下剋上なるか――。
2018年5月20日、東京競馬場でオークス(GⅠ/芝2400m)が行われる。桜花賞組では鬼脚を披露して勝利したアーモンドアイ、横綱相撲をしながら2着に終わったラッキーライラックなどが出走を予定する。他にもフローラステークスの勝ち馬サトノワルキューレやランドネも出るが、中でも注目はオールフォーラヴだ。
オールフォーラヴの前走は忘れな草賞だったが、前半1000メートルが58秒9と隊列が縦長になったところで中団に位置し、3コーナーから4コーナーにかけてポジションを上げて先頭に躍り出ると、後続からの追撃をハナ差交わして勝利した。上がりタイムを見てもかなりしんどい競馬だったことは否めないが、ここで賞金を加算してオークスへ直行できたのは非常に大きい。
今回はアーモンドアイとラッキーライラックの2強、リベンジマッチの様相を呈している。そうなるとこれまでアーモンドアイやラッキーライラックと戦ってきた馬はノーチャンスに近いと言っても過言ではない。別路線組、その中でもタフな競馬を勝ち上がってきたオールフォーラヴの下剋上の可能性は高い。
目次
要素① 忘れな草賞のレベルと実績
今回の忘れな草賞の勝ちタイムは2分0秒5である。このタイムは1986年以降33回行われてきた中でも2位に入る好タイムだ。高いレベルで行われたレースであることは間違いない。しかも、今年忘れな草賞に出走した馬の中にはスイートピーステークス勝利のランドネ、3着のゴージャスランチも出走していた。レースの質、中身という点でも確かなものがある。
しかも、オークスを考える際に忘れな草賞の勝ち馬がオークスで健闘している事実にも目を向けたい。2015年の覇者ミッキークイーン、2011年にはエリンコート、1998年のエリモエクセル、1994年のチョウカイキャロルは忘れな草賞を制し、オークスへ直行して優勝した。しかも人気にあまりならずに勝利をしている。基本的には桜花賞組が強いが、忘れな草賞を勝利し、しかもレベルの高い競馬だったオールフォーラヴの評価は自然と上がる。
要素② オークス向きの脚質
オークスでは上がり3ハロンのタイムが1位の馬が好走しやすく、後方に位置しても届く可能性が高い。アーモンドアイには願ってもない環境だが、それと同じほど好走しやすいのが前目で粘り、上がり3ハロンのタイムが3番目か4番目程度をマークするケースだ。逃げ粘るのは難しいが、その後ろを追走した馬がどうにか残すというケースは多い。
オールフォーラヴは過去3戦でいずれも上がり3ハロンのタイムが3位となっている。しかも前目につけられ、忘れな草賞では途中7番手で推移したが、4コーナーでは3番手まで押し上げている。この乗り方で前に行き、粘りこみを図る形になればチャンスだ。鞍上は和田竜二騎手を予定しておりテン乗りではあるが、去年はモズカッチャンでまさに同じような競馬をして2着に入った。テン乗りでもそのあたりは大丈夫だ。
要素③ 重馬場歓迎
週間天気を見ると、今週土曜に東京地方は雨が予想されている。ヴィクトリアマイルでも雨によってやや重となったが、どの程度の雨になるかは想像がつかない。多少時計がかかるのか、重い馬場になるのかはわからないが、少なくとも雨が降ることはオールフォーラヴにとってはプラスに働く。そもそもオールフォーラヴの上がり3ハロンのタイムは35秒1が最高である。かかってもらった方が歓迎だ。
血統面ではオールフォーラヴの母レディアルバローザが重馬場に強かった。2012年の中山牝馬ステークスでは重馬場で勝利を収めている。距離適性で言えば2400メートルは微妙なところだが、父ディープインパクトは距離不問、そこまで気にしなくていいだろう。血統的にも重馬場歓迎、末脚のことを考えても重馬場の方が好都合だ。もちろん晴れてもうまくペースが流れればチャンスは大きい。
まとめ
アーモンドアイとラッキーライラックの2強ムードとなり、馬券はここから売れていくことは間違いない。しかも桜花賞組やフローラステークス組にも注目が集まるとなればその陰にオールフォーラヴが隠れる可能性が高い。そうなれば馬券的にもレース的にもチャンスは大きくなる。
今回騎乗予定の和田竜二騎手はデビューから20年以上を経過してキャリアハイを記録した。収得賞金は20億円を超えたが、これは年間全勝を達成したテイエムオペラオーにすべて騎乗した2000年の収得賞金を超えている。100勝間近までいくなど、ここに来て成長を見せている。ただGⅠ勝利はテイエムオペラオー以来マークしていない。藤岡佑介騎手、幸英明騎手と2週続けて関西の中堅ベテランがGⅠを勝利している。この流れに和田竜二騎手も続きたい。オールフォーラヴが下剋上を成し遂げる可能性は十分ある。