2017年12月18日、阪神競馬場で朝日杯フューチュリティステークス(朝日杯FS/GI/芝外回り1600m)が行われる。ダノンプレミアム、タワーオブロンドン、ステルヴィオ、ダノンスマッシュ、フロンティア、ケイアイノーテックらが出走するが、どんなレースが展開されるのか?
中でも注目されるのがダノンプレミアムだ。前走のサウジアラビアロイヤルカップを圧勝し、一躍クラシックロードの主役に名乗りを上げた。朝日杯FSでも一番人気に支持されることがほぼ確実になっている。
もっとも、ダノンプレミアムが朝日杯を確実に勝てるわけではない。なぜなら、彼には乗り越えなければならない“決して低くないハードル”と直面しているからだ。
目次
ダノンプレミアムの不安要素
ダノンプレミアムは素質馬だ。父は言わずと知れたディープインパクト。母インディアナギャルはGI実績こそないものの、重賞戦線で活躍していた実力馬だった。
2頭の間に生を受けたダノンプレミアムは、ここまで期待通りの活躍を見せている。ハイレベルな新馬戦を快勝すると、サウジアラビアロイヤルカップでも他を寄せ付けずに1着でゴール板を駆け抜けた。来年のクラシックを見据える意味でも、有力な一頭が登場したと言っていいだろう。
ただし、何の不安もないわけではない。
ダノンプレミアムの前には、乗り越えなければならない大きなハードルが待ち構えているのだ。
ディープ×ロベルト系の呪縛
結論から書けば、ディープインパクト×ロベルト系という血統構成が不安の種になる。
ロベルト系はブライアンズタイムやナリタブライアン、シンボリクリスエスといった馬たちに代表されるように、瞬発力よりタフさが強み。よりタフなシチュエーションや馬場で好成績を上げる傾向にある。
例えばエピファネイアは不良馬場の菊花賞を圧勝し、(良馬場発表だったが明らかに馬場が渋ってタフなコンディションだった)ジャパンカップで驚異的なパフォーマンスを示した。タフな血だからこそ、できた芸当だったと判断できる。
しかし、ディープインパクトにとって、このタフさがマイナスに作用することがある。ディープとロベルトが掛け合わされた場合、ロベルトのタフさがディープ最大の長所である素軽さや瞬発力を消してしまうことが多いのだ。
過去の産駒たちを見ていくと……
実際、ディープインパクト×ロベルト系の配合で大成功を収めた馬はいない。
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馬名 レース名 着
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アドミラブル 東京優駿G1 3
ディーマジェスティ 天皇賞春G1 6
モンドインテロ 大阪杯G1 8
ディーマジェスティ JCG1 13
ディーマジェスティ 菊花賞G1 4
ディーマジェスティ 東京優駿G1 3
ディーマジェスティ 皐月賞G1 1
サトノラーゼン 菊花賞G1 5
サトノラーゼン 東京優駿G1 2
ニューダイナスティ 菊花賞G1 11
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最も出世したディーマジェスティが皐月賞を勝ったものの、その後は尻すぼみ。ダービー2着の実績を持つサトノラーゼンにしても、現在はオープンクラスですら勝つことができていない。
アドミラブルやモンドインテロにしても、脚光を浴びる時期はあったが、大成するには至っていない。
何より懸念されるのは、彼らが活躍した舞台が2000m以上の中長距離だったことだ。2000mを超える中距離であれば、ロベルト系のタフさがプラスに働くこともある。
一方、よりスピードを求められる2000m未満の距離になると、ロベルト系のズブさがマイナスになってしまう。
事実、ディープ×ロベルト系の配合馬は、なんと一度もマイル以下のGIを勝ったことがない。それどころか、出走したことすらない。いかにディープ×ロベルト系のスピード能力が疑問か、客観的な指標としては十分な事実だろう。
ダノンプレミアムの戦績を振り返ると……
そしてダノンプレミアムにしても、過去のロベルト系配合馬と共通する点がある。
彼はまだ一度も良馬場で走ったことがない。ここ2戦はいずれも馬場が渋ったやや重の中で行われていた。つまり、ロベルト系のタフさが生きるシチュエーションだったのだ。
だからこそ、圧巻のパフォーマンスを発揮できたとも考えられる。
もちろん、積んでいるエンジンの性能が高いことは明らかだし、今回はライバルも少ないため、あっさり勝ってしまうことも十分にありえるだろう。
しかしながら、過去の傾向を探っていくと「鉄板」と表現するには少々危険な香りも漂ってくるわけだ。
果たして、ダノンプレミアムはディープ×ロベルト系配合馬として初めてマイルGIを取ることができるのか? 彼にはライバルたちを蹴散らすだけでなく、歴史を変えることが求められている。