原因は昨秋のローテーションか
不信の原因を挙げるとするなら、彼のキャリアにあるのではないだろうか?
競走馬の脚は「ガラス」と表現されるほど繊細で壊れやすい。またサラブレッドは改良に改良を重ねられているため、メンタル的に不安定なことが多い。だから疲労やストレスに敏感で、過剰に感じることがあるとキャリアに悪い影響が出ることが多々見受けられる。
よく「(野球の)ピッチャーの肘は消耗品」と言われるが、競走馬の脚もまた、消耗品なのである。
そう考えると、ワンアンドオンリーの昨秋のローテーションは厳しすぎた。
神戸新聞杯→菊花賞までは良かったが、その後にジャパンカップと有馬記念に使っている。ただでさえ厳しいクラシック競走(しかも3000m)に加えて、古馬と戦わなければならなかったのだから消耗度はかなり高かったはずだ。
特に近年の傾向として「菊花賞→ジャパンカップのローテを歩んだ馬は古馬になってから大成しない」というジンクスがある。
菊花賞の開催日が10月下旬になって以降、次走にジャパンカップを選択した馬は23頭いる。しかし、そのうち、古馬になってから国内GIを勝ったのはメイショウサムソンとハーツクライの2頭しかいない。他にも……
リーチザクラウン(ダービー2着)
ウインバリアシオン(ダービー、菊花賞2着)
ローズキングダム(朝日杯FS1着、ジャパンカップ1着入線)
オウケンブルースリ(菊花賞1着)
ヴィクトリー(皐月賞1着)
ドリームパスポート(皐月賞、菊花賞2着、ダービー3着)
アドマイヤジャパン(皐月賞3着、菊花賞2着)
ハイアーゲーム(ダービー3着)
ザッツザプレンティ(菊花賞1着、ジャパンカップ2着)
ネオユニヴァース(皐月賞、ダービー1着)
サクラプレジデント(皐月賞2着)
ジャングルポケット(ダービー、ジャパンカップ1着)
アグネスフライト(ダービー1着)
エアシャカール(皐月賞、菊花賞1着、ダービー2着)
などなど、クラシックで結果を残したそうそうたるメンバーがいたが、古馬になってから国内のGIを勝ったのはわずか2頭のみ。
競走馬として完成していない3歳の秋に無理なローテーションを組むと、古馬になってから反動が来ると考えられるのである。
なお、同じように3歳馬にとって過酷な海外遠征を行ったキズナやハープスターも古馬になってからGIを勝てていない。これだけの素質馬が揃ってGIを勝てないとなると、“3歳時の疲労による余波”という仮説は決してオカルトな理論ではなくなってくる。
ワンアンドオンリーは神戸新聞杯→菊花賞→ジャパンカップ→有馬記念という、考えられる上でもっとも過酷なローテーションを歩んでいる。しかも明け4歳の春に海外遠征を敢行。そしてさらに宝塚記念へ出走する運びとなった。
競走馬の脚が消耗品だとしたら、ワンアンドオンリーの脚はかなり消耗していてもう余力が残っていない。よって、「宝塚記念惨敗の理由は昨秋の使い詰めにあった」と考えられるのである。
復活を期待したいが……
なんといっても父がハーツクライであるため、秋に成長して戻ってくる可能性はゼロではない。ダービー馬が復活すれば競馬が盛り上がるため、願わくばそうなってほしいところだ。
しかし、過去の事例を見てみると「現実は厳しい」と言わざるを得ない部分がある。
今後、どのようなローテーションを歩むか分からないが、まずは休養して成長を促すほかに復活への手立てはないのではないだろうか。3歳秋の酷使による“ジンクス”をはねのけるのは、相当難しいミッションなのだ。
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