現役最強馬として、現役を終えるために――。
2017年10月29日、東京競馬場で天皇賞秋(GI/芝2000m)が行われる。人気を集めそうなのが、現役最強馬の呼び声高いキタサンブラックだ。武豊騎手とともに天皇賞春やジャパンカップといった大レースを勝ってきた実力馬が1番人気に支持されることが濃厚となっている。
しかし、キタサンブラックは前走の宝塚記念で惨敗を喫している。果たして、復活を果たし、「現役最強馬の称号」を確固たるものとすることができるのだろうか?
目次
宝塚記念の敗因は?
まずは「なぜ宝塚記念で惨敗したのか」という点にスポットを当てていこう。
あれほどの強さと安定感を誇っていたキタサンブラックの惨敗に、心を痛めたファンも多かったはずだ。もっとも、そもそも宝塚記念へ臨むにあたり、キタサンブラックには数々の不安要素があった。
・天皇賞春の反動
・過去10年で春古馬王道路線連覇はなし
・グランプリは3回走って勝利ゼロ
・叩き3戦目はパフォーマンスを落とす傾向に
・武豊騎手もグランプリは久しく勝っていない
※詳細→宝塚記念2017の予想データ分析…キタサンブラックと武豊騎手の5つの不安要素とは?
いくら天皇賞春でサトノダイヤモンドを破いたとはいえ、これだけの不安要素があった中で1.4倍の一番人気に支持されるというのが“異常事態”だったわけだ。
直面した「想定外の展開」の数々
さらにレースでも数々の想定外の出来事が起こった。
これは、当時の回顧から引用することとしよう。
まず今回はハナを切ることができなかった。ここ数戦も番手からの競馬をしているが、天皇賞春はヤマカツライデンが、大阪杯はマルターズアポジーが大逃げを打ったため、キタサンブラックは実質的な逃げ馬として自分でペースを作ることができていた。
しかし、今回は3番手に控えた。しかもハナを切ったのはシュヴァルグラン。大方の予想を覆す馬、逃げたことがない馬がペースを作ることになり、少々おかしなラップを刻むことになった。
12.5-11.1-11.6-13.1-12.3-11.7-11.6-11.8-11.7-11.8-12.2
2、3ハロン目で加速したが、4、5ハロン目では極端にペースが緩んでいる。キタサンブラックが逃げたときには起こらない現象だ。シュヴァルグラン、そしてシャケトラに並ぶ形で競馬をするしかなかったキタサンブラックは、結果として自分のペースで競馬ができなかったのだ。
さらに向こう正面ではミルコ・デムーロ騎手騎乗のサトノクラウンが外側から上がってきてプレッシャーをかけてきた。
象徴的だったのが武豊騎手の手綱だ。いつもはほとんど手綱を緩めた中でレースを進めていくが、この日はガッチリと握られていた。まるでキタサンブラックを必死でなだめるような力の入れようだった。この点からも、いつものキタサンブラックではなかったことがうかがえる。
以上のように、宝塚記念のキタサンブラックは「いつものキタサンブラック」ではなかったのだ。
※詳細→なぜキタサンブラックと武豊は宝塚記念で惨敗したのか?5つの予兆と敗因とは
展開も味方せず……
付け加えるなら、宝塚記念は展開も向かなかった。着順を振り返ると、上位3頭は差し、追い込み馬で、先行馬はシャケトラを除いて下位に沈んでいる。キタサンブラックと同じく先行したシュヴァルグランは天皇賞春で2着になるようなスタミナを誇る馬だが、実力馬であってもこのペースでは持ちこたえられなかったのだ。
数々の不安要素、想定外の出来事の連続、そしてペースにも嫌われる――。
キタサンブラックにとって、まさに「泣きっ面に蜂」だったわけだ。
天皇賞秋での復活は?
ここまでの振り返りで、宝塚記念はキタサンブラックにとって厳しすぎるレースだったことが分かった。
では、キタサンブラックは天皇賞秋で復活を果たすことができるのか? その検証は次回、行っていくことにしよう。