香港最強馬がここで――。
2018年6月24日、阪神競馬場で宝塚記念(GⅠ/芝2200m)が行われる。復活を期するサトノダイヤモンドとキセキ、海外で安定的な活躍を見せるヴィブロスが出走を予定する。そんな中、21年ぶりに外国馬が宝塚記念に参戦する。それが香港最強馬の呼び声高いワーザーだ。
ワーザーの前走は国際GⅢのライオンロックトロフィーだったが、鼻出血で3か月の間隔が開いていたこと、すでに宝塚記念を見据えていたこと、苦手とするマイル戦で60キロを背負わされたこともあり、6着に敗れたが明らかにノーカウントと言っていい。本来の目標はクィーンエリザベスⅡ世カップだったが、鼻出血で回避し、宝塚記念への参戦につながった。
21年前はオーストラリアのセトステイヤーが参戦し9着に終わった。セトステイヤーのオーナーは日本人という話はあまり知られていない。その1頭だけしかこれまでに参戦していない中、ワーザーが挑戦する。中距離で活躍する香港馬の参戦機会はここ最近あまりないが、だからこそ、ここは侮ることができない。外国馬があまり活躍できていない今、ここで結果を出す。
目次
要素① 抜きんでる中距離実績
これまでのワーザーの成績は、30戦10勝である。その10勝の中で2000メートル以上は実に7勝を挙げている。その中には日本馬3頭が参戦し、ワーザーが2着に4馬身差の圧勝を見せた2016年のクイーンエリザベスⅡ世カップや香港ゴールドカップなども含まれている。2017年の香港カップこそ2着に終わったが、日本馬3頭には完勝している。
香港の年度代表馬にもなるほど、この馬の実力はすでに証明されている。しかも、今年行われた香港ゴールドカップは香港レコードを上回っての決着となり、タイムワープの2着だったもののワーザー自身もこれまでのレコードを更新しての走りだった。
決して衰えているわけではなく、香港で勝利経験があるネオリアリズムを倒している。しかも今年は有力馬が順調さに欠き、未知数な面が多い。終わってみれば香港での力を証明しただけということになっても不思議ではない。
要素② 安定のボウマン騎手
ワーザーは元々シンガポールやオーストラリアで走っていたが、香港のクラシックシーズンに合わせるように移籍し、香港ダービーを制する。この時にダービー馬に導いたのがボウマン騎手だ。ボウマン騎手はワーザーが香港へ移籍してから11戦コンビを組んだが、5勝しているだけでなく4着以下が1回もない。
ボウマン騎手の力量は日本の競馬ファンなら重々把握している。去年のジャパンカップはシュヴァルグランで勝利するなど、日本の競馬にも非常に慣れている。馬も申し分なければ、騎手も全く問題ない。ケチをつける要素が何1つないコンビと言える。
要素③ 馬場悪化の可能性
宝塚記念は6月の終わり、梅雨真っ盛りの時期に開催される。そのせいで稍重や重での馬場状態で競馬が行われる。良馬場でもペースがかなり遅く流れ、時計勝負になる時とならない時の差が激しい。今週は天候が良くないことや土日まで微妙な天気が続く。たとえ良馬場でレースが行われたとしても、パンパンの良馬場のようなことにはならない可能性が高い。
ワーザーにとってみれば、雨が降ることはとてもプラスだ。香港の馬場が力がいるというのもあるが、この馬自身が馬場の悪化に強い。これまでのキャリアでは4回経験しているが、そのうち2勝2着1回3着1回とこちらも安定した成績を残す。シンガポールやオーストラリアの成績を含み、香港では1回だけ稍重のレースを走ったが、その時が2016年のクイーンエリザベスⅡ世カップだ。その時のパフォーマンスは圧巻だった。
少なくとも2000メートル2分フラットで走る力量があれば、2200メートルでもそれなりに走る。宝塚記念で時計勝負になる可能性は低い。ならば、この馬にもチャンスは十分ある。
まとめ
外国馬が参戦しても、ジャパンカップでの一方的な成績もあってか軽視する動きが強い。ましてそれが短距離やマイル以外となればさらに強まる。ワーザーは鼻出血のアクシデントもあって、春の大目標を宝塚記念に設定した。順調にメニューを消化し、万全を期することができるように調整を続けている。一発があっても全く問題ではない。
サトノダイヤモンドもキセキも春競馬では結果を出せていない。去年の勝ち馬サトノクラウンもそれは同じだ。絶対王者のキタサンブラックですら去年は唯一ここで惨敗を喫した。自在力があり、何頭もの日本馬を倒してきたワーザーがここで勝利を収めてもおかしくない。そして、クイーンエリザベスⅡ世カップと宝塚記念の両睨みをする陣営が多く出て、レベルを上げてもらいたい。