汚名返上へ――。
2018年5月6日、東京競馬場でNHKマイルカップ(GⅠ/芝1600m)が行われる。アーリントンカップを制したタワーオブロンドンやニュージランドトロフィーを制したカツジなどトライアルを制した馬が出走予定の中、テトラドラクマのように桜花賞を回避した馬も登場する。この中で注目なのがプリモシーンだ。
前走の桜花賞は6番人気に支持されたが、かなり後方で競馬を行い、上がりタイム3位ながら10着に惨敗した。勝ったアーモンドアイが別格だった一方、2着のラッキーライラックが先行して横綱相撲をしている。これでは後ろにいた馬はたまったものではない。今回はアーモンドアイもラッキーライラックもいないが、牡馬勢との戦いになり不安要素が出てくる。ただ10着に敗れたからNHKマイルカップでも来ないとは限らない。むしろ桜花賞の負けは仕方のない負けであり、本来はこの程度の実力ではない。
様々なマイナス要素が前走の桜花賞にはあり、それが惨敗の要因だったとすれば桜花賞の着順は度外視できる。むしろここで汚名返上ということも十分に考えられる。それだけの好材料がプリモシーンにはあり、人気が少し落ちるこの舞台で穴を開ける可能性は高い。
目次
要素① 前走は休み明けと輸送の影響
プリモシーンは美浦所属の馬だが、関東馬が久しくクラシックで勝てなかったのは輸送の問題が大きいと言われている。2010年に牝馬三冠を達成したアパパネは栗東滞在を選択し、栗東所属の関西馬と同じように調教を重ね、桜花賞も快勝した。輸送というのはそれだけ3歳牝馬にとっては高いハードルになるが、前走のプリモシーンは初めての関東遠征だった。その影響はとても大きかったと言える。
また、3ヶ月の休み明けで臨んだのも厳しかった。過去に阪神ジュベナイルフィリーズから直行で健闘した馬もいれば、すべてのマイナス要素を跳ね除けたアーモンドアイのような別格の馬もいるが、たいていは休み明けは走らない。それでも上がりタイム3位で走るのだから動ける態勢にはあった。叩き2走目のここで巻き返す可能性は十分にある。前走はマイナス要素が色々とあった。今回は東京競馬場で、多少間隔を詰めて競馬ができる。これだけでも相当大きい。
要素② フェアリーステークスの勝ち方
フェアリーステークスは中団に位置していたが、段々と位置取りを上げて4コーナーでは5番手に位置し、上がり3ハロンのタイム3位の脚で前の馬を捕まえて差し切ってみせた。NHKマイルカップの過去のレースを見ると、勝ち馬は前でレースをした馬が多く、逃げ切りも何例か見られる。後方から差し切るには次元の違う脚が必要だが、それがない馬は前での競馬が必要になる。
プリモシーンがフェアリーステークスで見せた競馬を披露すれば、勝機は十分にある。大外一気が決まる年もあるが、前で走る馬もそれなりの上がりタイムで走ることになればそれを凌駕するタイムが必要だ。桜花賞のアーモンドアイのような脚が必要だが、そんな末脚を見せる馬は見当たらない。33秒台の脚を見せたとしても、それでは届かない。そうしたことを考えると、プリモシーンに騎乗する戸崎圭太騎手がフェアリーステークスのようなレースを目指すのであれば勝つ可能性は高まる。もっと言えば、ある程度前目でレースをするとさらにチャンスは高まる。
要素③ テトラドラクマに2度勝利
人気を集めそうな馬の中にテトラドラクマがいる。クイーンカップを見事に逃げ切ってみせたが、フェアリーステークスでは6着に敗れている。この時に勝ったのがプリモシーンである。ちなみに未勝利を脱出したのは3戦目だが、2戦目に戦って敗れた相手もプリモシーンだ。どちらも後ろから来たプリモシーンに差し負けている。テトラドラクマが仮に人気となり、プリモシーンが人気落ちとなれば、2度も負けている馬が人気面で上という状態になる。決して力のない馬ではない。だからこそ、プリモシーンの強さが浮かび上がる。
また厩舎の差というのもある。プリモシーンの所属厩舎は木村厩舎だが、2015年のNHKマイルカップに出走したアルビアーノで牝馬ながら2着に入っている。この時は前目でレースを進めて粘り通した。一方、テトラドラクマは小西厩舎の所属だが、テトラドラクマのクイーンカップが久しぶりの重賞勝利だった。この2頭の相手関係を考えればプリモシーンが上である。あとは他の有力馬との比較になるが、人気面で切捨てを考える際には覚えておきたい情報だ。
まとめ
桜花賞は紛れの少ないレースであり、結果的にアーモンドアイが次元の違う走りを見せた。アーモンドアイがいなければ、ラッキーライラックが勝利し、プリモシーンの後方待機策では厳しかったという評価になっていたはずだ。それがアーモンドアイによってなっていないというのは人気の盲点になりやすい。
クラシック戦線を見ても、牡馬はまだまだ群雄割拠、牝馬は最強の2頭がいるような状態にある。こんな状態の時は牝馬の勢いは侮れない。思い返せば2007年、ダイワスカーレットとウオッカの2強ムードの中、NHKマイルカップは牝馬のピンクカメオが17番人気で勝利を果たした。そのピンクカメオも桜花賞では惨敗し、人気落ちで挑んでいる。歴史は必ず繰り返す。プリモシーンにもチャンスが訪れている。