残り、あと2戦。すべてのレースで、1着になるために――。
2017年11月26日、東京競馬場でジャパンカップ(GI/芝2400m)が行われる。キタサンブラック、レイデオロ、サトノクラウン、シュヴァルグランらが出走するが、どんなレースが展開されるのか? 台頭する可能性を秘めた伏兵とは?
今回は1番人気に支持されることが確実なキタサンブラックにフォーカスする。今年は大阪杯、天皇賞春を制して順風満帆なスタートを切ったが、宝塚記念でよもやの敗戦を喫した。しかし、天皇賞秋では再びいつものパフォーマンスで勝利。年内での引退が決まっていることもあり、残り二戦の走りが注目を集めている。
ではなぜ、キタサンブラックは天皇賞秋で復活できたのか? 改めて振り返っていくことにしよう。
目次
復活の5つの根拠
「キタサンブラックは天皇賞秋で復活できるのか?」
天皇賞秋の前は、そんな話題で持ちきりだったが、復活への根拠はレース前から多く見られていた。
主な理由は以下だ。
期待① 2000m以下の抜群の安定感
期待② 休み明けの好成績
期待③ 抜群の枠順〜自分のペースで競馬ができる〜
期待④ 馬場の悪化も問題なし
期待⑤ 要するに、何もかも条件は好転
詳細▶なぜキタサンブラックと武豊騎手は復活できたのか?天皇賞秋を勝てた5+1の根拠
特に5番目、宝塚記念から何もかもが好転していたことは大きかった。
・天皇賞春の反動 → 休み明けで余力たっぷり
・過去10年で春古馬王道路線連覇はなし → 天皇賞秋を休み明けで勝つ実力馬は多数いる
・グランプリは3回走って勝利ゼロ → 実績のある東京GI、2000mGI
・叩き3戦目はパフォーマンスを落とす傾向に → 休み明け
・武豊騎手もグランプリは久しく勝っていない → 天皇賞秋5勝、昨年はJCを制覇
光った武豊騎手の手腕
そして、実際のレースでは武豊騎手の判断力が目立った。
スタートが失敗したことで必ずしもスムーズな競馬ではなかった。しかし、その中で慌てず騒がず、徐々にポジションを上げて4コーナーでは先頭に並びかける位置にまでポジションを上げた。この間、「進路をどこに取るか」「少しでも馬場のいいところはどこか」「いつ上がっていくか」など、様々な判断が求められる場面に直面していたはずだ。
それらのハードルをスマートに飛び越えて迎えた直線。馬場のいいところを通るために外へ外へキタサンブラックを導き、同時に最大のライバルであったサトノクラウンを(妨害のない絶妙な距離感で)牽制し、主導権を完全に握った。
まさに「人馬一体」という言葉がふさわしい、歴史的なレースだった。
何もかもが好転していたことに加え、武豊騎手がほぼ完璧なレース運びをしたことで、キタサンブラックは復活を遂げられたわけだ。
ジャパンカップへの不安は?
では、ジャパンカップ連覇へ向けて不安はあるのだろうか?
強いて挙げるとするなら、「天皇賞秋からの上げ幅がどれほどあるのか?」という点だろう。
前述の通り、天皇賞秋は宝塚記念と比較して何もかもが好転していた。上げ幅が大きく、普通に走れば好走するくらいの条件だったのだ。
一方、今回のキタサンブラックは「上げ幅」という意味では前走ほど期待できない可能性が高い。東京芝2400と同芝2000mはそれほど大きな違いがなく、条件が悪化するわけではないにせよ、好転するわけでもない。
そんな中、例えば、枠順が(ダービーで惨敗した)大外枠に入ったり、再び出遅れてポジションを悪くしたり、道中に不利を受けたりするようなマイナスファクターが重なってしまった場合、天皇賞秋よりパフォーマンスを落とす可能性は否定できないのだ。
もっとも、キタサンブラックには「普通に走りさえすれば」ジャパンカップを勝てるだけの力がある。その点に疑いの余地はないだろう。よって、以下にマイナス面を減らしていくか、普通に走れるかどうか、が一つの焦点となってきそうだ。