、彼女は不安をはねのけ、初の戴冠を手にすることができるのだろうか。