タイトルをつかめるか――。
2018年4月1日、阪神競馬場で大阪杯(GⅠ/芝2000m)が行われる。タイトルに向けて視界良好のスワーヴリチャード、去年のジャパンカップを制したシュヴァルグラン、復活を目指すゴールドアクターなど今年は多くの役者がこの舞台に集まる。その中で目立たない存在ながら実力的に申し分ないのがウインブライトだ。前走の中山記念は前目でレースを進め、逃げ粘るマルターズアポジーを差し切り、前哨戦を飾ってみせた。中山記念と大阪杯の相性の良さを考えると、本番でも十分な活躍を見せる可能性は高い。これまでの実績を他の馬と比較すれば明らかに見劣りはするが、力量に絞って見ていけば他の有力馬と遜色ないところにはいる。
ウインブライトには大阪杯でプラスに働く要素がいくつかある一方で、こういう展開になればさらにいいというポイントがある。ウインブライトにとっての理想的な流れがあり、そうなれば勝利はより近づく。群雄割拠の中長距離路線はまだ確固たる主役がいない。その主役にウインブライトが名乗りを上げるか。ウインブライトを後押しする要素とちょっとした注文について掘り下げる。
目次
要素① 右回りでの良績
ウインブライトは重賞を3勝しているがいずれも右回りであり、成績が非常に安定している。得意の中山競馬場で着外に沈んだのは皐月賞のみで、しかも今回対戦し、2017年の皐月賞を制したアルアインとはコンマ5秒差とさほど負けていない。しかもこの時は8枠17番と大外に入り、位置取りもやや後方と普段通りのレースができなかった。それを思えばコンマ5秒差まで詰められたのは十分である。
左回りでは結果を出せておらず、常に左回りへの対応がネックになるが、今回は右回りで何も考えなくていい。しかも中山競馬場のコースと阪神競馬場の内回りコースは同じような形状をしており、急坂もある。この2つに共通点が非常に多いことから、阪神競馬場への対応も簡単に行える可能性が高い。実力を出し切れる環境にあることは間違いない。あとは、この馬なりにレースができるかどうかである。
要素② 小回りコースに対応
ウインブライトは前で粘りこみを図るタイプであるため、小回りコースが合っている。ウインブライトのレースは前でレースを行い、直線で抜け出すパターンだ。メリットは抜け出す際のリスクがないこと、確実に脚を使えることが挙げられる。
一方で今回出走してきた有力馬の多くは長い直線だからこそ輝きを見せるタイプだ。しかも、この週はドバイ国際競走があり、外国人ジョッキーや日本の有力騎手はほとんどドバイに行っている。テン乗りが目立つ中、ウインブライトに騎乗する松岡正海騎手はほぼすべてのレースに騎乗しており、ウインブライトのことは知り尽くしている。
仕掛けどころなどをわかってレースに向かえるのは大きい。小回りコースはこの仕掛けどころが非常に重要であり、判断の遅れが命取りになる。そうした意味ではかなりのアドバンテージになるだろう。
注文① ペースが多少速くなること
ここまでのレースを見ていくと、ウインブライトは3番手あたりでレースを進められる。しかも今回は他に行きたい馬がそこまでいるわけではないので、枠順にもよるが、すんなりと前につける可能性は高い。
ここまでは何も問題はないが、気をつけないといけないのはペースの問題だ。ウインブライトは速い脚を持っているわけではない。直線勝負で末脚勝負になれば圧倒的な不利だ。毎日王冠ではいいペースに乗りながらも最後は決め手勝負になり、33秒7を出しながらも33秒を切ってくる馬が多くて大敗を喫した。後方に位置した馬が直線まで脚がたまるような展開になると、不利だ。いかに後ろに脚を使わせる展開になるかがカギである。
理想的なのは去年の福島記念のような乗り方だ。この時は3番手を推移したが、途中でペースが上がり、後半1000メートルのタイムが58秒6という状況になった。その時に我慢していたのがウインブライトであり、なんとか粘り通して勝利した。内回りでレースをし、どの馬にもチャンスがある展開ならば、何かが仕掛けてその動きに便乗してペースが速く流れればウインブライトには向いている。枠順などを見てそのあたりは判断しないといけない。
まとめ
これだけ多くの有力馬がいれば、たとえ中山記念を制していても人気は低くなる。しかしGⅠ勝利をした馬の多くは外国人騎手が乗っていた。もしくは武豊騎手などの名手が乗っていたケースもある。タイトルは確かにあるかもしれないが、そこに導いた騎手ではない。その部分に付け入る隙はあるのではないか。
天皇賞春や安田記念を見据えた馬もこの中にいるかもしれないが、ウインブライトはそのどちらのレースとも自身の適性とは離れている。大阪杯はウインブライトにとってみれば古馬中距離GⅠの中で最もチャンスのあるレースである。先行押し切りで勝つことができ、右回りではさほど穴がない。自在にレースをこなせるというのもプラスである。後は調教などで判断をすることが求められるが、色気を持って大阪杯に臨むことは間違いない。ここで一発があってもおかしくない。