またしてもGIの壁を越えることはできなかった。
6月4日に東京競馬場で行われた春のマイル王決定戦・安田記念(GI/芝1600m)で、7番人気のディープインパクト産駒サトノアラジンが優勝し、GI初制覇を果たした。5番人気に支持されたアンビシャス(牡5)は15着と惨敗した。
なぜアンビシャスは敗れてしまったのか? 徹底的に検証していこう。
目次
プロフィール〜血統・誕生日・馬主・調教師・生産者〜
父 | ディープインパクト |
---|---|
母 | カーニバルソング |
母の父 | エルコンドルパサー |
母の母 | カルニオラ |
性別 | 牡 |
馬齢 | 5歳 |
生年月日 | 2012年2月17日 |
毛色 | 黒鹿毛 |
馬主 | 近藤英子 |
調教師 | 音無秀孝(栗東) |
生産牧場 | 辻牧場 |
産地 | 浦河町 |
馬名意味 | 大望のある |
レースに参加せずに終わった安田記念
まずは安田記念を振り返ってみよう。
アンビシャスは内枠からスタートし、最後方付近から競馬を進めた。ペースは流れ、後方の馬にとって最高の展開となった。実際、2着のロゴタイプを除き、差し馬が上位を独占する結果となった。
だが、アンビシャスは直線で進路を失い、外へ外へと流れていった。結局、前に壁がなくなったときには大勢が決してしまい、横山典弘騎手も本気で追うことはなかった。もっとも、それにしてもアンビシャスの伸びは精彩を欠いていた。
繰り返される負のサイクル
今回は前が開かないというアクシデントが最大の敗因だった。それは間違いないだろう。
もっとも、差し馬は常に不利を受けるリスクを背負っている。今回の場合、差し馬に有利な流れになりながら、それでも不利を受けてしまった。例えば先行馬であれば流れが向かないことはあっても、前が詰まったり、他の馬から不利を受けたりするようなことはめったにない。
だが、アンビシャスは差しにこだわり続けている。
理由はいくつかあるだろう。馬の特性、騎手との相性、展開のあや……。もっとも、最大の理由は、“師の意向”と言っていい。
アンビシャスを管理する音無秀孝調教師は“差し馬至上主義”、あるいは“逃げ、先行馬嫌い”として知られている。
かつて音無調教師はミッキーアイルを差し馬にしようと試みた。ときには逃げて勝ったにもかかわらず不満を漏らし、控えて負けたにもかかわらず満足気な発言をしていたほどだ。
要するに、アンビシャスが差し競馬を続ける背景には、師の強い意向があるわけだ。
アンビシャスは「追い込み一辺倒の馬」なのか?
しかし、実際のところ、アンビシャスが差しにこだわる絶対的な理由はないと考えられる。
なぜなら、先行して結果を出してきた実績があるからだ。
レース名 | 着順 | 通過順 |
---|---|---|
安田記念G1 | 15 | 17-16 |
大阪杯G1 | 5 | 13-14-13 |
中山記念G2 | 4 | 08-08-07 |
天皇賞秋G1 | 4 | 14-12-10 |
毎日王冠G2 | 2 | 09-09-09 |
宝塚記念G1 | 16 | 03-03-03 |
産経大阪G2 | 1 | 02-02-02 |
中山記念G2 | 2 | 10-09-09 |
天皇賞秋G1 | 5 | 08-08-08 |
毎日王冠G2 | 6 | 13-13-12 |
ラジオNIHG3 | 1 | 09-10-06 |
プリンシ | 1 | 14-12-11 |
毎日杯G3 | 3 | 07-03 |
共同通信G3 | 3 | 03-03-03 |
千両賞500* | 1 | 07-07 |
新馬 | 1 | 04-03 |
集計期間:2014.11.16 ~ 2017. 6. 4
宝塚記念を除けば4角で5番手以内につけたレースは(2−0−3−0)。特に産経大阪杯では現役最強馬のキタサンブラックを下している。
にもかかわらず、音無調教師はアンビシャスが先行することに消極的だ。それどころか、レース前には「他力本願でしまい一辺倒の馬。まずは流れてほしいね」と、先行したことがないかのような発言を残している。
もちろん、今回のように流れが差し馬に向き、直線で不利を受けなければGIを勝つチャンスはあるだろう。もっとも、果たして何度、そのチャンスが訪れるのだろうか?
アンビシャスには先行して勝利してきた実績がある。キタサンブラック、ショウナンパンドラ、そしてラブリーデイを封じるほどの走りができるのだ。今後、再び前での競馬を試みない理由があるだろうか?
競走馬が絶頂期でいられる時間は短い。アンビシャスがこのまま差し競馬にこだわり続けるなら、GIのタイトルを取れずに競走馬生活を終えるという未来に、現実味が帯びてくるのではないか。
なお、前述のミッキーアイルはGIを2勝している。
その時の3、4コーナーの通過順は、どちらも「1−1」だった。