悲願への足がかり――。
2018年4月22日、京都競馬場でマイラーズカップ(GⅡ/芝1600m)が行われる。スワンステークスを制したサングレーザーや今年の京都金杯を勝利したブラックムーン、マイルのオープン特別で3戦連続2着のグァンチャーレなどが出走予定だが、なんといっても注目はエアスピネルだ。
前走はマイルチャンピオンシップで、鞍上は直前にケガをした武豊騎手から世界の名手ライアン・ムーア騎手に乗り替わり、ほぼパーフェクトな騎乗を見せたが、ペルシアンナイトの前に惜敗した。中山記念から参戦予定だったが、出走を回避しマイラーズカップからの始動となり、今まで通り武豊騎手が騎乗を行う。
エアスピネルはここまでで掲示板を外しておらず、高い安定感が注目されているが、大事な場面であと一歩が届かない善戦マンでもある。基本的に距離は問わないタイプだが、得意なのはマイル戦だ。そのマイル戦で結果を出し、悲願を成就させたい。エアスピネルが持つ武器、そして不安材料などを掘り下げていく。
目次
強み① マイルでの実績
エアスピネルはこれまでに15戦しており、中でもマイル戦は9戦している。その中で4勝2着3回3着1回という安定した成績を残す。エアスピネル自身がこれまでに挙げた4勝すべてがマイル戦だ。もっと言えば、マイル戦以外では連対経験すらない。ちなみにこの2着3回のうち2回はGⅠでのものだ。だからこそ、今度の安田記念は何が何でも勝ちたいところだろう。
もう1回の2着は去年のマイラーズカップのものだが、勝った馬は去年阪神カップの勝利を最後に引退したイスラボニータだ。イスラボニータ自身もエアスピネル同様になかなか勝てなかったが、マイラーズカップで2年半ぶりの勝利を挙げた。今回のメンバーははっきり言えば小粒であり、マイル実績だけを見ればエアスピネルが断然である。むしろここは負けることが許されないレベルであろう。
強み② 斤量56キロでの出走
もしハンデ戦になれば、エアスピネルは相当なハンデを背負わされるように、実績面だけを見ればGⅠ馬と同等の評価が与えられるだろう。その点、マイラーズカップは別定戦のため、56キロでの出走となる。サングレーザーのようにGⅡを制した馬は1キロ増となっている。実績面だけでいえばエアスピネルの方が上、それなのに1キロのアドバンテージがエアスピネルに与えられている。この時点でかなりの差になっている。
展開面でもエアスピネルに分がいい。マイル戦で唯一の着外は去年の安田記念だったが、こちらは3コーナーで16番手を追走しており、本来中団や前目でレースを進めるエアスピネルの競馬とは程遠いものだった。それでも安定した上がりタイムをマークし、結果的に5着まで挽回したのはこの馬の実力であろう。前や中団でいつも通りの競馬が出来れば、まずこの馬が勝つ。出遅れ癖がある馬ではないため、よほどの不利がなければ確実に走る。
不安要素① 初めての半年程度の休み明け
エアスピネルは間隔を離してレースに出ているが、3カ月程度が最長だった。しかし、今回はマイルチャンピオンシップ以来の参戦ということになり、半年近い休み明けということになる。休み明けに弱いわけではないが、これまでとは違うリズムでレースに出るため、違う結果が出たとしても決して不思議ではない。また、悲願のGⅠ制覇を果たすために、ここが本番ではないことも明らかだ。
もし弱点や不安要素を探すのであればこの休み明けがどう影響するかだろう。切れ味の面や馬の実力などは明らかに群を抜いてエアスピネルがいい。ただ、実力通りの結果を出し切れるかどうかはやってみなければわからない。今年は4歳勢の勢いがよく、5歳勢が少し煽りを受けているのもやや気になる。マイルチャンピオンシップで負けたペルシアンナイトも4歳だ。このレースだけを見れば、4歳勢はあまり気にしなくていい。1400メートルの実績までの馬が目立つからだ。敵は己にあり、そんな言葉があるが、まさにマイラーズカップにおけるエアスピネルに向けられた言葉だろう。
まとめ
ここは絶対に勝っておきたいのは陣営全員が思っていることだろう。それだけ力関係ではエアスピネルが突出している。人気も一本被りになる可能性すらある。マイル戦での安定感が光り、むしろ目線はその先の安田記念にあるが、問題は半年近い休み明けがどのような影響を与えているかだろう。ここを快勝するようであれば、安田記念でも4歳勢と戦える。
エアスピネルの母エアメサイアも春のクラシックでは善戦が続いたが、前哨戦のローズステークスで快勝し秋華賞もライバルのラインクラフトに勝利した。息子もこの遺伝子を引き継いでいるのなら、前哨戦と本番を一気に制してもおかしくない。悲願を叶えるためにも、マイラーズカップは負けられない。