麻雀を“観るスポーツ”として定着させた立役者――それが「Mリーグ」である。
プロ選手たちがチームの威信を懸けて年間を通して競い合うこのリーグは、戦術性・スリル・演出のすべてを兼ね備え、多くのファンを魅了し続けている。
そして観戦をより深く楽しむには“ルールの理解”が不可欠である。
本記事では、Mリーグの公式ルールをもとに、試合形式・採用役一覧・役満の種類・点数計算・罰則制度までを徹底的に解説する。初心者から中級者、そしてルールを曖昧に覚えていたファン層まで、すべての麻雀好きに向けた完全保存版だ。
Mリーグとは?観戦前に知っておきたい基本情報

Mリーグとは、2018年に発足した日本初のチーム対抗型プロ麻雀リーグである。株式会社サイバーエージェント代表・藤田晋氏の主導で立ち上げられ、競技性とエンターテインメント性を両立させた全く新しい麻雀のスタイルを確立した。試合はABEMAで全戦無料配信され、実況・解説・データ分析も本格的に行われるなど、麻雀を「観るスポーツ」として広く浸透させることに成功している。
各チームは企業がスポンサーとなり、4名のプロ選手を擁して1シーズンを戦い抜く。年間を通じて行われるレギュラーシーズン、セミファイナル、ファイナルシリーズの3段階構成で優勝を争い、シーズンを通じた累積ポイントによって順位が決定される。
従来の個人戦とは異なり、チームとしての戦略や選手起用も重要な要素であり、「誰が出場するか」「どの場面で攻めるか」といった駆け引きも、Mリーグの醍醐味の一つだ。
また、競技ルールには一般的な麻雀と異なるMリーグ独自の規定も数多く存在する。本記事では、次項からそのルールを体系的に解説していく。
Mリーグの公式ルール【第1章〜第3章の要点まとめ】
Mリーグは、一般社団法人Mリーグ機構が定める公式ルールに基づき運営されており、その内容は細部にわたって厳格に規定されている。本章では、観戦に必要な基礎ルールの中から特に重要な要点を抜粋して解説する。
東南戦の半荘形式を採用
1試合(1半荘)は東場・南場の2周構成。プレイヤー4名が順番に親を務めながらゲームを進行し、最終的な得点と順位でポイントが決定される。途中流局や特殊ルールは一切存在せず、全局が完了するまで試合は続行される。
使用される麻雀牌と赤ドラ
使用する牌は136枚(萬子・筒子・索子の各36枚+字牌28枚)。加えて、赤ドラとして5萬・5筒・5索にそれぞれ1枚ずつ赤牌が含まれる。赤牌は1枚1翻のドラ扱いとされるが、役には含まれない。
配牌は自動配牌卓を使用
全試合、配牌は全自動卓の自動配牌機能により行われる。ドラ表示牌や開門位置も自動で処理され、公平性が徹底されている。
アガリには常時一翻が必要
「食い下がりなし」の一翻縛りが採用されており、アガリには最低1翻の役が必要。また、Mリーグでは常に場ゾロ2翻が加算されるルールとなっているため、得点の計算が一般的な麻雀よりも高くなりやすい。
点棒と持ち点の初期設定
競技開始時の持ち点は25,000点、順位点計算の基準は30,000点(いわゆる「30,000点返し」)である。順位点(ウマ・オカ)は後述。
競技行為には必ず発声が必要
チー・ポン・カン・リーチ・ロン・ツモのいずれも発声が先で行為が後というルールが明文化されており、無発声による行為はアガリ放棄や罰則の対象となる。
審判制度と厳格な裁定権限
Mリーグでは毎試合、公式審判が立ち会い、競技の公平性・ルール違反の判定・進行管理を一括して担う。審判の裁定は最終決定とされ、対局者は従う義務がある。
詳細な公式ルールはこちら
本記事では要点のみに絞って解説している。詳細な競技ルール(全章分)については、以下の記事で全文を確認できる。
▶ Mリーグ公式ルール全文【全章一覧はこちら】
試合形式とシーズン構成|レギュラー〜ファイナルの流れ

Mリーグは、年間を通じて「レギュラーシーズン」「セミファイナルシリーズ」「ファイナルシリーズ」の3段階で構成されるリーグ戦形式を採用している。1日の試合は基本的に2半荘で構成され、各チームがローテーションを組みながら試合に臨むスタイルが定着している。
レギュラーシーズン:長期にわたるチーム戦
レギュラーシーズンでは、すべてのチームが多数の対局に出場し、個人とチームのポイントを蓄積していく。勝敗は1半荘ごとのポイント制で管理され、最終順位によって上位チームが次のステージに進出する。試合数や開催日程はシーズンごとに調整されるが、半年近くにわたって開催されるのが一般的である。
セミファイナルシリーズ:上位チームによる短期決戦
レギュラーシーズンの成績上位チームが進出するステージで、累積ポイントを引き継いだまま再び対局を重ねる。短期間で順位が入れ替わることも多く、ファイナル進出を懸けた攻防はMリーグ屈指の見どころである。
ファイナルシリーズ:年間王者を決める最終決戦
ファイナルシリーズでは、シーズンを通して最も優れたチームを決める最終決戦が行われる。複数の半荘を経て最終順位が決定され、最終的な累積ポイントの最も高いチームがその年のチャンピオンとなる。
出場選手とチーム構成
各チームは原則として4名のプロ選手で構成される。選手の調子や相性を考慮した起用法も勝敗に直結するため、采配の巧拙がシーズンの流れを左右する重要な要素となる。
順位点(ウマ・オカ)の影響
Mリーグでは、各半荘の終了時に得点に加えて順位点(いわゆる「ウマ・オカ」)が加減算される。順位点は固定されており、1位+50,000点、2位+10,000点、3位▲10,000点、4位▲30,000点という形式が採用されている。これらは1,000点=1ポイントに換算され、チーム総合ポイントの計算に組み込まれる。
Mリーグで採用されるアガリ役一覧
Mリーグでは、日本プロ麻雀のスタンダードに基づいた役構成が採用されている。役の構成は1翻から役満までで、ダブル役満は存在せず、すべての役満は一律「四倍満(役満扱い)」として得点計算される。また、赤ドラや裏ドラなどの加点要素も正式に導入されている。以下では、Mリーグ公式ルールに基づくアガリ役の一覧を階層別に整理する。
1翻役
役名 | 門前限定 | 備考 |
---|---|---|
門前清自摸和 | ◎ | ツモアガリ限定 |
立直(リーチ) | ◎ | 1000点供託が必要 |
一発 | ◎ | 立直後1巡以内/鳴かれると消滅 |
役牌(白・發・中・場風・自風) | × | 鳴いても成立 |
平和 | ◎ | 門前・順子のみの形/ツモ符なし |
断么九 | × | 1・9・字牌を含まない |
一盃口 | ◎ | 同じ順子2組 |
海底摸月/河底撈魚/搶槓/嶺上開花 | × | タイミング限定役 |
2翻役
- ダブル立直(◎)
- 連風牌(東場の東家など)
- 対々和(ポン・カンで刻子のみ)
- 三暗刻
- 三槓子
- 小三元
- 混老頭(1・9・字牌のみ)
- 七対子(◎) ※25符計算、符ハネなし
- 三色同順※/一気通貫※/全帯么九※(副露で1翻減)
3翻・6翻役
- 二盃口(◎)
- 混一色※(副露減あり)
- 純全帯么九※(副露減あり)
- 清一色(6翻)※(副露減あり)
役満(四倍満扱い)
- 天和(◎)
- 地和(◎)
- 国士無双(◎)
- 四暗刻(◎)
- 大三元/字一色/緑一色/清老頭/四槓子
- 小四喜/大四喜/九蓮宝燈(◎)
補足:ドラの扱い
- 赤ドラ(5萬・5筒・5索 各1枚):1枚=1翻
- 表ドラ:ドラ表示牌の次牌
- 裏ドラ:リーチ時、ドラ表示の下段牌が裏ドラになる
- 槓ドラ:槓が発生するたびに追加されるドラ
- ドラは加点要素であり、役そのものではない
得点計算・順位点・ウマオカの仕組み
Mリーグでは、一般的な麻雀と同様に「符」「翻」「点数計算」によって得点が決定されるが、観戦者にとって理解しておくべきポイントは大きく3つある。それが「場ゾロ」「順位点(ウマ・オカ)」「点棒の精算ルール」だ。ここではMリーグならではの得点制度の要点を、初心者にもわかりやすく解説する。
① 場ゾロ(常時2翻加算)
Mリーグでは、すべてのアガリに対して常に2翻が加算される。このルールは他の競技麻雀では採用されていない独自規定であり、得点が高く出やすくなる。たとえば、リーチ+ツモだけで4翻相当となるため、通常よりも満貫ラインに届きやすい。
② 順位点(いわゆるウマ・オカ)
Mリーグでは、1半荘終了時の着順に応じて順位点が加減算される。点棒による得失点に加え、この順位点が試合の勝敗を大きく左右する。
順位 | 順位点 | ポイント換算(1000点=1pt) |
---|---|---|
1位 | +50,000点 | +50.0pt |
2位 | +10,000点 | +10.0pt |
3位 | ▲10,000点 | ▲10.0pt |
4位 | ▲30,000点 | ▲30.0pt |
③ 得点の計算例とポイントの集計
得点は、アガリ役によって符と翻を計算し、「2の翻数乗 × 符数」でアガリ点が算出される。
例:30符4翻 → 2900点(子のロン)または1000オール(子のツモ)
Mリーグでは、順位点込みのトータルスコアが1,000点=1ptで集計され、チームや個人の成績に反映される。
④ リーチ棒・積み棒の処理
リーチ棒(1000点供託)はアガリ者が総取りする。南四局で流局した場合はトップ者に加算される。
また、連荘による積み棒は「1本につき+300点」で、ツモ・ロンともに加算される。
⑤ 同点時の処理と順位決定方法
半荘終了時に複数人が同点の場合は、起家に近いプレイヤーが上位となり、順位点もその順に分配される。
また、リーチ棒が複数名で分配される場合、小数点処理は均等に行い、余剰分は起家に近い者に割り振られる。
罰則・ペナルティルール|アガリ放棄やチョンボとは
Mリーグでは、競技の公正性を保つために厳格な罰則規定が設けられている。アガリ放棄、チョンボ、カード提示(イエロー/レッド)など、競技進行に影響する違反行為には明確な裁定が下される。ここでは視聴者が混乱しやすい主なペナルティを整理して紹介する。
アガリ放棄とは?
アガリ放棄とは、その局においてアガリの権利を失う状態を指す。以下のような行為が該当する:
- ツモ順の前倒し(先ヅモ)
- 空チー・空ポン・空カンなどの空行為
- 手牌の枚数間違い(多牌・少牌)
- リーチ後の取り消し
アガリ放棄中は、ポン・チー・カン・リーチすべての行為が禁止される。違反すればチョンボ扱いとなる。
チョンボの定義とペナルティ
チョンボは、対局を破綻させる重大な違反行為であり、その局をやり直しとするだけでなく、個人のスコアから20ポイント減点される。主な例は以下のとおり:
- 誤ロン・誤ツモによる手牌公開
- ノーテンリーチ
- 裏ドラ確認前の山崩し
- 明らかな牌の破損や山の崩壊
チョンボが発生した局では、積み棒は増えず再試合となる。
イエローカード・レッドカード制度
Mリーグではスポーツマンシップの観点から、警告制度も導入されている。試合進行に影響はないが、累積によってペナルティが科される:
- イエローカード:軽度のマナー違反(強打、ため息、発声遅延など)
- レッドカード:イエローカード2枚で即時レッド扱い。チョンボと同様に▲20ポイント減点
カードの提示は主に審判が行い、当日のみ有効とされる。
「包(パオ)」による責任払いとは?
特定の役満(大三元・大四喜・四槓子)を完成させる決定牌を出させた場合、そのプレイヤーが全額または半額の責任払いを負う制度。通称「パオ」。
- 例:三元牌を2種鳴いている状態で、3種目を鳴かせて役満成立 → パオ成立
- ツモの場合は全額、ロンの場合は他家と折半で支払う
責任払いは点棒に直結するため、放銃以上に重いミスになる場合もある。
ルールがわかるとMリーグ観戦はもっと面白い
Mリーグは、単なる勝ち負けの世界ではない。戦略的な打牌、場の流れを読む力、勝負どころでの決断力──そのすべてが視聴者の心を惹きつけてやまない。ルールを理解すればするほど、「なぜ今この打牌をしたのか?」「なぜリーチを我慢したのか?」といった選手の意図が見えてくるようになる。
特にABEMAでの実況・解説は初心者に寄り添った内容になっており、ルールを覚えたての方でも安心して観戦を楽しむことができる。お気に入りの選手やチームを見つけて応援することで、より一層Mリーグが楽しくなるはずだ。
今後さらに注目が高まるMリーグを、ぜひルール理解とともに楽しんでいただきたい。