父の無念は晴らせるか――。
2018年5月27日、東京競馬場で日本ダービー(GⅠ/芝2400m)が行われる。世代最強と噂されるダノンプレミアム、皐月賞馬エポカドーロを始め、ここまで無敗のブラストワンピース、皐月賞で一番人気だったワグネリアンなど役者が揃った。出走予定馬の中で人気を落としながらも軽視できないのがオウケンムーンだ。
オウケンムーンの前走は皐月賞だったが、1コーナーで14番手、そこからポジションを上げていく競馬を行ったが、道中で脚を使った影響もあってか直線では全く伸びず、12着惨敗に終わった。今回の皐月賞の通過順を見ると、ほとんどの馬は1コーナーから4コーナーまでの通過順が変わらない。同じような場所を長い間走り続けていたのだが、オウケンムーンだけはそれとは別の動きを見せた。結果的に裏目に出たが、積極的な競馬をしたという事実や休み明けのことを考えれば着順ほど評価を下げるのはどうだろうか。
父オウケンブルースリは種牡馬生活も危ぶまれるほどだったが、オウケンムーンの勝利で首の皮一枚つながった。そして父が成し遂げられなかったダービーの夢を果たすことができるのか、その可能性を掘り下げる。
目次
要素① 共同通信杯の勝ち方
共同通信杯の勝ち馬や好走馬にはクラシックを制覇した馬が多い。ディーマジェスティは2016年のこのレースの覇者、ドゥラメンテは2015年このレースで2着に終わったが、1着はドバイも制したリアルスティールだ。2012年は1着がゴールドシップ、2着がディープブリランテと2012年の牡馬三冠を分け合った馬で決まっている。それほどまで共同通信杯というのは大事なレースになっているが、今年のオウケンムーンの勝ち方は強かった。
道中は先頭から離れた5番手だったが、直線に向き、少し外に出して追い出しをかけると反応よく抜け出してそのまま押し切った。上がりタイムでは4位だったものの、それでも33秒5の脚で勝ち切ったのは大きい。前で押し切る競馬をする際にそれだけの脚が使えれば優秀だ。先頭の通過が60秒2だったため、離れた5番手だとペースは多少遅かったぐらいだが、ダービーでもそれなりにペースは遅くなる。共同通信杯の競馬ができれば皐月賞での大敗のような結果にはなりにくい。
要素② 3連勝の内容と皐月賞の違い
オウケンムーンは未勝利戦、500万下、共同通信杯と3連勝している。いずれも新潟、中山、東京と異なる競馬場で勝利を挙げているが、この3連勝に共通しているのは前で競馬ができたことだ。デビュー戦の新馬戦では後方からレースを進め、上がり最速のタイムを出したが届かなかった。未勝利戦では2番手でレースを進め、上がり最速のタイムを出して勝利している。どこからでもそれなりの脚は使え、位置取りがほとんど変わっていない。
ところが皐月賞の場合は内側でずっと走り続け、多くの馬が外に行く中、インを突いている。その分、前には行けたが、ただでさえ荒れた芝、雨が降ってコンディションが悪い中を走り続けたダメージは大きかった。内は突いたが後手を踏まされた格好になった。スムーズに前目をつけられていたらどうだったか。決してそれができない馬ではないだけに、あまりに内容が違った。叩き2走目での変化で調子が上がればチャンスは出てくる。
要素③ 良馬場で勝機十分
父オウケンブルースリも雨に強かったわけではなかったが、オウケンムーンも雨には少し弱い面がある。馬場が渋った2戦はいずれも着外に沈んでいる。今年のダービーは水曜日に雨が降ったが、土日は雨予報ではない。このため、比較的走りやすい環境でレースが行われる。しかもコースがCコースに変わり、荒れた部分をある程度カバーしてくれる。ダービーで1枠が有利なのはそのような要素もある。
少しでも走りやすい中でレースが行われるのはどの馬にとってもプラスだが、この馬にとってもそれは同じである。不思議なことに馬場が渋った時はいずれも後手を踏んでいるのは果たして偶然か。偶然でないとしたらこれは軽視できない部分だ。枠が内目で、しかも良馬場ならチャンスはかなり出てくる。
まとめ
今回は有力馬が多く、惨敗を喫したオウケンムーンはかなり人気落ちする可能性が高い。しかしながら、京都新聞杯を制したステイフーリッシュや青葉賞を制したゴーフォザサミットに共同通信杯で完勝した事実はとても大きい。たった1度の敗戦と見るか、実力差と見るかは分かれるところだが、オウケンムーンの理想的な流れになれば勝つ可能性は十分に高い。
父オウケンブルースリはダービーへの出走すら叶わなかったが、息子のオウケンムーンは期待を背負ってダービーに出られる。距離適性は大丈夫だ。あとは皐月賞の時のように後ろを追走するような展開にならないことだ。人気落ちの今、マークが外れやすいここで勝負をかける。